ぐるぐるぐるぐる……

 生徒会副会長。


 風紀を正し、生徒自らの手で学校をより良くするため活動を行う生徒会という組織のNO.2だ。


 生徒会に入るために求められる条件は成績優秀、教師との良好な関係、生徒の見本となるような人物などの条件があるが、学園ではそれと同じように魔法が扱えるか、戦闘能力があるか、などが求められる。


 そして当然だが生徒数が多い学校ほど生徒会に入るのは難しい。何万人もの生徒数を抱えるコレスタニア学園ならばそれは顕著だ。


 そんな数万人の頂点に立つ組織のNO.2が入っている同好会にしては、今ライルたちが向かっている場所は学園でも僻地、いわば誰も来ないような区画だった。


 やけに静かな廊下を歩く。窓から入る夕陽は美しく、三階のため景色も良い。


「本当にこんな場所に副会長はいるの?」


 怪訝そうな目でフィアーネが見てきた。


「いるぞ。生徒会が忙しいから今日いるかは分からんが。少なくとも部長がいるから部長に伝えれば別日にはなるが会えるはずだ」


「なるほどね……」


 とは言いつつも、疑いは晴れてない彼女。確かにライルとしても華やかで多くの生徒がいる学園とは裏腹に、こんな奥まった場所に副会長がいるとリオンから聞いたときは眉唾物だった。


 そんなことを考えていると到着した。


 薄暗い開き戸。


 ドアノブを回して3人は入っていく。狭い通路には本やらポーションの空瓶やら魔道具が荷散乱し、使用者のズボラさが伺えた。


「すごい狭いわね……足の踏み場もないし」


「悪いな。頑張って通ってくれ」


 暖簾のような布を潜ると視界が開ける。そこにあったのは会議室のようなコの字型長テーブルで、その下座の中心には女性が座っていた。


 一言で述べると、教室の隅っこで本を読んでそうな寡黙な女性。長い黒髪は寝癖なのか少し跳ねていて華奢な体型、ぐるぐるメガネをかけていて瞳は伺えない。


 女性は夕陽をバックに手を組んでいる。まるでマフィアのボスだ。そんな彼女こそ、この同好会の部長だった。


「ようこそ、我が"ぐるぐる同好会"へ。おや、ライルくん、早速もう部員候補を集めてきてくれたのか!?」


「いや、違いますよ。副会長に相談があってきたんです。副会長はいますか?」


「そうなのか、それは残念。彼は今はポーションの錬金中だ。もう少し時間がかかるだろう。それより……」


 彼女の目が光る。その目つきはさながら鷹だ。獲物を見るような視線でライル……ではなくて後ろの2人を見ていた。


「初めましてお二人さん。私はぐるぐる同好会の部長を勤めている3年のアイリス・フィメリアだ。君たちもライルくんと同じ1年生だろう?どうだ、私の同好会に入る気はないかい?」


「いやそれは……えっと」


「私とライルを助けてくれるなら喜んで入る」


 困り顔でライルに視線をやるフィアーネと、入るのもやぶさかではないというロイネの表情。部長のニヤつきは深くなった。


「まぁまぁ座りたまえ。彼が来るまでゆっくりお話でもしようじゃないか。とりあえずお茶でも淹れるとしよう」


 ライルはともかく2人は言われるがままに座る。


 まだ1週間ほどしかこの同好会にいないが、彼女の狙いはライルには分かる。簡単な話、部員を募集しているのだ。3週間前までこのサークルは部長と副会長のたった2名で存続していた。しかし2週間前からリオンが入り、1週間前にライルが入った。


 続々と部員が入り、それでも総勢4名だが、調子になった部長は更なる人員確保に向けて動き出しているのである。全く欲深いものだが、今まで2人でやってきたことを褒めるべきなのかもしれない。


 薬草を煎じたお茶を飲んでいると、丁度いいタイミングでポーション製作室から1人の男性が出てきた。


 その男性を一言で言うならば部長とは真逆の存在。


 背が高く、一本槍のような背筋の良さ、美しく長い金髪に寝起きのようなハネはどこにも見受けられない。凛々しく精悍な顔つきは堂々としており、瞳は深海のようにどこまでも蒼い。


 彼女が陰の者ならまさしく彼は陽の者だ。


「部長、ポーションが完成しました」


「うむ、ご苦労。どれどれ……素晴らしい出来だな。流石は副会長と言ったところだ」


「いえいえ」


「……本当になんでこんな場所に副会長がいるのかしら?」


 そんな2人のやりとりを前にし、フィアーネが耳打ちをしてきた。彼のような存在がこの部屋にいることに違和感を覚えたのだろう。


「さぁな。俺にもわからん」


「おや?ライルくんもいましたか。お疲れ様です。それと御二方は……?」


「フィアーネ・リコッタと申します。ライルの幼馴染で1年生です」


 立ち上がった彼女は綺麗なお辞儀をした。


「おぉそうですか!よろしくお願いします」


 今度は黙ったままのロイネに視線が移る。


「私はロイネ・ルバール」


 座ったまま平坦な声でそう言った。


 例え副会長であろうと他と態度を変えないその大胆不敵さにライルは瞠目する。別にそれは彼女の個性アイデンティティなので良いのだが、これからお世話になるかもしれない彼に対してはもう少し丁寧な対応を取って欲しいとも思う。


「リコッタさん、ルバールさんよろしくお願いします。私の名はシンファー・クレイトスです。知っているかわかりませんが、この学園の生徒会副会長を勤めています」


「実はこの2人を連れてきたのは副会長に聞きたいことがありまして、少しお話しよろしいでしょうか?」


「はい、なんでしょうか?」


 そう言った彼は部長の隣に腰を下ろした。

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