七章:火の海で捜索に!
ーーー目が覚めると、液体の中にいた。
同時刻、ラタ高原付近。カプセルに詰められたイニティカは辺りを見回した。
質素な造りである。近くには机と私の服と似たようなカプセル...
その中に同じように詰められた人間を見て、イニティカは戦慄した。
しかしよく見ると、個々によって違う部分がある。角に、尾に、牙に...彼らは例外無く「魔化」していた。
状況は掴めない。それでも彼らと、どんどんと吸い上げられていく魔素は危険だと判断するには十分すぎる要素であった。
とりあえず内側から叩いてみる。が、ビクともしない。意外にも硬い殼を叩くうちに、焦りは募っていった。
「このっ....!壊れろぉぉぉぉ!」
彼女の渾身の魔素が秘められた頭突き、否、角突きによりカプセルは木端微塵に砕けた。
「ふぅ...何がどうなっているか分かりません...
記憶も曖昧ですし...」
着替えたイニティカは少し回復した魔素を拳に込める。
「でも、私にはあなた達を見捨てるなんて選択、できません。とりあえず壊しますか」
そう言ってイニティカは研究所のカプセルを砕き回った。
研究所の警報が鳴り響いた。
ラタ高原。普段は野性の動物が住まい、
あちらこちらから火の手が上がり、誰かの怒号と悲鳴が喧騒を奏でている。
「これは...夜襲か?」
一方的に襲っている方を見ると、胸に「鷲」の紋章がある。インヴィディア王国だ。
「マズい...急がねえと...」
先を急ごうとしたマキナの目に、今にも襲われそうな子供が留まった。
「誰か...助けて...!」
「悪魔どもは皆殺しだぁ!」
「....クソッタレ!」
兵士と子供の間に割り込み、その勢いで兵士に激突。兵士は火の海に消えていった。
「うし、大丈夫か?」
「ありがとうございます...」
よく見ると、子供のケツに、「尾」。
「お前...『暴走個体』か?」
「ひぃ...そうです...」
「何もしねえよ...」
とは言え、初期のイニティカを思い出す。今はこの子の思いがよく分かる。
「安心しろ。お姉ちゃんはお前の味方だ」
「お姉ちゃん...?」
「いいか、私はお姉ちゃんだ。そうだろ?」
「はいぃ...!その通りです...」
こめかみ暴発寸前で踏みとどまった所で、子供を脇に抱え込み空へ飛ぶ。
「ふぇ!?」
「とりあえず安全なとこまで行きたいんだが...
そういや角が生えた力強い女の娘って知らない?」
「角が生えた...私を助けてくれた人は角が生えてました」
「何!?その子ってどこにいる?!」
「あの場所で...私達を逃がす代わりに...残って...」
その瞬間、指差した先の建物から、眩い光が天を染めた。
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