第4話『刑務所メシ』
「お、オッサンじゃん。元気してたか?」
「あぁニサ君か。どうしたんだこんなところで」
「いやね?この時期は犯罪者共が増えてきてさ……パトロール中って訳」
ぶらぶらと人工樹木道を歩いていると、警察マークを画面に出したニサ君を発見した。少ししゃべっていると、何やら店の中が騒がしい事を見つけニサ君は走り出した。
「な、なんだ?」
「オッサンはここで待機!マザー、鎮圧許可をお願いします!」
『許可』
『
どうやら犯罪者達は金……この世界では金と言うのは電子決済ですべて行われているのだが、その受け渡しや預かりは銀行のようなもので行われている。
そこを襲ったのだろう。片手にはバズーカ砲のような武器まで持っていた。更に店の中には人質が沢山いた。
「オラオラ入って来るんじゃねぇぞ警察共!もし入ってきちゃったらこいつらの頭を吹っ飛ばしちまうかもなぁ!?」
「クソッ迂闊に手が出せない……」
「どけ3281番、俺が行く」
「しかし……」
「俺が行く」
ニサ君は銃を手にしたまま中に入っていった。もはや見守る事しか私にはできなかった。店内ではニサ君が人質を守りながら犯罪者達と戦って……。
「鎮圧完了。マザー、『1921番』『2359番』『2132番』の三体を刑務所へ連れていきます」
右腕を吹っ飛ばされながらも全員を鎮圧した。
「だ、大丈夫なのかい……?」
「ん?あぁ大丈夫だよオッサン!俺の右腕も給料で直せるし!……しかしこんな街中で銀行強盗とは、アホだなぁお前ら」
『刑務所デス。預カラセテ頂キマス』
「おう。この三体だ。よろしくな」
犯罪者達はどこからともなくやってきたドローンのようなものに連れていかれた。その後ニサ君の腕は問題なく直り、なぜか彼と共に刑務所に向かうことになった。
「この世界の刑務所って……どんなところなんだい?」
「まーそうだな。基本的には犯罪者共の更生、リサイクルなんかがメインで……。もう一回やり直したいって奴には6等級っていう特殊な人権が与えられんだな」
「は、はぁ……」
「どれ着いたぜ。そうだここで飯食っていくか?」
「そういえば騒動で気が紛れていたがお腹がすいたなぁ」
「夜飯ってことだな!おっすオバチャンここの飯二つな」
『アイヨ。オラ選ビナ』
「選ばせてくれるのかい……?」
「まーな。元々は残飯で良いだろって感じだったんだが、それを見たあのニホンの奴がここに切り込んだのさ」
『こんな食で表に出たいと思う訳がない!人の改善は飯なんだ!まず旨い飯を食わせる!それが更生の一歩なんだよ!』
「……ってな。んで今となっちゃ、下手に5等級になるくらいなら~って、軽犯罪を犯してここにぶち込まれるバカもいるくらいだ」
どうやらニニ君はかなりこの世界を変えようとしているらしい。しかし私も思うところはある。会社には社食があるのだが、この食事が大変おいしいのだ。
上司がアレだったり、仕事が少し辛かったりする嫌な気分も、うまい物を食べれば解消される。……味気ない食事と言うのはとても辛いものだ。
「じゃ俺は『黒定食』で。オッサンは?」
「え?あぁ……」
メニュー表を見れば、黒と白と言う定食があるようだ。気になるので白定食を頼み待つこと十分ほど。『デキタヨ』と言うメカオバチャンの声と共に定食をもらいに行く。
「これが白定食……」
それは……カレーだった。白米に野菜しか入っていない、簡素だが旨そうなカレーだ。黒定食の方はと言うと、サンドイッチのような黒パンサンド。とはいえ見た目は……少々悪い。
「しかし匂いはカレーなんだよなぁ……」
とりあえずカレー部分だけ味見。安い具のないカレーの味がするが、間違いなくこれはカレーである。米と共にかっ込めば……もう完全にカレーなのだ。
「この飯に感動して、食品部門に行こうって更生した奴もいるほどだぜ?俺も好きだけどなコレ」
「……そうだね」
確かに味は多少悪いかもしれない。舌が肥えている人には物足りないかもしれない。けれども、街をぶらぶらして分かったがこの世界には食事が普及し始めている。
ならばそれを目的にと、更生する者がいるのもおかしくはない。
「ところでオッサン今日は帰るのか?」
「そうだね……。どこか泊まれればいいんだけど」
「んじゃ格安ホテルに泊まればいいさ。案内してやるからよ!」
ニサ君に連れられて、私は格安ホテルなるところに泊まることになった。ここ第八地区以外にも合計十二の地区があり、それぞれ違うマザーの下で過ごしているのだという。他地区から来た者の為らしい。
「んじゃオッサン俺は仕事があるからこれで!またな!」
そう言って私はホテルに入った。部屋はベッドが一つとトイレとシャワー室だけの簡素な部屋だったが、それでも寝るには問題ないのでシャワーを浴び眠りについたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます