九章:援軍を頼りに!

「ーー掴まってろ!」

「えっーわぶっ」

マキナは脇に抱えた子供を力強く腕に納め、高速でその場を離れる。瞬き一つもしない内に吐息ブレスが頭上を灼く。

「『魔化』とかいう次元じゃねえ!どういうこった!」

『まぁた無茶してるようですねえ』

突然、普段であれば聞きたくない声が聞こえた。

「ケルレ大臣!」

「後方700メレに待機しております。とりあえず来てください」

「分かった!」


「御苦労さまです」

「お、ぇぇぇ...」

全速でトバしたせいで、子供はしっかり吐いていた。この際許してほしい。

「お姉ちゃん...ありがとう...」

許してくれた。お姉ちゃんも言えているし、最近の子はなんてデキる子が多いんだ!

「マキナさん...お姉ちゃん呼びはキツいですよ...」

「何でだよ!アタシまだ23だっての!」

そんな老けて見えるか...?と気にするマキナを気にせずに大臣は話し始める。

「公と話した結果、夜襲してやろうということになりまして」

「お前らアイツらインヴィディアと同じ思考だぞ...」

「こちらの夜襲は守るためのやつですし、結果オーライですし」

大臣が舌を出して謝る。こんな時じゃなかったらブン殴ってた。

「公本人はドコに居るんだ?」

「前線で陽動してます」

あの人は自分の立場分かってるのか....?

「まあ色々言いたい事はありますが...イニティカさんを取り返しに来たんでしょう?」

大臣の言葉にハッとする。

「聞いてくれ大臣。イニティカは...」

「『一を聞いて十を知る』ですよ。自由に動くことを許可します。かましちゃって下さい」

普段から気に食わないヤツだが、なんでこういう時は頼りに見えるのか。

「...なんか癪だけどありがとう!」

再びマキナは『針峰を越えてエル・エギュイユ』を唱え、空へと飛んで行った。

「....一言余計ですよ。こちらケルレ、どうにかなりそうです。障害になりそうなものは排除して下さい」

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