第二章 ほっぷるとメイルの物語(70000字)
第二章 その1 OP 決断の先に待ち受けるもの
第二章 ほっぷるとメイルの物語
その1
「あ……あ……」
少女は目の前で繰り広げられる惨劇を、ただ震えながら見ているしかなかった。
全長二十メートルはあろうかという化物大蛇。
種族名ヴァイパーバジリスクと呼ばれる巨大な蛇が、今まさに頼りの綱だった男たちを丸呑みにしようとしている。
ズキンッ……
足がヤバイくらいに痛い。おそらくは折れているものと思われる。
「(まずいまずいまずいまずい……)」
だが今は足の状態など気にしている場合ではない。
何故ならこのままではすぐに自分の番がきてしまうからだ。
……丸呑みにされる番が。
ただでさえ逃走を許してくれそうもない相手だというのに、この足ではもう絶望しかなかった。
「なんでこんなことに……」
すでに男をまるまる一人たいらげている化物大蛇の胴体は、見るからに不格好に膨らんでいた。
人ひとり分の膨らみ。あの中には先ほどまで共に戦っていた仲間が……
「(ちょっとはメンバーに恵まれたって思ってたのに……)」
じきに自分もあんな風になる……そんな死に方、死んだって死にきれない。
齢十七、これまでツキに見放されっぱなしだった少女は、こんな結末を迎えることになった自分の浅はかさを今更ながらに悔いていた。
しかしこの魔の住まう森に挑む決断を下したのは他ならぬ自分自身。
それに決意した時点ではこれがベストな選択なはずだった。
確かに他に選択肢がなかったわけではない。しかし前を向いて生きていく為にはどうしても必要な決断だったのである。
そう、誰が悪いわけでもない。彼女自身の決断が間違っていたわけでもない。
少女はただ、ついていなかっただけなのである。
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