第28話 最凶夫婦&押しかけ愛人?、更なるざまぁ!をする②

「「聖女だとぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」」


信じられない表情のドーリーヨコとボンクーラーが目をこれでもか!と見開きアイを見つめていた。


今のアイの姿はスザクが聖女の力を封印していた時の黒髪に黒い瞳の状態だ。

このような姿では誰もがアイを聖女だとは思わないだろう。


「そんなバカな話があるか!聖女とは神に選ばれた女性だぞ!そのような忌み子の姿が聖女である訳がない!平民は平民らしく黙って王家の言う事さえ聞けばいいのだ!」


ボンクーラが唾を吐きながらアイを指さし叫んでいる。


「分かったか!平民なんて王家の私が本気を出せば・・・」




ボキィイイイイイイ!




「へっ?」


ボンクーラーのアイを指差していた指があらぬ方向に折れ曲がってしまっている。

一体何が起きたのか状況も分からず、呆けたような表情で自分の折れた指を見つめていた。





「ぎゃぁああああああああああ!」





痛みの信号がやっと脳に達したのか、指を押さえて大声で叫ぶ。


「指がぁあああ!私の指がぁあああ!痛い!痛い!痛いよぉおおおおおおおおおおおおおおお!」






「ボンクーラァアアアア!」


ドーリーヨコが指を押さえ叫んでいる我が息子を見て駆け出した。


しかし、その前にはリリスが腕を組み立っている。


「どけぇえええええ!邪魔だぁあああああああああああ!」


「ダメよ。ここは通行禁止だからね。」


リリスの真っ赤な瞳が怪しい光を放つ。


「貴様のバカ息子はアイちゃんに酷い事をしてきたわね。妾はねぇ・・・、スザクの次にアイちゃんが好きなのよ。あの子が妾に人間の心を教えてくれたの。妾を姉として・・・、そして母として慕ってくれたのよ。人の心を知らない妾を怖がる事もなくね・・・、気持的には妾もスザク達と一緒にざまぁ!しかたっかったけど、今回は譲るわ・・・」


「五月蠅い!貴様の与太話なんぞ興味が無い!さっさとどけぇええええええ!英雄である俺に逆らうな!これ以上邪魔をするなら斬る!」


ドーリーヨコが剣を振りかぶりリリスへ斬りかかった。




「魔王すら勝てずに敵前逃亡した貴様が妾に刃を向けるとな・・・、この虫けらが、身の程知らずを教えてやろう・・・、ふふふ・・・」




リリスの赤い瞳がは虫類のように縦に割れ、全く感情の籠ってない笑顔をドーリーヨコに向けた。






「痛い・・・、痛いよぉぉぉ・・・」


涙を流しながらボンクーラーが折れた指を押さえている。


「親に教えてもらっていないのか?人を指差すのはマナー違反だってな。」


「し、知らないよ・・・、そんな事はぁぁぁ・・・」


「良かったな。1つ勉強が出来てな。」


スザクがニヤリと笑う。

その態度にボンクーラがプライドを傷つけられたと思ったのか、目を吊り上げスザクを睨んだ。


「五月蠅い!貴様のような平民が英雄の息子であり、次期国王の私、ボンクーラー・ミエッパリーに指図するんじゃない!私は王族!平民とは違う高貴な存在なのだよ!」




「五月蠅いのはどっちよ。」




ガシッ!


「えっ!」


アリエスが音も立てずにボンクーラーの後ろに移動していた。

そのままバックを取り両腕を回して腰をクラッチする。


その状態でゆっくりとボンクーラーを持ち上げた。


「な、何をするんだ!」




「決まっているじゃない。悪い子にはお仕置きよ!」




「ひぃぃいいいいい!止めぇえええ!止めてくれぇええええええええ!」


狼狽するボンクーラーなど無視し、アリエスがニヤリと笑う。


「却下!」


最高到達地点まで持ち上げると、今度はダン!と右足を前に出しグッと膝を立てる。


そのまま勢いよくボンクーラを振り下ろした。


「地獄へ落ちろぉおおおおおおおおおおおお!アトミックゥウウウウウウウウ!ドロップ!」






ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッン!






「ひぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」




ボンクーラーの絶叫が部屋中に響く。




「ケツがぁああああああああああああああ!ケツがぁああああああああああああああ!」


お尻を押さえ涙を流しながら、ボンクーラーが床の上をのたうち回っていた。


「ケツが割れたぁあああああ!ケツがぁあああああああ!」


お尻は元々割れています。

あまりの痛さに完全にパニックになっているようです。




「はぁ~~~」


スザクとアリエスのやり取りを見ていたアイが大きな溜息をしてしまった。


「お父さんにお母さん、気持ちは分からなくはないけど、世界最強コンビでいい歳の大人2人が子供相手に何をしているのよ。」


「教育的指導だ!」


スザクがドヤ顔でニッコリスマイルをアイに向ける。


「私が小さい頃はこれくらいの事は当たり前にやられていたからね。心配ならバレすにるから大丈夫よ。」


アリエスが大きな胸を見せつけるように胸を張った。


「今のご時世、世論的にそんなのは通用しないんだし、バレなければ大丈夫って・・・、おじいちゃんと同じ事言っているよ。教会の関係者ってサイコパスな軍団なの?まぁ、このバカ王子達も似たようなものね。」


アイが盛大な溜息をついた後、床を転げ回るボンクーラーの前に立つ。


「後は被害者である私が直接カタをつけるわ。お父さん達は手を出さないでね。」


スッと手を伸ばす。


「ヒール!」


ボンクーラーの全身が仄かに緑色に輝く。


「尾てい骨が粉砕骨折していたわよ。お母さんも酷い事するね。でも、もう大丈夫よ。」


その言葉でボンクーラーが自分の尻を触って確認をしている。


「ほ、本当だ・・・、痛くない・・・」


ガバッと勢いよく起き上がりアイへ向き直った。


「アイ・・・、君はやっぱり僕のマイエンジェルだよ。やっと僕の側室になる決心がついたんだね。それにしても大丈夫だったかい?どうやら大丈夫だったようだね。あの時はどう見ても大怪我だったし、気が動転して君を見捨てるような行為をしてゴメンね。」


髪をかき上げキラリと輝くような笑顔でアイへとウインクする。



「キモいわね・・・」



ボソッとアイが呟く。


「はいぃいいい?」


どうやらアイの言葉はボンクーラーに聞こえたようで、眉間に皺を寄せ怪訝な表情でアイを睨みつけた。


「僕の空耳かい?君から信じられない言葉が聞こえてきたんだけど?」


「ハッキリ言わないと分からないの?このバカ『元』王子・・・」


アイの視線が鋭くなる。



ズズズ・・・



アイから全身を切り刻まれてしまうような鋭い殺気が放たれる。


殺気の放出に伴い、黒い髪と瞳が徐々に変化を始めた。



「お前ぇええええええ!何だよその髪と瞳はぁああああああああああ!」



圧倒的な殺気の放出にボンクーラーがビビり、ジリジリと後ずさりをするが、偉そうな言い方はさすが腐っても王子を名乗っていただけある。

プライドの高さだけは褒めていいかもしれない。


アイは輝く銀髪を軽くかき上げ、金色の瞳をボンクーラーへ向ける。

そしてニコッと微笑む。

あまりにも可愛らしい笑顔に彼の頬がポッと赤くなってしまった。




「ねぇ、あなた・・・」


「どうした?」


「あの子ニコニコしているけど、完全にキレているわね。」


「あぁ、間違いないな。アリエスは知らないけど、怒った時のアイはな・・・」



「お父さんにお母さん!」


両親の会話が聞こえていたのだろう。

まるで『スマイル0円』のような特上の笑顔をスザク達へ向け、人差し指を立て左右に軽く振った。




「私、キレてないわよ・・・」




((やっぱりキレているじゃん!))


2人は確信した。




「これが本当の私よ。」


驚いているボンクーラーの前にアイが堂々と立つ。


「勇者スザクと聖女アリエスの子供がこの私。聖女アイよ。」



「勇者だとぉぉぉ~~~」



ボンクーラーの視線が鋭くなりアイを睨んだ。


「勇者は私の父だ!貴様のような平民の親が断じて勇者ではない!勇者の名と、しかも!聖女まで名乗るだとぉおおおおおおおおおおおおおおお!この大罪人が!」




「そうか・・・、あなたは知らないんだよね。」




アイが拳を構える。

右足と右腕を前に出して体は相手に対して直角に向け、体の中心の急所は絶対に相手に向けないようにしている。


「何をほざいている!この平民が・・・」



ダン!



「ぐはぁあああ!」


地面を滑るようにアイがボンクーラーの直前までいきなり移動した。、

彼にとってはアイが瞬間移動したように見えたかもしれない。

それくらい予備動作も全くない完璧な体重移動による足運びだった。


目の前まで迫ったアイは前に出した右足を床に叩き付ける。

同時に右腕もボンクーラーの顔面へと突き出した。



メキョ!



「げひゃぁあああああああああ!」


アイの容赦ない拳がボンクーラーの顔面にめり込み、そのまま勢いよく後ろへと転がっていく。


ゴロゴロと派手に転がり止ると力無く起き上がるが、顔面を殴られてしまった為、大量の鼻血がダラダラと流れているので、イケメンが台無しになっている。


「な、何だよ・・・、お前の動きが全く見えないなんて・・・、お前の力は?」


構えを崩さずアイがニヤリと笑う。


「これが私の本当の力よ。勇者と聖女の力を引き継いだ私の力ね。」


「嘘だ!勇者は私の父上なんだぞ!その勇者の血を継ぐ正当な存在は私なんだよぉおおおおおおおおおお!」


「あなたは昨日からずっと部屋に引き籠もっていたから知らないみたいね。もう、あなたの父親は、いえ、勇者パーティーは世界を騙した大罪人と認定されたわ。あなたこそ偽勇者の子供、あなた達の居場所はどこにも無くなってしまったのよ。」


「そ・・・、そんなの・・・、父上!」


ボンクーラーが慌てて父親のドーリーヨコを探したが、その父親は部屋の真ん中で虚ろな視線を天井に向けて立っている。

まるで夢遊病の患者のように・・・



「もうあなた達親子はお終い・・・、お父さんの功績を横取りして嘘を吐き続けてきた結果がこうだったとはね。それと・・・」


「それと?」



ブワッ!



アイの全身から闘気が噴き出す。


「今まで散々とやってくれたわね。あなた達勇者パーティーとその家族は世界を騙した大罪人として、世界の最果てにある脱出不可能の収容所に収監されるでしょうね。あなた達はそれだけの罪を犯したの。もう2度とあなたには会えなくなるから・・・」


どこからか剣を取り出し、それをボンクーラーへと放り投げる。



ガラ~~~~~ン!



「ここで今までの精算をさせてもらうわ!一方的に私がボコボコにしたら弱い者苛めみたいじゃない?武器さえあれば、万が一でも私に勝てるかもしれないわよ。私は素手だしね。」


パチンとボンクーラーへウインクをする。

そのボンクーラーは、ワナワナと震えている。


「バカにしやがってぇぇぇ・・・、殺す!殺してやるぅうううううううううううう!」


一気にアイへと駆け出し、床に転がっていた剣を拾いアイへと斬りかかる。




「ザコの息子はやっぱりザコだったわね・・・」




迫り来る剣をアイは左足を踏み込み、左手の裏拳を剣の刀身に真横から叩き込んだ。



パキィイイイイイイイイイ!



刀身が半ばから折れ、折れてしまった刀身がクルクルと空中を回転している。


呆気にとられてしまったボンクーラーを無視し、アイは今度は右足を前に踏み出す。


「はっ!」


右足を前に踏み出すと同時に右拳もボンクーラーの鳩尾へと突き出した。


「うぼぁあああああああああああああああああ!」


深々と拳が鳩尾へ食い込んだ。


しかし!

アイの連撃はまだ止らない!


鳩尾に食い込んだ拳を引き抜き、抜いた際に曲げた肘を下から顎へと叩き込みかち上げる。


「がはぁあああああああああああああああ!」


強烈な下からの打撃でボンクーラーの体が宙に浮いてしまった。




「トドメぇえええええええ!」




打ち付けた肘を肩からグルンと回し、腰を屈め拳を低い位置で構えた。

ダン!と左足を踏み込み、右のアッパーをかなり低い位置から放つ。











ズムッ!(プチ!プチ!)










「へやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」



ボンクーラーの絶叫とも呼べるほどの悲鳴が部屋中に響いた。



アイの超低空から放たれたアッパーの拳が深々とボンクーラーの股間に突き刺さっていた。



ドサ!



長い滞空時間を終えてボンクーラーが滑るように床へと倒れ込む。



股間に大ダメージを受け、蹲りピクピクとしている。


潰れた!アレは確実に!

音が2つ鳴ったから2コのアレが揃って・・・

男として人生はこの瞬間終わった。


人生を終わらせる事に関しては、アイはアリエス以上に過激な女の子かもしれない。



「昔から言われていたよね?




『悪い子は聖女にお仕置きされるぞ~』




ってね。」


アイが可愛くウインクする。



「お仕置き完了!」

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