第37話 父、娘が2人に増える
「「お帰りなさいませ。」」
「お、おぅ・・・」
スザク達が意を決して家の中に入ると、グロハーラとラファエルが2人で並んで出迎えていた。
昼までは教皇とアリエスに『これでもか!』と心を折られてしまった2人が・・・
それはそれはとても嬉しそうな表情でだ!
グロハーラがアイの目に前で跪く。
「アイ様、先ほどのお約束通り、わたくしは生涯、あなた様にお仕えする事を誓います。枢機卿の私はあの時に断罪されもう存在していません。」
単にクビになっただけなんですがね。
「どのようにしてお仕えするか思案していたところに、偶然、この屋敷の使用人を募集するチラシが私の前に落ちまして、こうして馳せ参じた訳でございます。」
「チラシ?偶然に?」
チラッとアイがスザク達の後ろで口笛を吹いている人物に目が行く。
(犯人はコイツね・・・、さて、どう料理をしようかしら?)
アイが不敵に笑う。
「お姉様!いえ、女お・・・」
すぱぁああああああああああん!
「あひぃいいいいいいいいい!」
巨大なハリセンがラファエルの顔面を強打した。
「あんた、何を口走っているの・・・」
どこから取り出したのか分からないが、巨大なハリセンをフルスイングでラファエルの顔面に叩き込んだアリエスが仁王立ちで立っていた。
「さ、最高です・・・、ご主人様・・・、もっとぉぉぉ~~~」
物理的に赤くなったのか、興奮してなのか分からないが、真っ赤な顔になって体をクネクネさせながら床の上で悶えている。
「ダメね・・・、下手な打撃系の攻撃では逆に快楽を与えてしまうなんて・・・、真のドMはこれほど手強いとは・・・」
タラりとアリエスの額から汗が流れる。
「やはり一瞬で意識を刈り取るしかないの?」
「はぁはぁ」と次のご褒美を期待しているドM女ラファエルとアリエスの視線が火花を散らす。
(お母さん・・・、こんな下らない事で何をマジになっているのよ・・・)
呆れてしまったアイが大きな溜息を吐いた。
「こら!ちゃんと仕事しなさいよ!」
リリスの声が響く。
「あ!ご主人様!こ、これには深い訳が・・・」
「そんなもんあるかい!聞き分けのない子猫ちゃんはどうなるか?」
キラリとリリスの目が怪しく光る。
ギュルルル!
「ひぃいいいいいいいいいい!」
リリスの手からロープが伸びラファエルへ飛んだ。
「「こ!これはぁあああああああああああ!」」
アリエスとアイが叫んだ。
縄がまるで生き物のようにラファエルの全身を縛り上げていく。
「おほほほほほほほほほはほぉおおお!私を女王様とお呼びぃいいいいいいい!」
まるでSM女王様のようなセリフをリリスが叫ぶ。
何だろうね?その態度って、お姉ちゃんにはとっても似合うのは気のせい?しかも言葉も1文字間違えているし・・・(アイちゃん談)
キュッ!
「あひぃいいいいいいいいい!」
縛り上げられたラファエルが天井からぶら下げられた。
どんな縛り方かは敢えて言いませんが・・・
(SM業界では定番の縛り方ですけどね)
「ご主人様ぁああああああ!最高ですぅうううううううううううう!」
歓喜の雄叫びを上げるラファエルさんであった。
【ラファエルの変態度がレベルアップした。】
どこからか声が聞こえる。
「やはりここの募集に申し込んで正解でしたぁあああああ!お姉様に会えますし、ご褒美だらけなんてぇぇぇぇぇ~~~~」
「「募集?」」
ピクン!とアリエスとアイが反応する。
「ねぇ・・・、募集って何?」
アリエスがぶら下がっているラファエルへズイッと近づく。
「もう教会にいられないと思った私は、あの後、教会を後にしました。その時、私の足元にチラシが落ちてきたのです。」
「チラシ?」
アイがジロリとグロハーラを睨む。
その行動にリリスがピクンと震えた。
「そのチラシには『聖女様と一緒に住み込みで働けますよ。こんなチャンスないです!すぐに申し込みを!』と書いてあったのです!もちろん!速攻で申し込みしてメイドとして働くことになりました。あぁぁぁ~~~、お姉様と一緒にいられるなんて夢のようです・・・」
口から涎を垂らしながらちょっと危ない表情になっていたラファエルさんであった。
ジロリ!
アリエスとアイの視線が飛んだ。
「えっとね、この2人の面接をした人は誰かな?」
ジロリとアイが某氏を睨む。
「そうね、私とスザクが王城へ行っている間に何をしていたのかな?現われるまでちょっと時間がかかり過ぎだった気がするけどね。」
アリエスがズン!と一歩を踏み出す。
さて・・・
2人の視線の先にいる人物(この人しかいないけどね)はというと・・・
当然の事ながらダラダラと汗を流しキョドッていた。
「だって、面白そうじゃない。この2人はアイちゃんとアリエスに執着しているからね。この変態に絡まれる分、妾はスザクとの愛を育む時間を取れるのよ。うふふふ・・・、何て完璧な作戦のよ!妾って天才ね!」
(だって可哀想じゃない。あんた達がお仕置きしたけど、このままだと無職で生活が困窮するに決まっているのよ。かといって、どこでも頭を下げて働ける感じでもないし・・・、でもね、ふと思ったのよ。この2人はあんた達にとっても懐いているし、あんた達の世話係なら最適じゃない?これでお互いウイン・ウインじゃない?)
「あなた・・・」
「お姉ちゃん・・・」
「リリスゥゥゥ~~~、あなた、また本音と建て前が逆よ。へぇ~~~、この変態を私達に押してけて自分だけがスザクとイチャイチャしようとしていたんだね。」
「薄々っていうよりも、こんだけ分かりやすい裏工作もないわよ。お姉ちゃん・・・、私も変態は要らないわよ。クーリングオフっていう事で返品は効くのかな?」
ジリジリとアリエスとアイがポキポキと指を鳴らしながらジワジワとリリスへと近づく。
「アイ、絶対に逃がしたらダメよ。逃げたら増殖して手に負えなくなるからね。」
「うん!分かった。お姉ちゃん、どんなに素早く床を這い回っても逃がさないわよ。」
「待て!待て!お前達、妾の事はゴキブリ認定か?ちょっと例えが酷いのでは?」
リリスが手を振ってジリジリと後ろに下がっていく。
「「問答無用!」」
アリエスとアイが神速の速さでリリスへ飛びかかった。
「あれぇえええええええええええええええええ!」
「よし!害虫退治終り!」
パンパンと手を叩きとってもスッキリした表情のアリエスだった。
「ご主人様ぁぁぁ~~~、私と一緒にドM道を極めましょうね。」
ラファエルと同じ〇〇縛りをされ、仲良く天井からぶら下げられてしまったリリスだった。
(ドM道って・・・)
ラファエルのの言葉に少し頭痛がするアイだったりする。
そして、そんな変態の扉を開けさせてしまったアリエスをジロッと睨むと、そのアリエスは少し気まずい顔をしてアイの視線から顔を逸らした。
(お母さん、お願いだからあの人を真人間に戻してよ。)
切に願うアイだった。
「ふぉふぉふぉ・・・」
グロハーラが楽しそうに笑っている。
「どうした?」
スザクが不思議そうに声をかけるが、そのグロハーラは深々とスザクに頭を下げた。
「教会にいた時の私は本当に愚かな人間だったと改めて思ったのです。権力に執着していた私は本当にバカでしたね・・・、それだけしか考えていない私でしたから、妻も私と一緒にいるのは苦痛だったと、早々に離婚してしまいましたし、残った娘であるラファエルすらも権力を集める道具としてしか見ていませんでした。そんなラファエルが今はとても楽しそうに・・・」
(おいおい・・・、あれはちょっと違うのでは?)
そう思うスザクであったが、そこは大人の対応で声に出す事はなかったけど・・・
「そして、アイ様やアリエス様達も本当に楽しそうにしています。これが家族の姿なのだと・・・、今までの私の目は濁っていたと実感しています。そして・・・」
グロハーラが吊り下げられているリリスに視線を移した。
「ご主人様はそんな私にチャンスをくれました。あんなに都合良く私達の前にここに勤める募集のチラシが落ちている訳がありません。」
「確かにな・・・」
ウンウンと頷くスザクであった。
「ご主人様はああしてふざけているように見えますが、お心はとても慈悲深いお方なのでしょう。私達親子はご主人様の慈悲深きお心に応えるよう粉骨砕身の気持ちでお仕えするおつもりです。もちろん、今やご主人様もスザク様の奥様となられました。これからも我々は誠心誠意真心を込めてお仕えする所存でございます。」
熱く語るグロハーラに少し引くスザクであったりする。
(重い・・・、そう思うのは俺だけか?)
「さて、リリス・・・、言い残すことはない?遺言なら聞いてあげるわよ。」
ニタリとアリエスが口角を上げた。
「待て!待て!お前達!本気で妾を殺す気か?」
全身を亀の子縛りされ吊り下げられている状態では、流石のリリスもジタバタするだけしか出来ない。
「本気だけど何か問題でも?」
(冗談抜きでもこれはチョイとマズいのでは?ちょっとふざけ過ぎたかも?)
流石にヤバい雰囲気を感じたリリスの前に1人の人影が飛び出した。
「リリス様に危害を加えるな!」
12.、3歳くらいの赤髪のメイド服を着た少女がリリスの前に立ちはだかった。
(誰?また新キャラ?)
アリエスが怪訝な顔で目の前にいる少女を睨む。
「リコン!お前ではアリエスには太刀打ち出来ん!下がれ!」
しかし、少女は首を横に振った。
「私はリリス様の忠実な部下です。そしてリリス様は私の願いを叶える為にこの体を与えてくれました。10万年に及ぶ苦痛に比べれば聖女の技なんて何でもありません!」
「リリス・・・、何なのよ?この子は?」
殺気だらけのアリエスが、目の前の少女の存在で急に殺気が萎む。
「ママを虐めるなぁあああああ!」
「「「はいぃいいいいいいいいいいいいい?」」」
いきなりの少女の爆弾発言でスザク、アリエス、アイの3人がフリーズしてしまう。
「「「ママ?」」」
少女が両手をブンブンを振り回しアリエスへと突撃したが、大人と子供の体の差は大きく、アリエスが少女の頭に手を乗せると、その状態のまま少女がグルグルと腕を振り回すが全く届かない。
「ん?」
スザクが何か気付いたようだ。
「アリエス、この子は魔力を持っているぞ。それに、その魔力は覚えがある。」
「確かに・・・、でもこの子がアレなら信じられないわよ。」
アリエスはいまだに頭を押さえられながら腕をグルグルと回している少女を見つめる。
「任せろ。」
スザクがそう言ってポケットから何かを取り出す。
チャリ~~~~~~~~ン!
ガバッ!
いきなり少女がマッハの速さで床に落ちたお金へと駆け出した。
「お金!お金ぇえええええええええ!」
ヘッドスライディングでお金へと飛びついた。
「やっぱりな・・・」
スザクが溜息を吐くと、アリエスと目が合い、彼女はズイッとリリスへと近づく。
「あんた、この子はまさか『ガメツ』なの?改めて魔力を確認したらアイツに間違いないわ!一体!何をやらかしたのよ!」
「ママを虐めないで!」
少女がアリエスの足に抱き付いた。
「う!」
流石のアリエスでも少女に抱きつかれてしまえば、これ以上は強く出られない。
「お前・・・、本当にガメツなのか?」
スザクが信じられない顔で少女を見つめていたが、その少女はアリエスから離れスザクへと抱きつく。
「パパ・・・、私のパパ・・・、もう私を捨てないで・・・」
「「「あ”!」」」
スザクファミリー全員が石化した。
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