十一章:君を縛るモノ
凄まじいスピードで飛んでくる尾や
それでもマキナができることは...
「...『魔素同調』しかない」
『魔素同調』とは字の通り、魔素を同調させ、相手との感覚を共有する方法だ。この方法でイニティカに何が起きているか調べるしかない。
龍の頭にマキナがしがみついた。振り落とそうと龍は頭を振るが、全力で体勢を保持。そして、
「アヴィス!
「姿勢固定完了。開始します。3、2、1...0」
気がついたらアタシは原っぱに立っていた。だが、明らかにラタ高原では無い。金色の草木が夕陽に照り、輝く。
そして、レンガ造りの建物。何故かドアは無い。
窓から内装を覗き見る。暖かそうなストーブ。机。その上にある、おそらく冷めているであろう目玉焼き。そして、椅子の上に彼女は座っていた。
今よりは幼い。昔の心象風景と見て間違いないだろう。
「イニティカ!聞こえるか!」
しかし、無反応。窓をたたいてみても、変顔しても笑うことは無かった。
精神世界である以上、見えてはいなくともアタシの存在は分かってはいるはずだ。ならば、なんらかの「鍵」があると見るべきか。思い出されるのは先日の出来事。
「イニティカ!一緒に『ネモフィラ書庫』に帰るぞ!」
「もう、いいんです」
イニティカは少し顔を上げて答えた。普段の彼女からは考えられないような、陰鬱な顔をしていた。
「『いい』ってなんだよ!お前このままだと『龍』のまんまだぞ...!」
「それでもいいって言ってるんです!わたしは、結局、ここから出れないんだ....」
「なに訳分からないこと言って.....ッ!」
何時の間にか、イニティカの後ろに老婆が立っていた。いや、何だあれは...
「わたし、いい子にしてますよね...?出ようなんて思ってませんから...!お願いだからぶたないで...」
イニティカの様子もおかしい。まるで独り言ちっているような......あの老婆が知覚できていないのか?
瞬間、老婆はアタシの方を向いてニタリと笑った。
言葉に表せないほどの怖気が走った。アレはイニティカの精神世界とは無関係だ。イニティカ自身に巣食う「ナニカ」だ。
足が震える。不気味な笑みがアタシの恐怖を煽る。
しかし、アタシは獰猛に笑った。断然、アタシらしく宣言した。
「いいぜイニティカ。お前を縛り付けるものも、何もかも全部、ブッ壊してやる」
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