第12話

56話 母親

・アルテミシア「まずはみんな集合するなの。ボクはアーリスとトリカを探すなの。二人とも無事かも心配なの。」

・凌霄「分かった。それなら一号邸に集合してくれ。あそこは俺達が敵を制圧しているから安全だ。俺は蜜柑お嬢を休ませるのと五右衛門を取り調べる。グラス手伝ってくれ。」

・グラジオラス「分かりました。」

・アルテミシア「分かったなの。ボクはまずは三号邸行ってくるなの。」

アルテミシアは走り出した。

だがアルテミシアはすぐに立ち止まった。

・アルテミシア「!!!」

そこにはたくさんの敵と味方が倒れていたのであった。辺り一面は血の海と化していた。

そしてアルテミシアは一人だけ立っている者を見つけた。

・アルテミシア「アーリス!!」

正体はアーリスだった。アーリスは下を向いて放心状態みたいだった。

アルテミシアはアーリスはの元に駆け寄った。

・アーリス「アルテ。無事でよかった。」

アーリスは振り向きながら言った。

・アルテミシア「!!」

アルテミシアはアーリスの足元に倒れている二人の姿を見て言った。

・アルテミシア「そいつらは、乱咲の…なの。」

・アーリス「そう。オレが殺したんだ。」

・アルテミシア「!!!…………」

アーリスは悲しそうな顔をしていた。

アーリスは、はっとした様子を見せて言った。

・アーリス「みんなは?!!」

・アルテミシア「それが…大変なの!もう一人乱咲がやってきて、櫻子を攫っていってしまったの。」

・アーリス「櫻子を!!どうして?!!」

・アルテミシア「それは……ごめんなの。まずはここに倒れてる人達の治療を急がないとなの!!」

そこに凌霄がやってきた。

・凌霄「アルテ嬢ちゃんここは俺らに任せてくれ。すぐに救護班を呼ぶ。」

・アルテミシア「ありがとうなの。アーリス、トリカが心配なの。」

・アーリス「そうだね。凌霄さんここはよろしくお願いします。」

・凌霄「ああ。」

アーリスとアルテミシアは走り出した。

・アルテミシア「アーリス。後でちゃんと何があったのか聞かせてなの。」

・アルテミシア「ありがとう。アルテ。」

三号邸。

アーリスとアルテミシアは三号邸に到着した。

アーリス達はトリカを見つけて駆け寄った。

トリカは倒れているセネシオの横に座っていた。

・アーリス「トリカ!!」

・トリカ「アーリスさん!!」

・トリカ「やりましたよ。アーリスさん。」

・アーリス「みたいだね!!信じてたよ!!トリカ!!」

アーリスとトリカは拳を合わせた。

・アルテミシア「二人とも無事でホントに良かったなの。でも大変な事が起こったなの。……」

アルテミシアはトリカを治療しながらさっき起こったことを説明した。

・アーリス「そんな事が……また乱咲……」

・トリカ「ならば一刻も早く凌霄さんの所へ急ぎましょう。」

一号邸。

アーリス達は戻ってきた。

するとそこには桂が居て凌霄の足元で土下座をしていた。

・桂「すみませんでした!!!全部!!全部俺のせいです!!俺のせいで仲間が死にました!!櫻子お嬢も攫われてしまいました!!」

桂は泣き叫びながら頭を地面につけながら謝った。

それを見たアーリスは急いで凌霄の元に駆け寄った。

・アーリス「凌霄さん!!桂は母親を人質に取られているんだ!!それに乱咲に絶対に断れない色技をかけられていて!!それで!!それで!!」

・凌霄「分かっている。アーリス。部下のためにありがとう。桂の母親の救出には今向かっている。」

・アーリス「それじゃあ?!!」

・凌霄「ああ。桂の母親は生きている。五右衛門に場所も聞いた。大丈夫だ。」

・アーリス「良かった。……良かったね!!桂!!」

・桂「ああ良かった。だが俺は!俺は取り返しのつかない事を!!」

・凌霄「そうだ!!お前にはしっかりと償って貰う!!」

・アーリス「凌霄さん……」

・凌霄「だが!!すまなかった!!一人で辛かったよな!!俺の方こそ何もしてやれなくて……隊長失格だ。どんどん信頼出来なくなるお前の姿を見るのは辛かった。それでも、お前をずっと信んじていた。なぜなら俺らは家族だからだ!!」

凌霄は涙を流しながら桂を抱き寄せた。

・桂「隊長!!!」

その時だった。

・華組部下「ただ今桂さんの母君を救出致しました!!」

桂は振り向くとそこには少しげっそりとした母親がいた!!

・桂「母さん!!!」

桂は母親の元に走った。

・桂「ごめん!!俺が弱いから!!母さんを!仲間を危険な目に合わせた!!」

桂の母親は桂を抱きしめて頭を撫でた。

ガシッ!!

しかしすぐに桂の肩を掴んで言った。

・桂の母親「しっかりしなさい!!まだやる事があるのでしょう!!これから先お前の罪は消えることも無ければ許されることもないの!!だから桂!桂ができることを考えなさい!!母さんも一生一緒にその罪を背負っていくから!!」

・桂「うん。うん。」

桂は泣きながら頷いた。


57話 公開処刑

藤の都 夕顔広場。

壇上にある大きな釜の前に後ろで両手を縛られた五右衛門が座らされていた。

その周りにはたくさんの街人達がいた。

五右衛門の公開処刑である。

それをアーリス、アルテミシア、トリカ、グラジオラスも見ていた。

・役人「これより咎人 梅川 五右衛門の公開処刑を行う。罪状は数々の強盗と先の事件による桜間 櫻子様 誘拐及び死者19名を出した主犯格である事。」

・役人「よって梅川五右衛門を釜茹での刑に処す!」

街人達はその様子を固唾を呑んで見ていた。

・役人「処刑人は華組隊長 凌霄 菊久。」

役人がそう伝えると凌霄は五右衛門の元にやってきた。

・五右衛門「はっはっはっ!!俺の最後はやっぱりお前だよなぁ!!嬉しいぜ!!凌霄!!」

・凌霄「最後に言い残すことはあるか?五右衛門。」

五右衛門は街人達に向かって大声で言った。

・五右衛門「ついに一度たりとも誰も俺の盗みを止めることは出来なかったなぁあ!!!俺様は藤の都一番の大盗賊の頭!!梅川 五右衛門だぁあああ!!これより俺は伝説となる!!せいぜい俺様の武勇伝でも語り継ぐんだなぁあ!!がっはっはっはっ!!!」

・凌霄「最後まで五月蝿いやつだな。まぁお前さんらしいな。……行くぞ。」

五右衛門と凌霄は大きな釜に向かって階段を登った。

釜の直前で五右衛門は凌霄だけに聞こえるように言った。

・五右衛門「お前との追いかけっこは楽しかったぜ。冥土の土産だ。一つだけ教えてやる。嬢ちゃんを攫った縁紅 弁慶もそうだかもう一人 ビオラ ドラキュラには気をつけな。」

・凌霄「ドラキュラだと!そんなのただの作り話じゃ!」

・五右衛門「事実は御伽噺より奇なりって言うだろ。」

・凌霄「……」

・五右衛門「それより早く始めてくれ。」

・凌霄「ああ。本当にこれで最後だ。お前とは色々あったな。俺もどうせすぐそっちに行く。待ってろ。そっちでは仲良くしようぜ。」

・五右衛門「ふん。勝手にしろ……」

五右衛門は何かを感じとった様子だった。

・凌霄「じゃあな。」

そう言うと凌霄は五右衛門を釜の中に蹴り落とした。

ザバンッ!

・五右衛門「ぐぅあああああ!!!丁度いい湯加減だなぁああ!!おい!!がっはっはっはっ!!」

五右衛門は最後まで笑っていたのだった。

・役人「これにて梅川 五右衛門の公開処刑を終わりとする。」

・役人「……続いてこの件に深く関わった者、月樹 桂の量刑を行う。月樹 桂よ壇上に上がりなさい。」

壇上に桂が出てきた。

アーリス達と桂の母親もその様子を見守る。

・役人「罪状は背任罪、華組及び鬼百合家、桜間家に対しての裏切りである。だがしかし当人は無理やり従わされており本人の意思ではなかったことにより情状酌量の余地が与えられた。よってこれから行う桜間 櫻子様の救出に成功した暁にはこれを無罪とす。」

桂の母親は胸を撫で下ろした。

・役人「そしてこれより此度の全責任問題として凌霄 菊久に切腹を言い渡す。」

・アーリス、桂、グラジオラス、アルテミシア、トリカ「!!!!!!!」

・桂「どうして!!!どうして隊長が!!!!俺が悪いんです!!それなら俺が!!俺がやります!!」

桂は凌霄に言い寄った。

そこにグラジオラスも壇上に飛び乗り駆け寄ってきた。

・グラジオラス「櫻子ちゃんを!!櫻子ちゃんを一緒に助け出すんじゃないんですか!!」

・凌霄「すまない二人とも。櫻子お嬢を頼んだ。絶対お前さん達なら助け出すことができる。」

凌霄は覚悟を決めた顔をしていた。

・グラジオラス「……」

桂はその場に崩れ落ちた。

・桂「なんで……なん…で……」

・凌霄「桂。俺はたくさんの仲間を死なせてしまった。櫻子お嬢を守れなかった。それにお前も守ることが出来なかった、桂。これは俺が言い出した事なんだ。これが隊長である俺のけじめだ。」

・桂、グラジオラス「…………」

二人は何も言えないでいた。

・凌霄「二人とも聞いてくれ、これからの事だ。敵は乱咲の縁紅 弁慶とさっき五右衛門に聞いたばかりだがもう一人、ビオラ ドラキュラだ。」

・グラジオラス「ドラキュラ!!」

・凌霄「まぁそういう反応になるわな。俺も驚いた。そして二人がいる場所は青大陸 雪國スノードロップだ。」

・グラジオラス「青大陸……」

・凌霄「五右衛門に聞き出した詳しいことは今病室にいる薊が知っている。」

・凌霄「桂!!しゃきっとしろ!!」

凌霄は桂の両肩を強く叩いた。

・凌霄「後は頼めるな?桂。」

・桂「りょっ、了解です!!!!隊長!!!!絶対に櫻子様を救出して見せます!!!!」

・凌霄「良く言った!!桂!!お前にこれを渡す。大切に使ってくれ。」

凌霄は桂に十手を手渡した。

・桂「ありがとうございます!!!!」

桂は涙を流しながら今までの感謝の気持ちを伝えた。

・凌霄「そしてグラス。お前さんとは出会ったばかりだが櫻子お嬢への気持ちは分かった。」

・グラジオラス「はい。必ず俺が櫻子ちゃんを助けます!!」

・凌霄「グラス、最後の頼みだ。介錯をやってくれないか?」

そうって言って凌霄はグラジオラスの肩に手をおいた。

凌霄の手は震えていた。

・グラジオラス「分かりました。」

グラジオラスは凌霄の覚悟を受け取り強く頷いた。

・凌霄「それでは始めます。」

凌霄は役人に向かって言った。

凌霄はしゃがみこみ短刀を取り出した。その後ろでグラジオラスが刀を構える。

凌霄の顔は男らしく凛々しかった。

・凌霄「後は頼んだ。」

そう言うと凌霄は思いっきり自分の腹に短刀を突き刺した。

グサッ!!

次の瞬間。

シュパッ!!

グラジオラスが凌霄の首を切り落とした。

周りは悲しみに包まれていた。


58話 潜入

鬼百合の屋敷。

アーリス、アルテミシア、トリカ、グラジオラスは屋敷に集まっていた。

ススス…

襖が開き薊が入ってきた。

・アーリス「薊さん。体は大丈夫?」

・薊「ええ。今は自分の体を心配してる余裕なんてありませんからね。アーリスさんこの度はありがとうございました。私が死ななかったのはアーリスさんが敵を倒してくれたおかげです。」

・アーリス「うん。」

アーリスは俯きながら返事をした。

・アルテミシア「(アーリス……)」

アルテミシアはアーリスを心配そうに見ていた。

・薊「それではこれからの事についてお話します。まずは

華組についてです。華組は先の件で隊長と隊員19名の死で半壊しました。よって私が隊長を務め桂が副隊長を務める事になりました。……入りなさい桂。」

桂が部屋に入ってきた。

・薊「今回の櫻子様救出作戦は潜入となります。皆さんもう知っているとは思いますが潜入先は青大陸です。青大陸の雪國スノードロップは何年も鎖国をしており今の現状は何も分かっておりません。ですので少人数での潜入が成功の鍵となるでしょう。そして潜入するメンバーはうちの副隊長桂、アーリスさんアルテミシアさんトリカさんグラジオラスさんで行って貰いたいと思っております。本当に申し訳ありません。華組が半壊した今、他に人員を割くことが出来ず。何よりも皆さんは華組の誰よりも強い事が理由です。他国の方々にこのようなお願いをするのはお恥ずかしい限りです。」

・アーリス「大丈夫だよ、薊さん。どうせオレ達だけでも行ってたしね。」

・薊「ありがとうございます。」

・桂「ありがとう。アーリス。」

・アーリス「うん!!」

・薊「潜入ルートですが……」

薊が話を再開しようとしたその時

・蜜柑「待つのじゃ!!」

蜜柑が部屋に入ってきた。

・薊「蜜柑様!」

・アルテミシア「蜜柑!」

みんなは少し驚いた。

・蜜柑「わっちも行くのじゃ!!」

みんなは再び驚いた。

・薊「ですが蜜柑様、この潜入はとても危険でっ、」

・蜜柑「そんな事分かっておるのじゃ!!わっちは許せんのじゃ!!櫻子を攫った事。華組を半壊させた事。凌霄を自死させた事。もし断ったならばわっちは一人でも行くのじゃ!!それでも良いと言うのか?それにわっちは足手纏いにはならん!!わっちは強い!!だから絶対に行くのじゃ!!!」

・薊「ぅう。」

薊は困った顔をしていた。

・アーリス「いいんじゃない!」

・薊「アーリスさん……」

・アーリス「みんな気持ちは一緒だから、それにこうなったら聞かないって薊さんが一番分かってるんじゃない?」

・アルテミシア「大丈夫なの。ボクもついてるなの。蜜柑には無理させないなの。蜜柑、いいこいいこできる?なの。」

・蜜柑「はぅぅ。はっ!できるのじゃ!できるのじゃ!!」

・薊「分かりました。それでは蜜柑様をよろしくお願いします。」

・蜜柑「ねぇたま、よろしくでありんす‪‪♡‬」

蜜柑はアルテミシアに抱きついた。

・薊「話を戻します。潜入ルートですがまずは国境付近の街まで転移します。」

・トリカ「転移ですか?」

・薊「この国では至る所に転移色技陣があり、許可された者であればその転移色技陣間を一瞬で転移することが可能です。」

・アルテミシア「すごいなの。」

・蜜柑「それもこれも全てこの国を治めている向日葵姫様のおかげなのじゃ!!」

蜜柑は得意げに言った。

・アーリス「向日葵姫の?」

・薊「左様です。向日葵姫様は色技で日の光を操ることができまして、二つの転移陣を日の光で繋ぐことにより転移を可能にしました。」

・アーリス「やっぱり向日葵姫はすごいんだね!!」

・薊「この転移陣を扱うことができるのは飛脚と言う鑑札を持っている者だけです。」

・アーリス「どうするの?」

・薊「ご安心を。私が持っております。」

・アーリス「おぉお!」

アーリスは関心した。

・薊「本題はここからです。国境付近までは直ぐに行くことが出来ますが国境は簡単に超えることは出来ません。理由は青国が築いた冷徹の壁ブルー ウォールと言う数十kmに渡る巨大な壁が行く手を阻んでいるからです。」

・アーリス「冷徹の壁ブルー ウォール……」

・薊「青国は軍事国家です。自国の機密情報を守るためにこの壁を築いたと言われています。この壁を真正面から突破するのは不可能でしょう。ですので迂回する形になりますがこの国と隣接する雪山を越えて行く事になります。」

・薊「この雪山もかなり険しい道のりになります。」

・アーリス「大丈夫!!オレらは世界樹の橋ユグドラシルも歩いて乗り越えてきたからね!!」

・薊「世界樹の橋ユグドラシルを歩いて!!!それは驚きです。本当に頼もしい限りです。」

・アーリス「へへへ。」

アーリスは少し照れた。

・薊「潜入ルートと潜入方法について私から伝えられることは以上になります。如何せん情報が少ない国でして、申し訳ありません。」

・アーリス「オレらに任せて!!ぶっつけ本番は得意だから!!ねぇ!トリカ!!」

・トリカ「フフ。愚問ですね。」

・薊「潜入は明日の朝になります。それまでにこちらで雪山に入る為の装備を準備しておきます。」

作戦会議は終了した。

アーリス達は各々準備の為に夜を過ごした。

・蜜柑「これからねぇたまとずっと一緒なのじゃ!わっちは享楽に耽っておるのじゃ!!」

・アルテミシア「もう!遊びに行くんじゃ無いなの!!」

・蜜柑「分かっておる。分かっておるのじゃ。だから今日は一緒に寝ておくんなまし。」

蜜柑は寂しそうな顔を見せた。

・アルテミシア「はぁ。分かった分かったなの。」

アルテミシアはため息をつきながら言った。

・蜜柑「ほんとかえ?」

蜜柑の顔はぱあっと明るくなりおもむろに布団を引き出した。

・蜜柑「ささっ!明日も早いし、もう寝るのじゃ!!」

・アルテミシア「えっ!布団は一枚だけなの?」

・蜜柑「当たり前でありんす♡」

そう言いながら蜜柑はアルテミシアを布団に引きずり込んだ。

トリカは薊と話をしていた。

・トリカ「なるほど……」

装備や雪山についての話をしていた。

桂は暗い道場で座禅を組んで目を閉じていた。

・桂「…………」

グラジオラスは中庭で刀を振っていた。

・グラジオラス「(櫻子ちゃんは絶対に俺が助ける!!)」

・アーリスは月に向かってお祈りをしていた。

・アーリス「……」

夜は明け朝を迎えた。

・アーリス「みんな準備はいい?」

・アルテミシア「できてるなの。」

・蜜柑「万端なのじゃ。」

・トリカ「ええ。」

・桂「おす!!!」

・グラジオラス「おう!!!」

全員気合いが入っており新しい装備に身を包んでいた。


59話 笑え

・蜜柑「嗚呼。ねぇたまの新しい衣装姿もめんこいのじゃあ。」

・薊「装備はトリカさんと話し合い各々が戦いやすいようにあつらえております。」

・薊「それでは案内します。」

薊は屋敷内にある転移色技陣の元にみんなを案内した。

・トリカ「これが転移色技陣。ですが向日葵姫様がいなくても作動させることはできるのですか?」

・薊「そこに気がつくとは、さすがトリカさん。これを見てください。」

転移陣の横には小さな箱があった。

・薊「これは色箱いろばこと言います。箱の形をしていますが実際は石です。素材は陽炎石でできています。この色箱に向日葵姫様の色技を格納しております。」

・トリカ「そんなことまでできるのですね。やはりこの国の技術はすごい。」

トリカは驚き関心していた。

・薊「そしてこの色箱に飛脚の鑑札を持っている者が色素を流し込むと作動します。皆さん転移陣の中に入ってください。……それではいきます。」

薊が色箱に色素を流し込むと色箱は光だし、太陽の光目掛けて光の柱ができた。太陽の光からはもう一本の光の柱が別の場所まで降りっていった。

その瞬間転移陣が光、みんなの姿は消えた。

ピシュッ!

パァアア。

アーリス達は別の転移陣に転移したのだった。

・薊「着きました。」

辺りは曇っていて少し薄暗かった。

・グラジオラス「寒いな…」

・薊「ええ。もう国境はすぐそこです。」

寒さと薊のその言葉にみんなは気を引き締めた。

・薊「見てください。あれが冷徹の壁ブルー ウォールです。」

・全員「!!!」

・アーリス「でっかいね。」

・トリカ「何も寄せ付けないと言ってるようですね。」

・薊「皆さんはあちらの山から迂回してもらいます。」

そう言いながら薊は指を指した。

全員は雪山の麓までやってきた。

雪が降っている。

・薊「それでは私が案内できるのはここまでです。どうか、どうか、櫻子様を……」

・アーリス「任せて!!」

アーリスは薊の肩に手を乗せてそう一言だけ伝えた。

・薊「桂。華組皆の気持ちをお前に託す。絶対に櫻子様を助け帰ってこい!!」

・桂「了解です!!!!!」

桂は強く返事をした。

アーリス達はその場を後にした。

その後ろ姿を薊は見えなくなるまで見送った。

・薊「(皆さんよろしくお願いします。)」

数十分後。

・グラジオラス「だんだん吹雪が強くなってきたな。」

・トリカ「そうですね。足元の雪も深くなってきました。」

・アーリス「それにしてもこの装備とっても暖かいね!ね!桂」

・桂「ああ。」

・アーリス「この装備は華組で作ってるの?」

・桂「ああ。」

桂は素っ気ない返事をした。

・アーリス「桂はずっと元気ないよね。それに全然笑わなくなったし。」

少し場の空気がピリついた。

桂は足を止めた。

・桂「俺に……そんな資格は…ない。」

桂は拳を強く握りしめ体を震わせながら言った。

・桂「俺は櫻子様を助けるまで……いや助け出した後だって、笑うなんて……笑うなんて許されないんだ。俺はそれほどのことをしっ」

ゴスッ!!

桂が話終える前にアーリスは桂の頬を殴った。

ボスッ。

桂は雪の上に倒れた。

・アーリス「それ本気で言ってるの?……それを……それを!!凌霄さんの前でも言えるのか!!!」

桂は頬を抑えながらアーリスを見た。

・アーリス「凌霄さんの死を無駄にするな!!凌霄さんから受け取ったのは十手だけか?!!違うじゃないか。凌霄さんの思いを。期待を。生きてゆくというこれからを。受け取ったはずだよ。だったら笑うんだ!!笑って笑って困難も乗り越えて!櫻子も助け出して!またみんなで笑い合うんだ!!凌霄さんの分までも!!」

・桂「アーリス…」

スッ

アーリスは桂に手を差し出した。

・桂「そうだよな……すまねぇ。アーリス。いや、」

ガッ!

桂はアーリスの手を握り立ち上がった。

・桂「ありがとう!!アーリス!!」

・桂「俺は華組の副隊長だ!!!もうくよくよしねぇ!!隊長!!見ててくれ!!!あんたの分も戦う!!あんたの分も守る!!そしてあんたの分も笑うから!!!!」

桂は空に向かって叫んだ。

桂は涙を流しながらくしゃくしゃに笑っていた。

冷たい風の中に暖かい空気が流れていた。


60話 雪國スノードロップ

・アーリス達は二日かけて山を越えた。

・桂「見ろ。街が見えてきた。」

・アーリス「大きな街だね。」

・グラジオラス「これが雪國スノードロップ……」

遠くから見る街並みは似たような形の建物が多く簡素であった。その機能性に重視したであろう街並みはなんだか不気味にも感じた。

・トリカ「この人数だと目立つので街には二手に分かれてから入りましょう。」

・蜜柑「わっちはねぇたまをお守りするのじゃ!」

蜜柑はアルテミシアを後ろから抱きしめた。

・トリカ「そうですね。でしたらこうしましょう。一つは蜜柑さんアルテさんと私、もう一つはアーリスさんグラスさん桂さん。いかがでしょう?」

・アーリス「OK!!」

・蜜柑「問題ないのじゃ!」

・トリカ「潜入するにあたり、行動を明確化しましょう。まずは情報収集です。1、櫻子さんの所在。もちろんこれが最優先事項です。2、敵戦力の把握。今分かってるのは縁紅 弁慶とビオラ ドラキュラが主戦力だろうと言うこと。3、拠点と協力者の確保。これはかなり大事になってきます。拠点は言わずもがなですが、敵の大きさが分かりません。この知らない国で動くには協力者を見つけることは必須でしょう。」

・アルテミシア「うん、わかりやすいなの。トリカのおかげで動きやすくなったなの。さすがトリカなの。」

・トリカ「ありがとうございます。」

蜜柑はトリカがアルテミシアに褒められたことに少しムッとしてトリカを見た。

・アーリス「そういえば、弁慶は分かるけど、ドラキュラってどんなやつなの?」

・蜜柑「なんだ、アーリスはドラキュラを知らんのかえ?御伽噺にも出てくる有名な吸血鬼なのじゃ!!なんでも人の血を吸うことにより300年以上も生きながらえてるとか。なのじゃ!!」

蜜柑は得意げに言って、アルテミシアの方をチラッとみたた。

しかしアルテミシアの反応はなかった。

・蜜柑「(むぅー)」

・トリカ「さらに私の国では血を吸われた者はドラキュラの眷属になりどんな命令でも従うようになるとも伝えられています。」

・アルテミシア「それはボクの住んでた島でも聞いたことあるなの。」

・蜜柑「(むぅ〜)」

蜜柑はまたムスッとしてトリカを睨んだ。

アルテミシアは分かった分かったというようにノールックで蜜柑の頭を撫でた。

その瞬間蜜柑の表情はぱあっと明るくなった。

・蜜柑「(ふっふふっふふん♫)」

蜜柑は心のなかで鼻歌を歌っていた。

・グラジオラス「俺もトリカと同じだね。」

・アーリス「へ〜。みんな知ってるんだね!それにしてもおっかない話だね。」

・桂「確かに……これが本当の話だとしたら危険だな。軍事国家とドラキュラか……なんだかきな臭くなってきたな。」

みんなは一瞬黙り込む。

・アーリス「考えててもしょうがないね、そろそろ出発しようか。」

・トリカ「そうですね。それでは私達はこちらから。」

・アーリス「みんな気をつけてね。」

・アーリス達は二手に別れて街を目指した。

アーリス達は街に入った。

・アーリス「意外とあっさり入れたね。」

・桂「まず入国することが難しいから国内の警備はそんなになのかもな。」

・グラジオラス「なんだか街の大きさの割に人が少ないな……」

ドカンッ!!!

・アーリス、グラジオラス、桂「!!!!!」

急に街中で爆発音が鳴り響いた。

それが合図だったかの如く銃声があちこちで聞こえ始めた。

ドドドドトド!!!バラバラパラバラ!!!

・桂「一体どうなってやがる!!」

至る所から悲鳴や叫び声が聞こえる。

・桂「おい!!あれは民間人じゃないか!!」

軍服を着た者に民間人が追われていた。

・アーリス「助けよう!!!」

三人は一斉に走り出した。

アーリスは銃弾を掻い潜り敵を殴り飛ばした。

グラジオラスは影沼を使い刀で銃を無力化していき、そこを桂が十手で追撃をして、敵を倒していった。

・軍人「何だ!!お前らは!!」

・民間人「ありがとうございます!!」

・アーリス「いいから逃げて!!」

民間人は逃げて行った。

・桂「おい!!あそこ!!」

桂が叫びながら指を指した先には、

ドクンッ!!

それを見たグラジオラスの表情は一気に冷たくなった。

遠くに乱咲 第弐輪 縁紅 弁慶 の姿があった。

・弁慶「さあ!殲滅せよ!誰一人生かす必要はありません。生かしたところで1フランにもなりませんので。」

そう言いながら弁慶は武器を民間人に向かって飛ばした。

・アーリス「!!!」

・アーリス「やばい!!水仙の脚纏ホワイト レガース

アーリスは民間人を助ける為に飛び出した。

シュッ!!

武器は民間人の目の前に。

アーリスは必死に手を伸ばすが届かない。

・アーリス「(くそ!!間に合わない!!)」

キンッ!!

ギリギリのところで何者かが民間人の間に入りこんできて弁慶の飛ばした武器を弾いた。

・アーリス「お前は!!!」

飛びこんで来たのは乱咲の第肆輪 レイン ハイドラだった。

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