第8話 虹春 ―すべての色が混じり合う、光に満ちた色
座談会は終わりました。最後の発言は、青春を楽しんでいた彼らには不快な思いをさせたかもしれません。だけど、一番しんどかったのは多分僕だと思います。一人残って会議室を掃除し、返却できる状態にするその時間は、虚無感に満ちていました。
会議室の利用時間も終了し、建物を後にしました。夕立は止んでいたようで、入り口の花壇の花はみずみずしく輝いていました。これが、青春なんだろうなって。
僕には何もありませんでした。何もないまま高校を卒業し、大学へと入学していしまいました。真っ白な春に後悔があったのです。せめて少しでも青い春を取り戻したい、その勢いでこの座談会を企画し、自分も春を得たかったのです。
今思えば、無茶苦茶ですね。青い春って何か、最初から分かっていたじゃないですか。青じゃなくてもいいって自分を説得したかったんでしょうね。でも、無駄だっていうのはわかっています。どうしようもないけど、諦めきれなかったんです。
駅まで歩いていると、そのうちに雲が晴れてきました。太陽がちらつき、白く明るい光を差し込み始めます。
結局、自分に青春は向いていなかったってことなんでしょうね。それが運命なら、受け入れて歩くしかありません。それこそが、人生なんだから。
うつむきながら歩いていると、いつの間にか駅に到着していました。しかしそれに気づかず、階段でつまづいて後ろにこけてしまいました。一体いくつなんでしょうかね、僕。
しかしこけて見えた空には、きれいな光景が広がっていました。夕日がかった青空、太陽の白い光、そして空に広がる虹の輪。
青は青春の色。綺麗なのは当然なんですが、目を奪われたのは虹でした。白い太陽の周りを虹が囲んでいます。赤・橙から始まり、紫へのグラデーション。その中には青も含まれています。
確か虹って白い光が七色に分かれて見えるんでしたっけ。そう考えた瞬間、僕の人生がつながりました。
なんだ、最初からあったんじゃないですか。真っ白だった人生、実はすべての色、当然青も含む虹色だったんですよ。無謀にも青を追い求めるからいけなかったんでしょうかね。
青春を追い求める僕の行動も、無駄ではなかったということでしょうか。
ほかの参加者さんたちが感じた様々な色の経験、これも全部白であり、青である。結局はみんな虹色だったんでしょうね。そう考えると青春ってバカな表現な気がしました。青だけではなくすべての色が詰まっているんですよ。
今を生きる、それ自体が青春であり、虹色の春なんでしょうね。
ふとしたきっかけではありますが、なんだか気が晴れてきました。結局答えは身近なところにあったんですね。こけて横になっていたままだった僕は起き上がり、駅の階段を上り始めました。
帰ったら、SNSでみんなに教えてあげよう。この素敵な白春改め、虹春の話を。
春の色相環 冬野 向日葵 @himawari-nozomi
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