17. 鳳智の脳内掲示板


 その日の授業はほとんど頭に入ってこなかった。昼休みに屋上でセシルさんとご飯を食べたのは覚えているが、彩奈と澪が接触してくることは無かった。まさか彩奈まで僕のことが好きだったなんて……いや嬉しいけどさ。困る。困ると落ちる。どんどん落ちて、久しぶりに行き着いた。


 どこにって? 


 うーん。思考の奈落、脳内掲示板……的な?


 …………

 ……



【徹底討論】彼女いるのに妹と幼馴染に告白されたんだがどうしたらいい?【修羅場不可避】


1:名無しのオオトリ

 どうすんのこれ?


2:名無しのオオトリ

 どうもこうも自分が招いた事だろなんとかしろ


3:名無しのオオトリ

 こういうときのためにラブコメ見てきたんじゃないの?今こそ知見を活かす時でしょ。ハーレムとか考えちゃダメよ


4:名無しのオオトリ

 よいか?すべては最善じゃ。かといって降りかかる事象のすべてに黙って頷くだけでは壊れた人形と変わらん。選択してこそ人間じゃ。よく考えるんじゃな。


5:名無しのオオトリ

 >>>3 マーンw

 >>>4 もっと中身あること言え老害


6:名無しのオオトリ

 あえての高宮さんでいこう(名案)


7:名無しのオオトリ

 感覚Yを信じろ


8:名無しのオオトリ

 主です。いやセシルさん一筋でいくつもりなんですけど、二人を傷つけたくないです。なんとか穏便に諦めてもらう方法はないでしょうか?あと二人に迫られて自分が揺らがないか心配です


9:名無しのオオトリ

 なんなんこいつ。おい、ケツの穴かっぽじってよく聞けよ。こうなった以上負けヒロインは必ず生まれる。ラブコメってのはそういうもんだ。腹括って決めた一人に尽くせよ妄想boy


10:名無しのオオトリ

 >>>9 ケツの穴かっぽじってどうすんだよw


11:名無しのオオトリ

 >>>10 間違えたわww耳だったwwwww

 

12:名無しのオオトリ

 ここほんと童貞しかいねぇのなw恋愛なんて所詮性欲なんだからとっととやることやっちまえよw深く考えんなw


13:名無しのオオトリ

 僕はそう思いません。

 

 もし愛という不可思議なものに両端があって、その高い端には神聖な感じが働いて、低い端には性慾が動いているとすれば、私の愛はたしかにその高い極点を捕まえたものです。


 って夏目漱石も言ってたし。恋愛は性欲だけじゃないよ


14:名無しのオオトリ

 だから読書すると頭悪くなるっつってんだ。拗らせやがって。知ってるよ。お前はオレ、オレはお前なんだからな


15:名無しのオオトリ

 知識に頼るな。すぐ引用したがるのは自分に自信がないからだ。魂で物語れ


16:名無しのオオトリ

 >>>6 高宮ワロタw 橋本とホモエンドでもok


17:名無しのオオトリ

 魂で物語れ……なんかいいな


18:名無しのオオトリ

 ぐさぁぁーーっ!


19:名無しのオオトリ

 忘れるな。オレらはお前だからな


20:名無しのオオトリ

 思いあがるなよ?お前が思うより周りは弱くない。失恋なんて生きていればままあることだ。そういうのを乗り越えて人は強くなるんだよ。お前は気にせずセシルさんとイチャイチャしてろボケ


21:名無しのオオトリ

 >>>20 そうでしょうか?だからといって傷つけてしまうことを正当化できるんでしょうか?


22:名無しのオオトリ

 こいつめんどくせぇ


23:名無しのオオトリ

 人生が物語だとしたら、読者は今のお前見てどう思うだろうな


24:名無しのオオトリ

 みんな厳しすぎ! もっと優しくしてあげて!


25:名無しのオオトリ

 >>>23 漢の中の漢


26:名無しのオオトリ

 イライラするわ〜


27:名無しのオオトリ

 >>>25 それはない


28:名無しのオオトリ

 お前はお前の正しいと思うことをすればいいよ。それが最善。そうだろ?


29:名無しのオオトリ

 本当にそうなのかな


30:名無しのオオトリ

 今更ブレてんじゃねーよw


31: 名無しのオオトリ

 だとしても最善であることと幸福であることは違うんじゃないかなって。結果的には最善でも、その過程にあった感情を無かったことにはできないよ。結果論で全てを正当化することが正しいとは思えない


32:名無しのオオトリ

 いいや。最善はすべてを内包している。文字通り、全てを。神が決定した世界の理なのだから。


33:名無しのオオトリ

 神様なんていなかったら?


34:名無しのオオトリ

 お前がそれを言うのか。あのロリ神様に救われたお前が


35:名無しのオオトリ

 >>>33 神様はいるよ


36:名無しのオオトリ

 ネットで見た!


37:名無しのオオトリ

 今はそんなことはどうでもいいのですよ。まず自分の気持ちに答えを出せしなさい。完全に一人に絞るのです。さすればおのずと自分のするべきことが見えてくるでしょう。それでも迷ったならまたきなさい。私たちはいつでもここにいますから


38:名無しのオオトリ

 ほら、もう時間だぜ。またな


39:名無しのオオトリ

 放課後はお楽しみのおうちデートだもんな。しっかりやれよ


40:名無しのオオトリ

 セッ◯ス!セッ◯ス!セッ◯ス!


41:名無しのオオトリ

 やwwwめwwwれwwwww


42:名無しのオオトリ

 みなさんありがとうございました。

 色々参考になりました


43:名無しのオオトリ

 二度とクソスレ立てんなよ


44:名無しのオオトリ

 達者でな〜


45:名無しのオオトリ

 おつ〜



 …………

 ……


「――――智くん?」


「ん? ああ、ごめんぼーっとしてた」


 いつの間にか帰りのHRが終わっていたようだ。クラスメイト達が部活やバイトや塾など各々の活動に勤しむべく次々と教室を出て行く。


「それじゃあ行こうか」

「うん」

「ジャアナ」


 僕たちはマイケルくんに「じゃあね」と言って教室を後にした。

 





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