第2話 紫春 ―謎を追い求める、知的な色

 皆さん、初めまして。高校二年生の田部たなべしきです。

 一番手は私ですね。私の春は、紫色でした。

 みなさん、紫という色に、どういったイメージをお持ちでしょうか。上品さでしょうか、それとも不思議さでしょうか? 私はこの色にミステリーを見出しました。

 私はいわゆる『本の虫』なんて呼ばれるタイプの人間です。気が付いたら図書館に通っていて、小学生の時には夏休みの読書感想文を五作提出しては失笑され、高校生になってアルバイトを始めてからは気になるシリーズの大人買いをためらわなくなった、読書が生きがいの人です。

 さて、私が読書にハマったきっかけをお話ししましょう。

 きっかけは、親と出かけた図書館にあった百科事典です。当時マナーも何も知らなかった私は全くの怖いもの知らずで、母親によると人が調べものをしているのをのぞき込んでいたそうです。

 そこには、全く未知の世界が広がっていました。まだ四歳だったので当然といえば当然ですが、知らないことだらけです。難解な言葉で記された文章も、一文一文に分解すればなんとか読解することができ、当時の私に多くの充足感をもたらしました。

 調子に乗った私は、父親にねだって毎週末は図書館通いをしていました。そこで百科事典に囲まれ、先頭から順番にすべての項目を読み切りました。

 そして……飽きたんです。これ以上読むものがなくなったから。読み終わった後の虚無感は、幼い私には大きなダメージを与えたのです。

 しかし、転機が訪れました。小学一年生のころ、惰性で通い続けていた図書館で、何の気なしに一冊の本を手に取ります。それは一般書、いわゆる大人向けのミステリー小説でした。今思うとなぜ手に取ったのでしょうね。

 その本をこれまた何の気なしに読んで、衝撃を受けました。

 百科事典に裏打ちされた膨大な知識でも対抗できない殺人事件の謎。解決編まで読み進めると「確かに」となるスッキリ感。それと同時に湧き上がる「次こそは自分で解明するんだ」という謎の対抗心。

 もっと沢山知識をつけようと発起になって様々なジャンルの本に手を出すようになりました。小説だけでなく、ノンフィクション、漫画、雑誌、児童書、ライトノベルにまで。

 そのうち、それぞれの本の面白さに気が付くのはそんなに遠い話でもありませんでした。今では結局「ツインパクト!」という児童書シリーズの大ファンです。子供の時に読まずに高校生になってから児童書にハマるなんて変わっていますね、私。

 そして現在、原点に返り長編ミステリーを読んでいる最中です。「今度こそ、謎を解く」その意気込みで静かに燃え上がっています。

 ということで私の春は、謎と知を追い求める紫色なのでした。

 ここまでご清聴いただき、ありがとうございました。

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