閑話 うんちく その3
うんちく その3
レッドキャップ種について。
ここでは本編では語り切れなかった部分を補足して記そう。
レッドキャップ。
凶悪なる森の妖精、赤帽子。それが魔の森に住まうとされる亜人たちの種族名である。
ゴブリンのような小柄な体格をしてはいるが完全に別種の種族(一部、別の見解あり)
その違いは肌の色から始まり、灰褐色の皮膚から飛び出した小さな双角は鋭く尖っている。
そしてスカートのような民族衣装の下には、文字通りのカモシカのような足を有している。
その特徴に反せず瞬発力、走行性能に優れており、そこから生み出される速度は狩猟動物のそれに匹敵する。
またその速度を上乗せした状態から放たれる槍の投擲は、岩をも貫く威力と伝えられている。
本気の投擲には動物の皮から作られた補助器具が使われるらしい。それなのに何故か百発百中の精度を誇る。
その理由は以下の通りであるとされている。
レッドキャップ種は本来、夜間の活動を得意とする種族であり、戦闘状況下では瞳が炎のように妖しく光る。
それともう一つ、瞳と同じように朱く揺らめいて見えるものがあった。
それは羽飾り。ヒクイドリの羽をあしらって作られた髪飾りである。
これは後の研究で明らかになったことだが、ヒクイドリの羽は魔力を通すと、うっすらと朱く発光する性質を持っている。
つまりレッドキャップ種は少なくない魔力を有し、戦闘状況下では一種の魔法行使状態になっているものと推測されるわけだ。
それと槍の投擲、その異常なまでの威力と命中精度を合わせて推察すると、最低でも二種以上の魔法の可能性が浮かび上がる。
一つは大気との摩擦から生じる振動によるブレ、これを抑えつつ威力を殺さないためのベクトル操作、風と土系統の応用魔法。
そしてもう一つは強固な対象物に衝突しても粉砕されない頑丈性、槍本体への強化の付与である。
他にも身体強化や千里眼など考えられるものは複数あるが、レッドキャップ種は恐らく、それらをそれと認識しないままに行使していたものと思われる。
言うなれば天然の魔法戦士か。
闇夜に揺らめく炎のような瞳が妖艶であればあるほど、ヒクイドリの羽をあしらった羽飾りがより朱く鮮明に浮かび上がるほど、優秀な魔法戦士であった可能性が高い。
しかし彼、彼女らにとってはそれは単なる戦士の証でしかなかっただろう。
レッドキャップ。恩も仇も何倍にもして返す者。
それはニンゲンという種にとっては、これ以上ないくらいに相性最悪な天敵であったと言えたかもしれない。
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