第5話 黄春 ―明るさに隠れる、危険な色

 こんちわー。鍵野かぎのきいって言いまーす。ちな二年生、よろー。

 ん-とね、ウチねー、自分で言うのもだけどさ、明るいじゃん? この明るさこそが、ウチの色。光を表すイエローなんよ。

 ウチさー、中学校ではいつも話題の中心にいたんよ。ウチの明るさに人が引き付けられていくって感じ。こういうとなんかイカ漁みたいやねー。でさー、ウチはみんなとお喋りするのはキラいじゃないわけ。むしろ大好きでさ、話しかけたら必ず誰かが返事してくれる、その生活が楽しかったんよ。

 でもねー、高校に入学してからはね、大変だったんよー。新しくクラスメイトになった中の一人、友利さんって言ったっけなー。その人がね、とにかく目立っていて、女子なのにギャグもできて、男子も女子もみーんな釘付け。ウチより明るかったかもしれんねー。

 だけどさー、ちょーっと困ったことがあってねー。ウチがクラスの中心にいる生活じゃなくなった途端、誰にも相手にしてくれなくってさー。話しかけても誰も返事してくれないわけ。ある意味当然っちゃ当然なんだろうけど、中学校生活に慣れていたウチには納得しがたいものがあってさー。

 で、それとは対照的にクラスの中心にいた友利さんはねー、いろんな人とお喋りしていて、彼女からネタ振っていたことも多かったし、ウチから見たらねー、初めて出会ったときの何十倍もキラキラ光って見えたんよ。ゴールド、いやダイヤモンドかよって感じ。

 そんでね、ちょっと腹が立ってきたわけ。んでねー、ちょっとこらしめてやろうって思ったワケ。今から思うとイジメやね。あ、冷えた目で見ないでくれるー? ウチはちゃんと改心したから、最後まで聞いてよねー。

 最初はね、友利さんのいないグルチャで悪口を言い合うだけだったんよ。だけどいつしか行動に出るようになってねー、もう靴隠しとかは日常茶飯事よ。タチが悪いので言ったらクラスに『友利さんがいじめている』っていうデマを流して生活指導室送りにしたことかなー。

 まー、すぐバレて生活指導室に送られたのはウチらだったってオチなんだけどねー。そりゃあこっぴどく叱られたよー。反省文も書かされたし友利さんは転校しちゃった。

 でも、その後のクラスではウチがクラスの中心に立てたワケ。生活は豊かになったよ。でもねー、中学の時ほどの満足感は得られなかったんよ。イジメなんてズルをしてまで手に入れたクラスの中心の座、でもそれはウチの明るさから来たものじゃない、人を消して不当な方法で手に入れた仮初のモノ。

 嫉妬から始まったイジメだったけどねー。めっちゃ後悔してんの。みかんにはメチャ言ってるけど、ウチを反面教師にして、人を傷つけるようなことはするんじゃないよー。

 光を表していたハズの黄色は、本当は警告の意味だったって話。

 ハイ! みかんに言われた通り重苦しい話は引きずらない!

 よし、次の人の話に移ろっかー。 

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