自分の気持ち
次の日の朝、俺は寝不足の目を擦りながら、佳奈が来るのをマンションの入り口前で待っていた。
佳奈との勉強が終わった後も、佳奈の言葉を思い出してしまい、それについて考えていたせいでほとんど眠る事が出来なかった。
佳奈は、「……私、俊樹君に妹じゃなくて、女の子として見られたい」と、昨夜、俺に確かにそう言った。
つまり、佳奈は俺の事を異性として見ていたという事になる。
そう考えると、この数日間の佳奈の行動の理由を俺はようやく理解する事が出来ていた。
それと同時に、佳奈にここまで言われないと気付く事が出来なかった自分を恥ずかしく思った。
俺の周りに佳奈以上に親しくしている女子はいないし、その佳奈も昨日まで俺は妹として、家族同然という認識を持っていた。
それもあって、まさか俺に好意を寄せている女子などいないだろう、という思いから、今まで異性からの好意にかなり鈍感になっていたのだろう。
そこまで、考えて俺は、佳奈に今後どう接していけば良いのだろう、と思った。
クラスの友達がどんなに可愛くても妹に恋をする事は無いと言っていたのと同じで、俺も佳奈の事を異性として意識していなかった。
しかし、ここ数日で、佳奈の女の子の部分を感じたり、昨日の佳奈の言葉や表情を思い出すと、心臓が強く締め付けられて、切ない気持ちになった。
そんな気持ちになる事は、勿論、初めてで、俺はこの気持ちと佳奈にどう接していけば良いか、戸惑い、答えを出さないでいた。
「俊樹君、お待たせ」
俺がそんな事を考えると、佳奈は俺の事を見つけると、いつもの笑顔を浮かべながら声を掛けて来た。
「お、おう。佳奈、おはよう」
佳奈の昨日の言葉もあって、佳奈になんて言われるのだろう、と身構えていた俺は、いつもと変わらない調子の佳奈に戸惑いつつも言葉を返した。
「……俊樹君、私の事を意識してる?」
そんな俺の様子を見て、佳奈は微笑むと、突然そんな事を言った。
佳奈の突然の言葉に、「それは、まぁ……」と、焦りつつ返した俺は、これは佳奈と昨日の出来事について話すきっかけになるのではないか、と思った。
「……なぁ、佳奈、その事なんだけど……」
俺が言うと、佳奈は、「うん」と、言って俺の事を真っ直ぐ見つめた。
「その、昨日の言葉はとても驚いた。正直、今まで佳奈の事は妹だと思っていたから。でも、佳奈の言葉を聞いてから、佳奈の事ばかり考えて、俺は今、佳奈の事をどう思っているか、分からなくなって…… 俺は佳奈の昨日の言葉にどう答えれば良いのか、まだ分からないんだ」
我ながら、話がまとまっていないな、と思ったが、佳奈はそんな俺の話を、相槌を打ちながら、最後まで俺の目を見ながら聞いてくれた。
「……俊樹君の今の気持ちを言葉にしてくれてありがとう。とても嬉しいよ。今、答えを焦って出そうとしなくて良いよ?」
そこまで言うと、佳奈は俺の腕に抱き付いた。
俺は、「か、佳奈!」と、佳奈の突然の行動に驚きの声を上げた。
「私はもう、俊樹君に遠慮せず、積極的にいく事してるから、俊樹君の気持ちの答えが出るまで、良いでしょ?」
佳奈は顔を赤くしながらそう言った。
そんな佳奈の様子を見て、俺は、佳奈が恥ずかしいと思いながらも、行動を起こしてくれている、と思うと、とても嬉しい気持ちになった。
「……そうだな。俺、なるべく早く、自分の気持ちを整理して、佳奈に伝えるよ」
俺の言葉に佳奈は、「うん!」と、嬉しそうに言うと、「さあ、学校に遅刻しちゃうから、そろそろ行こう!」と、上機嫌に言って、それまで、俺に抱き付いていた腕を解くと、俺の手を握り、歩き始めた。
俺はそんな佳奈の様子に微笑ましい気持ちになると、しっかりと佳奈とこの気持ちに向き合って答えをだそう、と思うのだった。
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