三章:素敵な職場で笑顔に!

イニティカが来て2週間ほど経った頃、努力の甲斐あって、表の「書店員」としての仕事は板についてきたようだった。

「すまんなイニティカ...働き詰めだろう...?」

「ふ.....ふ.....それを言えばマキナさんだって...『裏』の仕事合わせて一体何十時間働いているんです.....?」

そう。ウチの書庫は一応機密の研究所であるから、従業員はイニティカしかいない。

だのに書店でもあるから、現在2人で経営している状態である。つまり、アルバイトもクソもない超ブラック書店となってしまったのである。

「いらっしゃっせー...そう言えばこの前の賊共は何だったんだ?」

「その節は本当にすみません...連れ去られてる子供達を見て勝手に体が動いてました」

「良いじゃないか。イニティカの美点だぜ?」

イニティカは自信を持ったのか、最近はずっと帽子を外している。お日様のような彼女の顔を見られて大変、眼福である。

「はい、3点で合計1000メルです....ついでに会員登録どうでしょう?」

「結構です」

「今なら会員様限定で1割引になりますよ!」

手が空いたのか、イニティカも手伝ってくれるようだ。まあこの手の客には何を言っても無意味....

「それじゃあ...してみようかな!」

「ありがとうございます!」

「なんでだよ!アタシじゃ愛想が足りないってか!」

客をよく見ると鼻の下を伸ばしていた。クソッ、男たらしめ...

「フフッ...」

「何笑ってんだソコォ!笑ってる暇あったら働け!」

「いえ、あまりにも面白くて...」

気づいたらイニティカは笑い涙を浮かべていた。アタシ?悔し涙だよ!

「私、この日々が本当に楽しいです!いつまで続いてほしいと思うほど!なので備品を壊したことは許してくれません?」

「だぁー!だから言ったんだ!力加減ミスったら瓶は割れるって!また買い出しだぜ...」

「いいじゃないですか!一回外の空気吸いましょう!」

何だかんだ言いつつも、アタシもイニティカとの日々が楽しかった。

「ありがとうございます。私に居場所をくれて」

アタシを見るイニティカの笑顔はただ眩しかった。

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