第一幕〜一章:書庫をあなたに!
「.......よってこの書庫を君に進呈します」
「ちょっと何言ってるかわかんない」
ある平日の昼下がりであった。外からは鳩の間抜けた鳴き声が聞こえる。
対面に姿勢良く座る者はここ、アウステラ公国No.2とも言える、魔導大臣ムウスカ・ケルレだ。そんな秀才サマが仰った言葉をアタシは聞き取れなかったようだ。
「すみません再度言っていただいても?」
「あなたの義父様が蒸発されたので、代わりに『ネモフィラ書庫』の管理をしていただきたいのですが。聞いていなかったのですか?」
大臣が呆れて言うがそれどころじゃない。
親父が蒸発?そんなことがあるものか。あんな研究のためならなんでもするような人間が......
「有り得ますね」
「信じてくれたのならそれでいいです。ですがあなたに可能でしょうか?魔素が感じられないあなたに」
この野郎、言いにくいことをズバズバ言いやがる。
「これは公の御命令でありまして。私自身意図を測りかねています」
確かにそうだ。『書庫』の管理ならオヤジの下の研究員に任せればいい。公の野郎の意図は何だ?
様々な疑念が渦巻くが、ちょうど良い機会であることは確かだ。受けない手は無い。
「ご安心しやがって下さい。アタシにはアタシのできることがあるので」
「それもそうですね。では『魔導書』の扱いにはくれぐれもご注意を」
「分かってるよ」
私はヒラヒラと手を振り、退出しようとした。
「ではまた後日向かいます。職が見つかって良かったですね」
「だぁぁぁーー!!あんたさっきから一言余計なんだよ!」
「ふふ、あなた様の反応が存外、面白いもので」
「わかった!ちゃんとやるから!だから恥を広めるのは止めてくれ!つーかどこまで知ってンだよ!」
「あなたの義父様とは懇意の仲で御座いましたので。娘煩悩の話が出てくる出てくる...」
アタシは逃げ出した。
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