第4話

あれから4年が経ち、5歳になった。


自分の人生の生き方を決める大事な日だ。


この日の結果次第では魔法以外の道で自身に力をつけなくてはならない。


もう前世みたいに自分を抑えるのはやめた。


4年がたった今でもまだ忘れられない、あの時の静寂を感触を恍惚を


ただ、今は心の底から全てを薙ぎ倒せる力が欲しい。単純だが、最も効果的な暴力が


それをもって、この世の『欲しい』を手に入れると、そう決めたのだから。



「アルスー、行くよー」


「はーい、母さん」


母の声と共に俺は家を出て、選定の儀へと向かう。


どうやら村長の家でやるらしい。


村中の5歳になった子供達は、全員別室に集められ待機している。

いうても、6人ほどしかいないが、それでも自分の知らない子もいた。


そこで、いままで遊んできた知り合いの子供と話しながら儀式を待つ。


「おれは、きしになるんだ!!」

「ぼ、ぼくも!」


皆子供ながらに、将来の夢を語りだす。

この世界において騎士とは、近距離、遠距離関係なく、強い魔法使いのことを指す。


「アルスは?」

「俺はな、王になる。そして世界を獲る!」


「おうって、きしよりえらいの?」


「そうだぞ、だから俺が王になったら雇ってやるよ」


「なら、おれもおうになる!!」


「ぼ、ぼくも!!」


そういった他愛もない会話で待機室で盛り上がっていると、神官が選定の儀の説明をしにきた。


「私は、今年の儀式を担当するクイックスと申します。よろしくお願いいたします。ではこれから、儀式について説明します。みなさん、よく聞いてくださいね」


「はい!」


「まず私が1人ずつお呼びいたしますので、私と一緒にあなたたち両親の待つ個室まで行きます。次にそこに置いてある、水晶に手を置いてください。それであなたたちがすることは終了です。結果を両親に見せ部屋から退出してください。以上で儀式の順序の説明を終わります。

では、まずはマリアさんから」


そうして、次々と呼ばれていって最終的に俺が残った。そして


「アルスさん、きてください」


「分かりました」


神官の後ろについていく。

部屋に到着すると、俺の両親が待っていた。

特に緊張した様子もなく、ただ5歳の記念日という認識のようだ。


そして俺は、神官に促されるまま水晶へと触れる。その瞬間、自身の頭に今までずっとわからなかった魔法の使い方と、どんな魔法が使えるのかが浮かんできた。


「...〜〜〜い」


「...」


この部屋にいる神官と情報を処理している俺以外の両親はどうしたんだろうという心配の眼差しを浮かべる。


「ありえない!」


そう言った神官は神でも見たかのような恍惚の表情を浮かべ俺の目を見てくる。


何かを悟った両親は慌てて神官に結果を聞く


「...そうですね」


一度大きく深呼吸をした神官は落ち着いたのか、先程のテンションで結果を言う。


「アルスくんの魔力総量は6800、魔力出力は3000です。」


両親は空いた口が塞がらない。


平均を知らない自分はすごいのはわかるがどれほどすごいのかはわからず困惑している。


「神官さん、これってどれほど凄いのですか?」


「そうですね、世間一般の魔力総量は500〜700です。また、魔法において重要だと言われる出力に関しては、50〜70です。魔力出力が高いというのはとても希少で、出力が高いぶん威力も高まり、より強力な魔法を打つことができます。」


(これだ、これを待っていた。この能力ににあの魔法があれば俺は世界をとれる!)


そのあと、例の如く神官から俺を王都へ連れて行きたいという打診があり、親と俺は家へ帰りその日はゆっくりと寝た。

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