ロイネ・ルバール
「お前は誰がタイプだ?」
「いやーそれはルバールさんだろ。いつも寡黙なのに時折見せる優しそうな顔。たまに俺のこと見てるし絶対俺に気があるぜ」
「いやいやそりゃあねぇよ。だったら俺のことも見てるし俺がタイプなんだよ間違いねぇ」
「いやいや俺が……」
ライルがコレスタニア学園に入学し、3週間が経った。今は三限が始まる前の10分休憩。特にやることもないライルは男子生徒の雑談を右耳から左耳に聞き流し、次の授業を待っていた。
ちなみにクラス分けでフィアーネとは別クラスだった。そのため彼女とこの教室で会うどころか、大学内で会うことはほぼない。
何せ同学年だけでも生徒数が数千人いるのだから無理もないのだ。
「相変わらずどいつもこいつも浮かれてますな〜〜。一応聞いとくがお前は誰が好き?」
横の席に座っていたリオン・アルベルがやれやれとポーズをして聞いてくる。
「別に誰も興味ねぇよ」
冷めたようにライルは言う。
「またまたそんなこと言いやがって〜〜」
そう言って肩に手を乗せてきた。
出た、お馴染みのだる絡み。
彼とは初めての授業でたまたま隣になってそこから話すようになった間内だ。学園で過ごす大体の時間は彼と行動を共にしている。
「でもお前って確かすげえ美人の幼馴染と暮らしてるんだよな?くぅ、羨ましい〜〜。一度でもいいから見てみてぇぜ!!」
「多分見ることは叶わないけどな。逆にお前は誰が好みなんだよ?」
「そりゃあロイネちゃんだろ。あの艶やかな銀髪、物怖じしないクールさ、誰とも一緒にいない孤高さ。どいつもこいつもあの娘のファンだぜ、このクラスじゃあな」
ポンポンと肩を叩いたリオンは前を向いた。ライルも誰もいない教卓を見て考える。
今彼が言ったロイネとは先ほど男子生徒が噂していた女性と一緒で、名前をロイネ・ルバールと言う。綺麗な銀髪に青い瞳、普段から表情が変わらない鉄仮面のような朴念仁さ、そして誰とも行動をしない一匹狼。
この50人はいようクラスでも一際注目が置かれている存在だ。クラスの男子ならばライル以外全員と言っていいほど彼女に夢中で、誰が先に声をかけるか、そんな競争もされているくらいに熱烈なファンが存在する。
ただライルは興味ないのでそんなことはどうでもよかった。
試しに渦中の存在である彼女を見てみる。相変わらず彼女の両脇は空席で、ただ淡々と次の授業を待っているようだ。
すると、ほんの少し後ろを振り返った彼女と目があった。
「おい、ロイネちゃんが俺を見たぜ。間違いねぇよ、見たか?」
「そうだな。お前を見てた間違いない」
「へへっ。そうだよなっ!」
大はしゃぎする彼に適当に返事を返す。
といっても普段視線が固定されてるのでは、と思うほど脇見をしない彼女がわざわざ振り返ったのはライルとしても意外だった。
一体何が気になったのだろうか。
そんなこんなでライルは授業を受けてしばらく。
やがて放課後になった。夕日が校舎を照らす中、ライルは学園を出て市街地にある学生寮を目指す。
すると見覚えのある背中を発見した。それは昼間リオンと噂をしていたロイネだった。そんな彼女が1人で歩いている。
……あの人も学生寮住まいなのか?
たまたま帰り道が一緒だから仕方ない。そんな免罪符を盾に、彼女にバレない程度の距離を置いて歩いていくと、やがて彼女は路地裏に入っていく。
そんな路地裏をライルは凝視した。
「なんでこんな路地裏に?」
……どうする?
別にこの後用事はない。フィアーネが先に寮に帰っているかもしれないが、彼女との約束事はないし、やるべきこともない。
つまりは暇だ。だから、
「追ってみるか……」
ライルもまた彼女と同じように路地裏に入っては姿を消したのだった。
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