四章:不穏な芽で急転に!

「失踪?」

それから1週間後、私は王城を訪れていた。自発的になんて正直行きたくないが、イニティカと全く連絡が取れないのである。

イニティカは公国の研究チーム一行と隣国、インヴィディア王国へと研究交流へと向かっていたはずだ。それが丸々失踪したって言うのか?

「一体どういうこった。悪趣味な嘘ならもうお腹いっぱいだ」

「私とてこんな嘘はつきませんよ。誓って、ね」

ケルレ大臣があざとく言ってくる。いちいち嘘くさいのは本当何なんだ。

「余からも真実だと言っておこう」

ルーブルム公が口を挟んできた。

「....それじゃ、捜索隊は出したのか?」

「それがそういう訳にもいかんのだ。

ーーー我が国とインヴィディア王国は先日、交戦状態へと移った」

「あ?交戦?」

アウステラ公国とインヴィディア王国は現在、小康状態にあると聞いた覚えはある。それが急になぜ...?

「ただあちら側インヴィディア王国が『ラタ高原第一基地』に攻撃を吹っ掛けてきてな。我が国という芽を早い内に潰しておきたかったのだろう」

ラタ高原はだだっ広い平原だが、国境線がちょうど通る位置である。ただこれら二つが同時に起こるとは少し...

「きな臭くないか?」

「フフッ、この段階で結び付けるのは早計と言わざるを得ません。しかし、あの豚共であれば十分に有り得る」

これに関して公主サマは無言を貫いた。共通認識であるようだ。

「つまり...」

「ああ、捜索隊は出せない。さらに言えば戦争準備のため、気に掛けている暇すら無い」

「本当にすみません。ゴリラ達を宥めるのに忙しいのです」

「汝含めて、であることを努努ゆめゆめ忘れるな」

「...分かりました」

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