第5話

次の日の朝、神官が家に来て明日の朝に出ると言う旨を伝えにきた。


「ーーー当分は会えなくなる。両親とはじっくりと話しなさい。」


「...分かりました。」


王都へ行った後の事を両親と共に聞き、神官は村長の家の方へと去っていった。


「アルス...ちょっと話そう」


「そうだね」


そう言いながら、少し重い空気のまま家の中へと進んでいく


「...お前は、どうしたい?」


和気藹々といつもご飯を囲んでいたあのテーブルで重苦しい空気の中、お父さんが喋り出す。


「俺は行くよ」


答えは決まっていた。

俺は、力が欲しい。

あとはいつ言うのか、それだけだった。


もちろん両親には感謝をしている。

転生者とは言え、この世界での俺の両親だ。

それに、家族の温もりは俺の疲弊した心を癒してくれた。恩返しをしたい、王都へ行き富と名声と力を手にし、楽をさせてあげたい。

離れるとしても、その思いは変わらないだろう。


「...そうか」


両親は少し苦しい顔をしていた。

それもそうだろう、まだ俺は5歳だ。こんな歳の子供を王都へ送り出すのは、それが最善とわかっていても、躊躇ってしまうだろう。


少し間が空き、お母さんが喋り出す。


「...アルスな考えは分かったわ、もう一度夜に話しましょう。」


「...そうだね」


こうして、この話は夜へ持ち越しとなった。


そのあとも、ずっと沈黙が続き少し居づらくなった俺は魔法を試そうと、近所の山へこっそり向かう。


「あの儀式の時に頭に浮かんだこれを言えば、魔法が発動するのか」


今まで、魔法の使い方など見当もつかなかった。

たが、あの儀式をした時に、今までも使っていたかのような、そんな当たり前かのように不思議と魔法が理解できる。


どうやって使うのか、どのように作用するのか


そういったことが、頭に浮かんでくる。


「不思議だな...」


今までにはない感覚だった。あんなに待ち遠しかった魔法が今近くにある。俺を強くしてくれる力がここに。










「...『アブソリュート』」

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