第22話

106話 破壊

アルテミシアは涙を流していた。アーリスもといアマリリスの過去を聞いて。

世界中の記憶は書き換えられていた。ローズ家は元々火を扱える種族だと。クラスタ家の情報を記された物や写真などは全て世界中の者たちが気づかないうちに自らで処分していた。だが三つだけネリネの色技が及ばないところがあった。それは、一つ目向日葵姫の宝物庫。向日葵は宝物庫に結界を貼っており結果クラスタ夫婦の写真だけは残る形となった。二つ目は白の森ホワイト フォレストこちらも同様、結界を張っていたためである。三つ目はネイチャー自身であった。ネイチャーはウラノスの計画を知っており色技食色植物カラー イーターで回避してたのであった。

・トリカ「ウラノス様が……アーリスさんを…」

トリカは受け入れられないでいた。大切な二人の確執を。

・フォリア「トリカと言ったか、追い打ちをかけるようですまないが、先日そのウラノスが戦死した。」

・トリカ「戦死?!!!」

・フォリア「相手は乱先のリーダーだそうだ。」

・トリカ「……」

・トリカ「申し訳ありません。少し席を外させてもらいます。」

トリカはそう言って出ていった。

・アルテミシア「アーリスは今どこにいるなの?」

・フォリア「多分あそこかな……森を抜けた先にある白鐘の岬。何かあるといつもそこに行くんだ、アーリスは。」

アルテミシアは立ち上がる。

・フォリア「何を話す?」

・アルテミシア「わからないなの。」

アルテミシアはそれだけ言って出ていった。

白鐘の岬。

ザッパーン。

白波が立っている。アマリリスは岬の先で海を眺めていた。

・アマリリス「やあ、アルテ。」

・アルテミシア「……」

・アマリリス「全部聞いたんでしょ?」

・アルテミシア「……」

・アルテミシア「どうするの?なの。」

・アマリリス「どうするの。か……今一番的確な問いだな。」

・アマリリス「なら俺も簡潔に答えるよ。」

・アマリリス「……この世界を壊す。」

・アルテミシア「世界を……壊す?」

・アマリリス「文字通りだよ。それ以下でも以上でもない。全ての生きている者を殺し。この星を宇宙から消しさるんだ。」

・アルテミシア「なぜ?なの。」

・アマリリス「うーん。八つ当たりかな。この世界って理不尽で我儘だよね。平和?発展?そんなものの為に俺の家族は殺され忘れ去られたんだ。なら俺も我儘であろう、そう思ったんだ。」

・アルテミシア「その先には何が残るなの?」

・アマリリス「何も残らないよ。終わらせるんだ。全てを。」

・アマリリス「実はね俺、記憶取り戻していたんだ。それも毎日。」

・アルテミシア「???」

・アマリリス「記憶がなかったのは自らで記憶を消していたからなんだ。そしてある行動をすると思い出す。」

・アルテミシア「それって……」

・アマリリス「そう。お祈り。」

アルテミシアは思い出した。いつだったかアーリスがお祈りの後に不敵な笑みを浮かべていた事を。

・アルテミシア「でもなんでそんなことを?なの。」

・アマリリス「これのためだよ。」

アマリリスの手のひらの上に火の塊が燃え上がる。

そしてアマリリスの色紋は赤黒く変色していった。


107話 覚悟と覚悟

・アルテミシア「それは……」

・アマリリス「火の力。リコリスの炎だ。これは母様が俺の中に遺してくれたもの。これを呼び起こすためには必要だった。あの時の幸せと思い出が。そして憎しみと怒りが。」

・アマリリス「俺の中には燻ってる火種があった。それをもう一度燃やすためにその憎しみと怒りを焚べ続けた。毎日毎日記憶を消しては思い出す。その度に精神は擦り切れ初めのうちは現実に耐えきれずに倒れることも数え切れない程だった。」

・アマリリス「それから計画を実行するには、周りに悟られずに肉体を成長させる必要があった。火の力をコントロールする為にだ。アルテ、君との旅は俺の成長を加速させたよ。」

・アルテミシア「他に方法はないなの?」

・アマリリス「ずっと決めていたことだから。」

・アルテミシア「アーリス。」

・アマリリス「アマリリスだ。」

・アルテミシア「アーリスなの。ボクが知っているのはアーリスなの。」

・アマリリス「好きに呼べばいい。」

・アルテミシア「ボクはアーリスを止めるなの。」

・アマリリス「どうやって。」

・アルテミシア「…………」

・アルテミシア「アーリスを殺すなの。」

アルテミシアは覚悟を決めた顔をしていた。

・アマリリス「そっか。」

・アマリリス「アルテミシア……ありがとう。」

バッ。

その言葉だけを残してアマリリスは岬から飛び降りた。

アマリリスはアルテミシアの前から姿を消した。

白の森ホワイト フォレスト

アルテミシアはトリカと蜜柑とフォリアの所に戻った。

そして今あった出来事を三人に話した。

トリカと蜜柑の表情は戸惑いと驚きと葛藤が入り交じっていた。

・蜜柑「でもどうやって今のあやつに対抗するのじゃ?アーリスは火の力を開花させたのじゃろう?」

・アルテミシア「賢者の霊灰エリクサー。これを創るなの。そのためにまずはボクの故郷に帰るなの。」

・アルテミシア「フォリア。舟を貸してほしいなの。」

・フォリア「いいだろう。だがこれだけは忘れないで。うちは、いや我々白族はアマリリスに加勢する。もしかしたら戦うことになるかもしれん。」

・アルテミシア「うん。なんかそんな気はしてたなの。」

アルテミシアは笑顔で返した。

・フォリア「分かってるならそれでいい。ついてこい。」

・アルテミシア「ありがとうなの。」

アルテミシアは動き出した。

・トリカ「アルテさん。」

アルテミシアはトリカを見る。

・トリカ「私も連れて行ってください。」

トリカも覚悟を決めていた。

アルテミシアは無言で首を縦に振った。


108話 灰煙島

アルテミシアは舟で灰煙島を目指していた。

・トリカ「アーリスさんはどこに行ったんでしょうね。」

・アルテミシア「わからないなの。世界を壊す。そんなことできるのかなの。」

・蜜柑「ねぇたま、大丈夫かえ。」

・アルテミシア「大丈夫って言ったら嘘になるなの。でも……」

アルテミシアはそこで口を閉じてしまった。

数時間後。

灰煙島が見えてきた。

・アルテミシア「見えてきたなの。あれがボクの故郷なの。」

遠くから見える島には一本の煙が上がっていた。

・トリカ「あれは、まさか煙ですか?」

・アルテミシア「そうなの。ボクの一族、灰族は自然発生した火を研究しているなの。もっと詳しく言うと、火には近づくことが出来ないから燃えた後にできる灰を調べているなの。」

・蜜柑「怖いもの知らずじゃの。」

・アルテミシア「孤島だからできるなの。一般的には暗黙の了解で火の研究はタブー視されてるなの。……ほら着いたなの。」

アルテミシア達は島に降りた。

そこから少し歩いて森を抜けた所に集落があった。

だがアルテミシア達はその集落を見て驚愕した。

集落はあちらこちらの建物が壊されていたのだった。

・アルテミシア「これは一体なのどういうことなの!!」

アルテミシアは倒れている人物を見つける。

・アルテミシア「おばあちゃん!!」

倒れていた者はアルテミシアの祖母ハーブ マグワートだった。

・ハーブ「アルテ……ミシア?」

・アルテミシア「どうしたなの?!!おばあちゃん!!」

アルテミシアは色技で回復しながら聞いた。

・ハーブ「三年前と同じなね。また乱咲を名乗る者が襲って来たなね。」

・アルテミシア「乱咲……」

ザッ。

後ろから足音が聞こえる。

アルテミシアが振り返ると。そこには、

・マリー「あら、やっと帰って来たわね。待ちくたびれちゃったわ。アルテミシアちゃん。」

・アルテミシア「マリー!!!!」

乱咲 第三輪 マリー ゴールドだった。


109話 快感

・アルテミシア「どうしてなの!!どうしてここを襲うなの?!!!」

・マリー「そんなの決まってるじゃない。これよ、こーれ!」

マリーは懐から小瓶をだした。

・アルテミシア「!!!」

・アルテミシア「それは賢者の霊灰エリクサーなの!!」

・マリー「そう賢者の霊灰エリクサー。これをずっと研究してるんだけど、どうしても100%の効果を発揮出来ないんだよねー。だからその方法を調べる為にまた来たってわけ。」

・マリー「灯台もと暗しだったわ。あんた達確か魔術とかいう変わったことしてたわよね。」

・アルテミシア「……」

・マリー「その顔、やっぱり当たりみたいね!!」

・マリー「ここの人達、魔術について全然教えてくれないの。だからちょっとだけ意地悪しちゃった。」

すると蜜柑が横から入ってきて

・蜜柑「ねぇたまあれでありんすね?捜し物。」

・マリー「なによ、あんたは。」

・蜜柑「わっちはねぇたまを泣かせるやつがこの世で一番許せないのじゃ。」

蜜柑は怒っていた。

・マリー「あんたに何が出来んのよ。」

・蜜柑「トリカ集落のみんなを頼んだのじゃ。」

・トリカ「分かりました。」

そう言うとトリカは集落の人達の救護にむかった。

・蜜柑「お主簡単に死ねると思わぬことじゃ。」

・マリー「死?うふ。私から一番程遠い概念ね。」

マリーは構えた。

・蜜柑「(素手?)」

蜜柑も両手に扇子を出して構える。

・アルテミシア「気をつけてなの、蜜柑。」

・蜜柑「安心するのじゃ。何度も言っておろう、わっちは絶対死なぬのじゃ。」

・蜜柑「鬼神の舞 神楽きしんのまい かぐら

蜜柑は舞いながらマリーに攻撃した。

マリーはその攻撃を素手で受ける。

マリーは血塗れになった。

・マリー「うふふふふふ。これよ、これ。この死と隣り合わせになる感覚。この感覚がたまんないの。」

マリーは不気味に笑っていた。

・蜜柑「なるほど、変わっておるとは思っておったが変態じゃったか。」

・マリー「光合成フォトシンセシス

マリーは太陽の光を吸収して傷の治癒をおこなった。マリーの傷は綺麗に無くなっていた。

・アルテミシア「あの色技は……まさか、太陽神ソレイユが使っていたものなの。」

アルテミシアは驚いていた。

・マリー「でもこっからは私のオリジナル。光の白衣ラボ コート

マリーは白衣を具現化させた。

・マリー「あんたの攻撃は全て無駄になるわ。ダメージの瞬間にそこから瞬時に回復していく。これが私が研究に研究を重ねた結果編み出した色技よ。」

バサッ!!ザシュッ!!

蜜柑は扇子で切りつける。

・蜜柑「でも治るとはいえダメージは通るし痛覚も健在なのであろう?」

マリーの白衣は自らの血で汚れた。

・マリー「うふふふふふ。そうなの!!!!そこがいいところなのよ!!!痛いということ、苦しいということ、すなわちそれは死に近づいているということ!!!死んでしまったら意味無いわ。死とギリギリここがポイントなの。痛みはどんどん気持ちよくなってゆくわ。この白衣が自分の血で染まった時私は快感に溺れるの!!!!!」

マリーは興奮しながら言った。

・蜜柑「変態科学者マッドサイエンティストめ。」

・マリー「ほら。あなたも気持ちよくしてあげる。」

・マリー「骨高密度ハイ カルシウム

キンッ!!

マリーは蜜柑に殴りかかり、蜜柑はマリーの拳に合わせるように扇子で攻撃をした。だが蜜柑は勢いに耐えきれずに吹き飛ばされた。

マリーの拳は血が滴り骨がむき出しになっていた。

その拳も直ぐに治癒されてゆく。

・蜜柑「くっ!(金属?)」

骨高密度ハイ カルシウム】マリーの色技。骨の骨密度を極端に高くすることにより、マリーの体術はまるで鈍器で殴っているかの如く威力が増す。

・アルテミシア「蜜柑!!」

アルテミシアは心配そうに蜜柑を見ていた。

蜜柑は傷を抑えながらたちあがる。

・蜜柑「この音は……」

・アルテミシア「癒しのキュアヴァイオリン幻想曲ファンタジア

アルテミシアは蜜柑を回復させた。

・蜜柑「快感か……お主はいいであるな。自己完結出来て。わっちはねぇたまからしか貰えぬのじゃ!!ねぇたまを感じた時これがわっちにとって一番の快感なのじゃ。ねぇたまありがとうでありんす♡」

蜜柑は恍惚な表情をしていた。


110話 回復

どれくらい時間が経ったのであろう。蜜柑とマリーの激しい攻防が繰り広げられる。

・蜜柑「はぁはぁはぁ。」

蜜柑の疲れはピークに達していた。

・マリー「あらあら?もう終わり?傷は治せても体力は治せないものね。」

・蜜柑「(あやつの言う通りじゃ。このままじゃジリ貧。しかもあやつまだ本気を出しておらぬな。ならば、)」

蜜柑はマリーに突撃する。

・マリー「無策で突っ込んで来るなんて感心しないわね。」

マリーは蜜柑のボディーに拳を撃ち込んだ。

蜜柑はアルテミシアの所まで吹き飛ばされた。

・アルテミシア「蜜柑!!!」

アルテミシアは心配そうに駆け寄る。

・蜜柑「ねぇたま……これ。」

蜜柑はアルテミシアに何かを差し出した。

・マリー「あー!!!!」

それは賢者の霊灰エリクサーであった。

・アルテミシア「これはなの。」

・蜜柑「ねぇたま。申し訳ないのじゃ。これを取り返すので精一杯だったのじゃ。」

・アルテミシア「蜜柑……」

・アルテミシア「ずっとそれだけを考えてたなの?……ボクのために……」

アルテミシアは賢者の霊灰エリクサーを受け取った。

・アルテミシア「後はボクに任せるなの。」

アルテミシアは立ち上がった。

・マリー「でもそれがなんだって言うの?!!凄いって言ったてただの薬でしょ!!!」

・アルテミシア「これは確かに薬として扱えば絶大な効果を得られるなの。でも本当は治療薬でも不老不死になる薬でもないなの……」

そう言いながらアルテミシアはビンの蓋を開けて中に入っている灰を空中にぶちまけた。

・マリー「!!!!!」

・アルテミシア「魔術 血灰覚醒けっかいかくせい

するとアルテミシアの体はどんどん成長していき髪の毛も伸びた。小柄だったアルテミシアは大人の様な姿になる。

・蜜柑「ねぇたま……」

蜜柑はアルテミシアのその姿に驚きを隠せないでいた。

・マリー「まさか……あなたは……」

・マリー「逆薬の魔女?」

・蜜柑「(逆薬の魔女?)」

・マリー「そうだわ!絶対にそうだわ!!!!科学者であなたを知らない者はいないわ!!!」

・マリー「嗚呼!なんて美しい姿。実は私ずっとずっとあなたのファンなの!!!」

・アルテミシア「そうなの。ありがとうなの。でもだからってボクはお前のことを許さないなの。」

・マリー「ええ、結構よ!科学者は感情では動かないわ。あなたのことは好きだけれどただそれだけよ。安心して好きだから殺さないなんてつまらないことは言わないわ。科学者にとって一番大事なのは研究成果だけ。そして私の求めてるものは不老不死。あなたを殺してあなたを隅々まで解剖してあげる。そしたらきっと正解にたどり着けるはず。嗚呼、考えただけでもゾクゾクしゃうわ!!」

マリーはアルテミシアに飛びかかってきた。

アルテミシアはマリーの手首を掴んで受け流すようにいなす。

マリーはバランスを崩して倒れるが直ぐに立ち上がる。

・マリー「??」

マリーは自分の手首を見た。

ドロッ…

皮膚が溶けていたのである。

・アルテミシア「過剰摂取オーバードーズ

・マリー「いったい何をしたの?」

・アルテミシア「何を?お前を回復させてあげただけなの。」

・マリー「なるほど。それが逆薬の魔女の所以ってわけね。」

過剰摂取オーバードーズ】アルテミシアの魔術。対象に触れることによりその箇所を異常に回復させる。その箇所は回復に耐えきれずに溶けだす。

・アルテミシア「回復も度を超えると毒になるなの。」

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