第5話
此処の人たちは朝が早い。本当に肩身が狭くなるほど朝が早い。
徹夜して、頭を覚まそうと散歩に出たら朝市をやっていた。
スマホを見直したら朝七時だった。何時から開けているのか聞いたら六時半からという。それでも「並べる先から持っていかれるから、もうこれしか残ってない
んよ。せめて並べるまで待ってくれたらいいのにねぇ。」
いや別に買いに来たわけではないのだがそんなことを言われると何か買わないと小銭入れしか持ってないからそれで買えるもので、と、キュウリ4本で150円、
芋の茎100円、いいのかそんな値段で、えっ悪いから負ける、いえいえ大丈夫です街だったらきゅうり一本で100円はしますから、ありがとうございます。本当に大丈夫です。はい、本当に。ありがとうございます。
すっかり寝る気が無くなってしまった。
家に帰るとスピスピ気持ちよく寝ている奴がいた。いいのかそんなことで。
まだ暑いぞ、冬眠するにはまだ早い。いやこいつ冬眠しなかった。
冬でもこたつでぬくぬくとみかんを食べている奴だった。
「仕事するか。」朝からなんか疲れてしまった。朝ご飯はこいつが起きてから用意してもらおう。今日も暑そうだ。まだ8時にもなってない。いつもならまだ寝ている時間なんだけどな。
結局寝落ちして気が付いたら12時だった。
「おはよう。」
「こんにちわ、だろう。昼飯食べるか。」
「お願いします」
レトルトのカレーライス。先日頂き物の葡萄。朝カレーは上手い。
「だから、昼だって。」
「起きた時間が朝なんだ。だから私にとって今食べているのは朝ごはんなんだ。」
自信満々に言ってやった。
「で、仕事は片付いたのか。」「食べたら送信する。それで暫くは終わりだから
また片づけをする。」
「それなんだがな、必要あるのか。不用品を捨てるだけなら業者にでも頼めば済むだろう。いい加減結論を出したらどうだ。」
カレーが辛い。
「目が怖い」
「いやお前、怖いのは目じゃなく身体だって言ってなかったか、この前も庭で青大将見つけて腰抜かしてただろう。目が合う前に竦んでたくせに」
「条件反射なんだから仕方ないだろう。お前も仲間に私の視界に入らないよう言ってくれればいいじゃないか。本能で怖いんだよ。」
「目は可愛いんだろう。」
「今のお前の目は怖い」
「我儘な奴だなぁ」
大体、私は蛇が苦手だってわかってて人化してるくせに。
「私は人と暮らすようには出来てないんだ。今更父親と暮らせるとは思わないし父も同じ性格だ。だから弟のところに同居するのも断って施設に行くことにしたんだ、一緒に暮らそうと言っても頷かないに決まってる。」
「だが、迷ってるだろう。」
私は自分が勝手な事はわかっている。自由に生きたい。でも一人ぼっちにはなりたくないし帰る場所も残したい。でも人と関わらなくてはいけない此処には住みたくない。それに、私が誰かと暮らすようになってもお前は傍にいてくれるのか?
人とは関わりたくない。でもお前は人じゃないから。
一緒にいてくれるんだろう。ずっと一緒に。私は欲しいものはすべて持っていたいんだ。
「やっぱり、我儘な奴だな。」
カレーが辛い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます