第3話
散歩から帰りすぐに、母は料理を始めた。
俺を自分の背中に背負い、鍋に魔法陣のようなものから出た水を入れている。
入れている...
「!?」
急に動いてびっくりしたのか、母は俺を片手でさすりながら、水を入れ続けている。
俺はすぐさま魔法陣に翳している方の手へ自身の手を伸ばす。興味深そうに何度も手を振ると、母も気付いたのか、話しかけてくれる。
「魔法が気になるの〜?」
母は子供の教育のためかハキハキとゆっくりとそう語りかけてくる。
「だう!だう!」
「そうか〜、気になるか〜、でも5歳になるまでは魔法は使えないよ〜。それまで楽しみにしてようね〜」
そういうと、母はまた、定期的に上下に揺れながら、料理を再開する。
そのあとも、魔法に手を伸ばすがなだめられてご飯が完成してしまった。
ちょうどそのタイミングで扉が開く。
俺は何事かと、すぐさま扉の方へ視線を向けるが、母は誰かわかっているのか、背中を向けながら話し出す。
「おかえり、今ちょうどご飯できたよ」
「ただいまー、パパが帰りまちたよ〜アルス〜」
疲れた様子で帰ってきた挨拶をした後すぐに、俺に気づいたのか、俺の父らしき人物が頬にキスをしてくる。
(髭が痛い...)
そう言ったことを考えながら、顔を見る。
そこには、金髪で緑目の輪郭がはっきりしていて、目が少し釣り上がっているキリッとした表情を崩しに崩した顔があった。
(両親どっちも親バカかよ)
だが、この両親から生まれた子供はさぞかっこよかろう。そう断言できるくらいには2人とも顔が整っている。
自身の将来が、楽しみに感じつつ食事を終わらせて、部屋に寝かしつけられる。
その夜、魔法は使えなくても、魔力は感知したいということで、色々試してみて感知することはできた。
魔力を一言で表すと、皮膚だ。
ただそこにあり、体を覆いずっと一緒にあるもの。動かそうとしてみたが、なかなか難しい。ただでさえ感知してからは違和感しかないのに、動かすのはまた当分先になりそうだった。
そこから時間が過ぎるのは早かった。
魔力を体内で循環させる方法をようやく見つけた。これは、身体能力の強化もでき、今までより力が溢れているのを感じた。
これを毎分毎秒意識しながらやっていたものが、当たり前にできるようになって、外にも出れるようになってから気づいたが、どうやら魔力の体内循環は普通らしい。なぜかというと、身体能力に大幅な差が出なかったからだ。
もちろん得意不得意はあれど、前世の感覚でいうと、小学六年生くらいの走りはもうできている気でいた。だが、他の子供も差はあれど俺と大幅な差は生まれなかったのだ。
他の子供達にとっては魔力は当たり前で、生まれた時から循環をし続けていると言うことがわかった。
ここで初めて前世の記憶のデメリットを感じた。
また、話せるようになってからはいろいろな話を聞いた。俺の両親はどちらもこの村出身で代々土地を領主から貸し出され、年貢をおらめているらしい。
我らが領主は、ロス=ハニーチェといいここはハニーチェ領なのだとか。
そして毎年、神官様がきて5歳の子供に選定の儀を行うという。そこで初めて魔法を授かり、自身の魔力総量と魔法出力という、2つの能力値を知ることができるらしい。
魔力総量とは、その身体で保有できる魔力の量を表し、魔力出力は1度に体外に放出することができる魔力量を指すことが分かった。
どちらも生まれた時に決まるので、増やすことはできないらしい。
どうやら、魔力総量と出力は高いと神官様が、連れて行き、国で大事に育てられるらしい。
そして5歳の誕生日俺は迎えた。
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