第3話 赤春 ―闘争の先にある、情熱の色
次は俺だな。俺の名前は、
俺は強いて言うなら燃え上がる炎、赤色の春だったといえる。
俺は陸上部に所属していて、砲丸投げの選手として活動している。俺の高校は学問優先で、決して部活に力を入れているとは言えない。部活動の活動も比較的緩い。
でも俺は、高みを目指したかった。ただストイックに記録を伸ばすことが喜びだったのだ。だが環境に恵まれたとはいえず、一人で活動するのも限界を感じていた。しかし二年生の春に、変化は訪れたのだ。
春といえば、進級・進学の時期であることはおなじみだ。俺にも陸上部の後輩ができた。
その時俺は気が付いたんだ。「まだいける、戦える。いや、戦いたい」って。
そこからはトレーニングにより力が入るようになった。基礎体力の特訓は毎日欠かさず行うようになったし、フォームの研究も以前より丁寧になったのだ。その成果で、伸び悩んでいた記録も再びジワジワと伸び始めてきた。それがもう嬉しくて嬉しくて、さらにトレーニングに明け暮れた。
ここで第二の転機が訪れる。想像つくかもしれないが、トレーニングのやり過ぎでケガをしてしまった。それはもう、この世の終わりのような絶望を感じたのを覚えている。やればやるほど伸びる時期だっただけに、悔しさと後悔を引きずりながら勉強に打ち込んだんだ。
そしてケガが治るころにはもう年が明けていた。三年生になれば受験勉強で、嫌でも部活動から引きはがされる。それまで早川にリベンジしたい。その一心だった。
以前よりも体調管理に気を配ったトレーニングを行っているうちに、最後の記録機会がやってきた。ここで記録を出さないと、もう二度とアイツに挑めるチャンスは無い。出会いに感謝しながらも、追い抜いてやる気持ちで砲丸を投げたんだ。
記録は早川の最高記録と全く同じだった。同点というと聞こえは良いかもしれないけど、彼にはもう一年ある。要するに俺の惨敗だ。
思えばひたすらアイツとトレーニングのことを考えた一年だった。今こうやって陸上から現実に戻されると、あれは夢だったのかとさえ思えてくる。それくらい熱中していたのだ。
正直に言って、あの一年に満足しているとは言えない。トレーニングの仕方を怠ってケガをするし、結局早川に勝利することは叶わなかった。それでも俺は、あの過ごし方を後悔をしていないつもりだ。確かにアレは、当時の俺にしかできなかった。いや、そう信じたいんだ。
これで俺の発表を終わる。こんなもんでよかったか?
次の話も楽しみにさせてもらう。
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