動物園にて
チケットを買って動物園に入ると、早速様々な動物達の姿を見る事が出来た。
「大きい〜」、「可愛い〜」と、動物を見て感想を口にしながら奥に進んで行くと、虎のいる檻の前に来た。
「……近くで見ると、やっぱり迫力があるね」
「佳奈、虎が怖いか?」
恐る恐る虎のいる檻を覗き込む佳奈に、俺の悪戯心が刺激されて、からかうように佳奈に声を掛けた。
佳奈は、慌てて首を横に振ると、「檻の中にいるし、全然怖くなんかないよ」と、俺の言葉を強い口調で否定した。
そんな強がっているようにしか見えない佳奈がなんだか可愛く見えた。
そこで、俺がさらに佳奈にちょっかいをかけようとした時だった。
それまで、大人しく檻の中を歩き回っていた虎が、突然、僕と佳奈の方を向いて吠えたのだ。
「きゃあ!」
佳奈は、大きな声で驚くと、俺の腕に抱き着き、身体を震わせた。
「……突然吠えてびっくりしたな」
「俊樹君が私の事をからかうからだよ……」
「ごめん、ごめん、悪かったって」
俺は、佳奈を聞いて俺がからかったのは関係無いじゃないか、と思いつつも、佳奈の弱々しい様子を見ると、なんだか申し訳ない気持ちになってきて、俺は腕を伸ばして佳奈の頭を優しく撫でた。
佳奈は、そんな俺の行動に驚きつつも嬉しそうな表情を浮かべると、「……嬉しいから、許してあげる」と、顔を赤く染めながら小さく呟いた。
さらに、俺達は奥に進むと、佳奈が見たいとリクエストをしていたパンダがいるエリアに入った。
見てみると、パンダは座って、のんびりと日向ぼっこをしているように見えた。
「可愛い〜」
佳奈と桜木は嬉しそうに声を上げて、目を輝かせながら、そんなパンダの様子を観察していた。
俺はそんな佳奈の嬉しそうな顔を見て、なんとなく今の佳奈の表情を写真に残しておきたい、と思い、スマートフォンを構えて、佳奈の横顔の写真を撮った。
「あ、俊樹君、今、勝手に写真を撮ったでしょ!?」
「というか、今の角度的に私も写っていたよね? 惨めに思えてしまうから、二人のイチャイチャに巻き込まないでほしいな!?」
スマートフォンを見ながら、自分で撮った佳奈の横顔の写真に満足していると、シャッター音で俺が写真を撮った事に気が付いた佳奈と桜木がそれぞれ不満の声を上げた。
俺は二人に、「ごめん、ごめん」と、謝りながら、「でも、良い写真が撮れたと思うぞ?」と、言って、自分のスマートフォンを佳奈と桜木に見せた。
「おおっ! 確かに、この写真の佳奈、すごい良い表情してる! ……私は見切れているけどね」
「そんな事無いよ。こんな油断している顔、すごく恥ずかしい……」
桜木の言葉に佳奈は恥ずかしそうな表情を浮かべながら首を横に振った。
佳奈はそう言うが、写真の中の佳奈は桜木の言う通りとても良い表情で写っていて、俺は仮に佳奈に、「消して」と、言って頼み込まれても、絶対に消さないでおこう、と俺は思った。
そんな事を俺が考えていると、佳奈は鞄から自分のスマートフォンを取り出し、それを見ながら髪型を整えると、勢い良く俺の方を向いた。
「ほら、俊樹君、今の私なら幾らでも撮って良いよ!」
張り切って言う佳奈に、俺は笑みを浮かべると、佳奈の写真を撮る為にスマートフォンを構えたのだった。
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