写真撮影
全員が集合をして、学年主任の何かあった際の連絡先や東京駅に集合する時間の確認が終わると、生徒達はそれぞれ班になって移動をし始めた。
「よし、じゃあ、私達も行こうか」
桜木の言葉に俺達は頷いて応えると、動物園に向かう電車に乗った。
「うわー、平日でも、人が沢山いるね」
動物園の入り口の前に到着すると、桜木が辺りを見回しながら声を上げた。
桜木の指摘通り、辺りには平日にも関わらず、観光客らしい姿を多く見掛けた。
「ねえ、皆で写真を撮ろう?」
流石、パンダで有名な動物園だな、と思っていると、佳奈がそう言って俺の手を引っ張った。
「佳奈、急に手を引っ張るなって」
「ラブラブだなー」
「ラブラブだねー」
佳奈に突然手を引かれて慌てている俺の後を、裕也と桜木がニヤニヤしながら付いてきた。
「よし、じゃあ、ここら辺で写真を撮るか」
動物園の看板が真正面に見える位置まで行くと、裕也がスマートフォンを取り出しながら、そう言った。
「そうしたら、佳奈と長谷川は真ん中に来たら?」
桜木はそう言うと、裕也の反対側に移動をした。
裕也、俺、佳奈、桜木の順番に並ぶと、佳奈がピッタリと俺にくっ付いて来た。
俺は先程の電車の中でも佳奈にくっ付かれた時の事を思い出した。
流石に、また同じ様に動揺をする訳にはいかない、と思うと、チラリと隣のいる佳奈を見た。
佳奈は顔をほんのり赤く染めながら、裕也が掲げているスマートフォンをジッと見ていて、俺が見ている事に気が付くと、こちらを見て、嬉しそうに微笑んだ。
そんな佳奈の笑顔を見て、俺はなんだか愛おしい気持ちになると、自然と佳奈の肩を抱いて、引き寄せていた。
俺の行動に佳奈は驚いた表情をして、こちらを見てきた。
顔を赤く染めた佳奈と目が合うと、今度は俺が微笑んでみせた。
佳奈は何か言おうとして、口を開きかけたが、その時に裕也が、「撮るぞ〜」と、声を上げた。
俺と佳奈は、その声に反応して慌てて、裕也のスマートフォンを見ると、そのタイミングで、裕也が、「ハイチーズ!」と、写真を撮った。
写真を撮り終わったので、腕を外し、佳奈の方を見ると、俺から見てもすぐ分かるほど動揺していて、俺と目が合うと、すぐに視線を外し、「ふ、文香ー!」と、言って、桜木の方に駆け寄って行った。
俺は佳奈のその反応を見て、とても可愛い、と感じて、思わず頬が緩んだ。
「急に大胆になったな」
桜木が、「よしよし、良かったね」と、言いながら佳奈の頭を撫でているのを見ていると、横から裕也がニヤニヤとしながら、声を掛けて来た。
「……まぁ、正直自分でも驚いてる」
電車の中では戸惑いとか恥ずかしいという気持ちがほとんどだったが、写真を撮る時は佳奈に自分から触れたいという気持ちが少なからずあったような気がする。
考え込んでしまった俺の事を裕也はジッと見つめると、「まぁ、一歩前進と言ったところだろうな」と、呟いた。
裕也の言葉を聞いて、確かに、佳奈の事を妹みたいだと思っていた時には抱く事が無かった感情が自分の中で芽生えた気がして、少しは前進する事が出来たのかな、と俺は思える事が出来たのだった。
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