第21話 教皇、枢機卿を物理的に分からせる④

「しくしく・・・、アリエス様ぁぁぁ~~~、許して下さい・・・」


アリエスに徹底的に蹂躙されてしまったラファエルが人目を憚らずに泣いてしまった。


未だに足4の字固めをガッチリと極められていて、泣くことだけしか出来なくなってしまっている。


「これで分かったぁあああ!私に楯突くにはまだまだってね!」


「はいぃいいいいいいい!分かりましたぁあああ!痛いです!だから!だからぁあああああ!」


ガッチリと極まっていた足をほどき、アリエスがスクッと立つ。


ラファエルは床の上でガクガクと震え、泣きながら四つん這いになってアリエスから必死に離れようとしている。


「私に楯突いたお仕置きはこれで許してあげる。だけどね、教皇にやった事は許していないわよ。」














「えっ?」










その言葉でラファエルが硬直してしまう。



「そりゃそうでしょう?たったこれだけのダメージで許されると思う事自体が甘いわよ。教皇への無礼に対するお仕置き、今からキッチリその体に叩き込んであげるわよ。ふふふ・・・、だけど安心して、壊れそうになったらちゃんと直してあげるわ。どう?さっきあなたが言った言葉よ。どんなに大怪我したって、私がいれば回復が出来るからね。」



「いや・・・、いや・・・、いやぁああああああああああああああ!」



いやいや!と必死に叫びながら四つん這いの状態で必死にアリエスから離れようとしている。


ゲシッ!


そんなラファエルの状態だが、アリエスが背中を踏みつけた。


「嫌です!嫌ですぅうううううううううううううう!どうか!どうか!お許しをぉおおおおおおおおお!」


「いいえ!許さないからね!まだまだ今は地獄の一丁目に辿り着いただけだから、地獄のフルコース全てを回らせてあげるわ!」


そんなラファエルの背中に馬乗りになった。

ニタリとアリエスの口角が上がる。



ミシィイイイイイイイイイイイ!



グッとアリエスがラファエルの顎を両手でガッチリと掴む。


「ひゃ!ひゃ!ひゃめてぇええええええええええ!」




鬼畜も鬼畜!


戦闘不能レベルを超える多大なダメージを肉体に受け、ほうほうの体で逃げるラファエルに『キャメルクラッチ』をかけ、完全に完璧に心を折りにきた。

こんな状態のラファエルはアリエスに為すがままにされ、背骨をバキバキと折られ始めていく。


体だけでなく心も・・・


ズタズタどころではない!

徹底的に念入りに折りたたまれている。


ドSもドS!ドSの上を行くスーパードS女王様の餌食となったラファエルであった。


聖女を敵に回すとどうなるか?


聖女以外の教会最高戦力でも敵わない現実を、反逆者達は生け贄となった彼女の姿をマジマジと見せつけられていた。






ラファエルさん・・・






合掌・・・









「嘘だ!私の最高傑作でもあるラファエルがぁああああああああああああ!」


グロハーラは今の自分の置かれている状況が理解出来なかった。


聖女であるアリエスが復活するまでは、自分の娘のラファエルが最強だったはずなのに、アリエスの前では歯が立たないどころか、人間の尊厳までボロボロに蹂躙されている姿を目の当たりにした。


(こんなはずでは・・・、こんなはずでは・・・)


冷や汗をダラダラと流しながら横にいる枢機卿達を見ると・・・


(くそ!)


ブモノ・ツーフ枢機卿が自分の護衛でもあるテンプル・ナイツの9席と10席と一緒にかなり離れている場所へと避難している。

彼は今回のクーデターには参加していないので当然と言えば当然の事だ。

まぁ、あまりにも普通過ぎて面白みも全くない人物なので、グロハーラも仲間に引き入れる考えも無かったけど・・・


このような事態になっては少しでも戦力が欲しい。

だが、彼の護衛のテンプル・ナイツには例のチョーカーを装着していなかった。

その事を激しく後悔していたが、例え自分の手駒にしても聖女の足止めにもならないだろう。



そして・・・





ラファエルが殺したと思っている教皇も・・・





自分達の首には既に死神の鎌が喰い込んでいる事さえ気付いてはいないグロハーラ達であった。




「グロハーラ枢機卿!これはどういう事だ!」


ゴク・ア・クヤーク枢機卿が顔を真っ赤にしてグロハーラへと詰め寄る。


「貴様はこの教会を掌握出来るとほざいていたよな!しかもだ!この聖女のお披露目の式典を利用して我等の戦力を信者へと誇示し君臨出来るとな!」


グイッとゴク・ア・クヤークがグロハーラの襟元を掴みにじり寄る。


「しかもだ!聖女を奴隷化出来るとも言っていたよな?その聖女を使って我が父の敵、スザクを葬り去る事も出来ると!それがどうなっている!聖女は制御出来ていないし、お前の懐刀のラファエルすら瞬殺だ!このままでは・・・」



パチパチ・・・



「「!!!」」



2人がギロっと拍手の音がした場所へと首を向ける。


「「貴様はぁああああああああああ!」」


スザクが床の上に倒れているアザゼル(死んでいない)の上に座りニヤニヤと笑っていた。


「グロハーラ、これでもうお前の手は尽きたな。さて?諦めて投降するか?まぁ、誰かさんは絶対に許してくれないだろうな。」



「だ!黙れぇえええええええええ!」



グロハーラの隣にいたゴク・ア・クヤークがズイッと前に出て喚き始める。


「あんた誰?」


スザクの言葉にゴク・ア・クヤークの顔が真っ赤になる。


「貴様のおかげで我が父であるゲキ・ア・クヤークが失脚したのだぞ!その恨み・・・、決して忘れるものか!」


「ゲキ・・・、知らんな。そもそもだ、当時俺に粛正されたって事は、前教皇派の不正に関与していたメンバーだったという事だろう?潰されて当たり前じゃないか。それを逆恨みされても困るな。」



至って正論である。

スザクの言っている事は間違っていない。



「そんな事はどうでもいい!」


図星を指摘され開き直るゴク・ア・クヤークであった。


「貴様は我が父の敵!それだけで十分だ!テンプル・ナイツ達よ!この不届き者を殺せ!」


クヤークの後ろから2人の騎士が現われる。

その騎士の首には例のチョーカーが巻かれていた。


「ほぉ~、これが例の『隷属の首輪』か?」


「ぐふふ・・・。よく分かったな。まさかシタッパーが裏切るとは思ってもいなかったぞ。だがなぁあああ!これは聖女を操ろうとしていた物とは訳が違う!新しい機能を追加した最新型なんだよ!ただ操るだけではなく、その者の潜在能力をも解放するのだ!貴様が倒したアザゼルとは桁が違うぞ!」


2人の騎士がスラッと剣を抜き身構える。


「しかもだ!こいつらの序列はアザゼルよりも高い4席と6席だ!そんな騎士が潜在能力を解放したらどうなるか?ぐふふ・・・、血祭りにされる貴様の姿が目に浮かぶぞ。覚悟するんだなぁあああああ!」


「そうかい・・・」


ゆらりとスザクが立ち上がる。


「じゃぁ、それが通用するか試してみるか?」


ニヤリと笑い1歩踏み出す。



「お父さん!」



スタッ!


クルクルと回転しながら上からアイがスザクの横に華麗に降り立つ。


「アイ!」


スザクが驚いた顔でアイを見るが、そのアイはスザクを見るとニコッと微笑む。


「お父さん、ここは私に任せて。コイツは私がお仕置きすると決めたの。だから、私の獲物なんだからね。」


そう言って、アイが腰を落とし右足と右拳を前に出し構える。


「分かった!アイ、思いっ切りやれ!こいつらの骨も残さず粉々に砕いてやるんだな。」


「うん!もちろんよ!」


大きく頷きながらアイが数歩前に進む。



「私は勇者スザクと聖女アリエスの娘、聖女アイ!2人に代ってお仕置きよぉおおお!」



ビシッとアイがポーズを取る。

(どんなポーズかは色々と問題があるので敢えて言いませんが・・・)




アイ VS テンプル・ナイツ4席、6席、ゴク・ア・クヤーク




戦いのゴングが鳴る!



アイは先ほどと同じように右手右足を前に突き出し、急所を絶対に正面に向けないようにして構えている。

対して、十数メートル離れている騎士達は剣を正眼に構えている。

ゴク・ア・クヤークは2人の騎士の後ろに隠れているので、まずは邪魔な壁役である騎士を倒さなくてはならない。

いくらスザクが牽制し逃げ道を無くそうとしていても、どんな隙があって逃げられてしまうか分からない。

モタモタしているとクヤークは騎士どころかグロハーラすらも見捨てて逃げるだろう。


「速攻でカタををつけるわね。」


ペロッとアイが唇を舐めた。



ドン!



「!!!」


十数メートルも離れている距離をアイは一瞬にして詰め、片方の騎士の正面に立った。

いきなりアイがすぐ目の前に立ったものだから、騎士は慌てて剣を振りかぶってしまったが、それは致命的な隙だった。


「お兄さん!私を素人と思ったら大間違いよ!」


ダン!


アイが右足を一歩前に踏み出すが、あまりもの踏み込みの強さに床に放射線の細かいヒビが走る。

踏み出した足を軸に腰を回転させ、上半身、肩と順番に捻りながら回転エネルギーを拳に乗せ、真っ直ぐ正拳を騎士の鳩尾へと叩き込んだ。



ドム!



だが!


騎士の上半身は銀色のハーフプレートに覆われ、拳は当ったが鎧をぶち破る事が出来ずに表面で止っていた。


「がはははぁああああああああ!聖女といえ、何だかんだいっても小娘だったな。潜在能力を解放した騎士には敵わないとはなぁああああああああああ!」


クヤークがアイと騎士との戦いを見て、アイの技が通用しないと思い高笑いする。


しかぁああああああし!


そのアイは全く動じる様子はなく、逆にクヤークへ顔を向けニヤッと笑った。


「悪役おじさん、安心するのはよく見てからにしたら?」


「何を負け惜しみを言っている!どこをどう見ても貴様の技は通用していないではないか!6席のメタトロンよ!その小娘を叩き切れぇえええええええ!」


だが、クヤークは気が付いていなかった。

アイがメタトロンに突きを当ててから、そのメタトロンが全く動いていない事を・・・


「どうした!メタトロンよ!なぜ俺の命令を聞かない!さっさと殺せぇええええええええええ!」



「無駄よ・・・」



アイがボソッと呟く。


「もう勝負はついているからね・・・」



ボシュゥウウウウウウ!



「なにぃいいいいいいいいいいいい!」


いきなりメタトロンの鎧の背中部分が弾け飛んだ。

ちょうどアイが打ち込んだ鳩尾の延長線上だ。



「がはっ!」



直後にメタトロンの口から大量の血が吐き出される。

アイはその血をサッと躱し、メタトロンの隣に立った。


ゆっくりと男が倒れる。


ピクリとも動かない。



「どうした!何で動かない!あんな小娘のパンチ一発なんぞ大した事はないはずだ!動け!動けぇええええええええええ!」



「無駄よ。」



アイが拳をクヤークへと向ける。


「今の技は私の突きの威力全ての衝撃をこの人の体内で反響させたの。どんなに強固な鎧に覆われようが、いくら潜在能力を引き出そうが無駄よ。私のこの発勁の前ではね。本気で放てばこの人の内蔵や脳はズタズタになって確実に殺せるわ。でも、彼はあなた達に操られているだけだからね、戦闘不能レベルまでのダメージで抑えたわ。」


だからって、クヤークから見ると、あれはどう見ても死ぬ寸前にしか見えない。

全く動いていなかったのに、急に全身がピクピクと痙攣を始めた。

現実にあのピクピクは死の直前の痙攣だと・・・

そう確信したクヤークだった。


「あっ!ちょっとやり過ぎた!心臓が止っているよ!ヒール!」



(やっぱりぃいいいいいいいいいいいいい!)



てへ!とアイが可愛らしくウインクしたけど、クヤークにとってアイの存在は自分に死を運んでくる死神にしか見えない。


ニタリとアイがクヤークへ冷たい笑顔を向ける。




「悪役おじさん、もう1人のお兄さんもすぐに片付けるね。それまで逃げちゃダメだから。まぁ。それでもいいんだよ。でもね、絶対に逃がさないから覚悟してよね。」




まるで蛇に睨まれた蛙のようにガタガタと震えるだけしか出来ないクヤークだった。

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