三章:市街戦闘はスマートに!
繁華街の喧騒の中、マキナ達は明るい雰囲気とは裏腹に、厳しい面持ちで歩んでいた。
アウステラ公国、栄都グリムはまさに「魔素」に導かれ、発展したと言っても過言では無い。道行く人で前は見えず、激しい客引き合戦が喧騒を盛り上げている。
「周りにできる限り注意を払っておいてくれ。何が起こるか分からない」
「はい」
イニティカが帽子をより深く被った、その瞬間。
「マスター、四時の方向、接近しています」
「ーーーチッ」
目だけで振り返ると客を押し退けてくる者らがいた。一見、自然を装っているが、
「マスター、それぞれ手首から磁気反応を検知。ナイフと思われます」
「ネジぶっ飛びすぎだろ、クソッタレ」
「はい?」
「イニティカ、そのまま前警戒」
人混みの中から伸びてきた手、マキナの手首を掴むかと思われたそれを、
「ナンパのお誘いか?」
がっしりと掴んだ。そのまま手の内に秘めていた「釘」を放つ。
「おッ!!ごッ!!」
「選ぶ相手間違えてんじゃねえの」
用いたのは「デフィチオIII型」。小型の放電装置で、衝撃を感知すると凡そ三百ボルトが走る。
そのまま倒れた男を気にすることなく、一人の老婆がこちらに杖を向ける。
その先に炎が宿るのを見て、ベルトに提げていた巾着の一つを投擲。
老婆の頭上で爆ぜたそれは多量の「砂」を被せ、
「
「了」
杖にまとわりつき、老婆をその場に固定した。
「マキナさん、魔法使えたんですか?」
「言ったろ。魔法なんかじゃない。擬い物だ」
砂の正体は砂鉄と電磁石だ。巾着に入れたそれらを遠隔操作することで固定させているに過ぎない。
「前方、十時方向から五人ほど接近中。一度避難することを勧めます」
「マキナさん、なんかおかしくないですか?
これは大臣の使いというより...」
「ああ、何はともあれ、ちょうど右に行ったトコが目的地だ。一旦休憩しようぜ」
騒めきの波が広がる中、女子二人はパン屋に入って行くのだった。
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