第9話

41話 藤の都

アーリス達は洞を出てしばらく歩いていた。

・アルテミシア「この地図凄いなの。この地図の通りに行くと全然魔物と遭遇しないなの。」

・トリカ「確かにさっきから一匹も見ませんね。」

・アーリス「見てーすごい景色だよ!!」

そこには綺麗な森とどこまでも続く水平線があった。

・グラジオラス「おー!!」

・トリカ「確かにずっと慌ただしかったから景色を見る余裕もなかったですね。」

・アルテミシア「とっても綺麗なの。」

3日後。

アーリス達は地図のおかげで殆ど魔物のに遭遇する事なく国境まで来ることができた。

・アルテミシア「見てなの!あの印!きっと国境なの!」

・グラジオラス「やっとだー。」

国境から少し歩くと関所が見えてきた。

・役人「こんにちは。こちら関所です。通行証をお見せください。それにしても歩いて来る方は久しぶりです。長旅だったでしょう。お疲れ様です。」

・アーリス「ありがとう!!これでいい?」

全員は通行証を見せた。

・役人「確かに確認致しました。それではお通りください。」

関所を出て数時間後、カタバミの紋章が描いてある大きな門が見えてきた。

・アーリス「きっとあれだよね!!」

・トリカ「そうですね。あの紋章は片喰家の家紋です。」

・アルテミシア「藤の都なの!」

・グラジオラス「櫻子ちゃーーん!!」

アーリス達は門の前で手続きをしました。

門が開いた。

アーリス達の目の前に藤の都の景色が一気に広がる。

・全員「わぁ〜!」

そこには沢山の藤棚に囲まれた美しい街並みがあった。

街全体は活気づいており笑顔で溢れていた。

・アーリス「見て!!あそこ!大きなお城!!」

遠くに天守閣が見える。

・アルテミシア「おそらくあそこに向日葵姫がいるなの。」

・アーリス「ねぇ!アルテ!街の探検に行って来ていい?!!」

アーリスは興奮気味に言った。

・アルテミシア「わかったなの。何だかこの光景見たことあるの。デジャブなの。」

トリカはそれを見てクスッと笑った。

・アルテミシア「ボクとトリカで宿を探しておくなの。だから2時間後にあのカラクリ時計の下で待ち合わせなの。」

それを聞くや否や、

・アーリス「わかったー!!!」

アーリスは走って行った。

・アルテミシア「あれっ?グラスはどこなの?」

・トリカ「あれを見てください。」

トリカは指を指した。

・グラジオラス「櫻子ちゃ〜ん!!」

既にアーリスの前を走っているグラジオラスの姿が見えた

・アルテミシア「もう!!二人ともちゃんと話を聞いてるのなの!!やれやれなの。」

トリカはまたクスッと笑った。


42話 盗賊

・街人「へい!らっしゃい!らっしゃい!美味しい野菜だよー!」

・街人「寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!世にも不思議な物語!まもなく竹取物語が始まるよー!劇場はこちら!急いだ!急いだ!」

アーリスはわくわくしながら藤の都を散策していた。

するとある看板が目に入った。

そこには「強者求む」と書いてあり、人集りができていた。

人集りから盛り上がった声が聞こえる。

ドンッ!

・街人達「おー!!!」

・街人「なんてやつだ!もう20連勝だぞ!」

・アーリス「(何かな?)」

アーリスは気になり人集りを覗いた。

するとそこでは腕相撲が行われていて橙色の色紋の男が座っていて隣には司会者役の男が立っていた。

・司会「おいおい!!つえーやつはいねぇーのかー??参加料は1000フラン買ったらここにある金総取りだー!ほらほら!今勝てば20000フランだよー!!」

ゴッ!

アーリスは勢い良く座った。

・街人達「うぉお!!」

街人達の歓声が上がった。

・街人「あんちゃん見ない顔だね!」

・街人「誰だか知んないがぶっ倒せー!」

・司会「おぉっと!新しい挑戦者だー!!それにしても変わった格好してるなぁ外からきたのかー?でもそんなのお構い無し強ければそれで良い!ほらさっさと1000フラン置きな!!」

・アーリス「ごめん!今お金もってなくて……(お金は全部アルテに預けてたんだよなぁ…)」

・司会「あぁ?!持ってないだぁ?ならすっこんでな!」

・アーリス「でも絶対勝つから!!ダメかな?……」

・街人達「はっはっはっ!!!」

街人達はそれを聞いて大笑いした。

・街人「いいじゃあねぇか!!やらせてやれよ!」

・街人「あんちゃん気に入ったよ!!」

・街人「俺もだ!!俺はあんちゃんに賭けるぜ!」

・街人「じゃあ俺はそっちのダンナにだ!!」

・司会「おいおい!勝手に賭け事やってんじゃねー!!」

・橙族の男「まぁいいじゃあねぇか。」

橙族の男はそう言うと腕を前に出した。

・司会「えっ!!でも…」

・橙族の男「俺らは強いやつを探してるんだ!強ければいいだろ?」

・司会「わっ分かりました!……お前負けたら10倍払って貰うからな!!」

・アーリス「いいよ!」

アーリスはわくわくを抑えきれない様子でニヤリと笑いながら橙族の男と手を組んだ。

・司会「そっそれではいきます!!よーい!のこった!」

グッ!!

両者は一気に腕に力を込めた。

・街人達「うぉ!」

力は拮抗していてどちらの腕も動かない。

・橙族の男「ほう。なかなかやるな。ならもう少し力入れるか。」

ググッ!

橙族の男がそう言うとアーリスの手は机ギリギリまで押された。

・街人「いけー!!」

街人達は盛り上がっている。

・アーリス「!!」

・アーリス「おじさん強いね…………でも!!」

アーリスは更に力を入れ押し返した。

ドンッ!!!

橙族の男の手は勢い良く机に叩き付けられてその衝撃で机の上にあったお金の山が舞った。

・街人達「うぉおおおおおおお!!!!」

アーリスは勝利した。

・街人「すげーよ!あんちゃん!」

・街人「ありがとな!儲けさせてもらった!」

・街人「くそー!負けたー!でもいいもん見せてもらったよ!!」

ほとぼりは冷め街人達は帰って行った。

・司会「ほらよ!持ってけ!!」

司会はアーリスに20000フランを渡した。

・アーリス「ありがとう!!楽しかったよ!」

・橙族の男「お前さん強いな。外から来たのか?」

・アーリス「うん!赤大陸から来たんだ!!」

・橙族の男「あっちの大陸からか。まだまだ世界に強いやつはいっぱいいるもんだな。」

・アーリス「おじさんも強いよね!だってあれ本気だしてなかったでしょ?」

・橙族の男「はっはっはっ!!見抜かれてたか!いいねー!!俺は凌霄 菊久のうぜん きくひさってもんだ!んでっこっちは部下のかつらだ。お前さん名前は?」

・アーリス「俺はアーリス!!」

・凌霄「アーリスか!よろしくな!」

・凌霄「ところでアーリスその強さを見込んで頼みがあるんだが。」

・アーリス「頼み?」

・凌霄「あの看板を見て分かるだろうけど、俺らは強いやつを探してたんだ。その理由はある盗賊を捕まえる為なんだ。」

・アーリス「盗賊…」

・凌霄「アーリス、お前さんは外から来たから知らないだろうけど今この藤の都を騒がせてるお尋ね者がいるんだ。そいつの名前は梅川 五右衛門うめかわ ごえもん、金持ちの家から金銀財宝を奪っていく、いわゆる悪党だ。ただのこそ泥だったらよかったんだけどこいつがまぁ腕っ節も強くて。だから手伝ってくれねぇか?」

・アーリス「うん!いいよ!」

・凌霄「はははっ!二つ返事とは嬉しいね!!」

・アーリス「実はオレもお願いがあるんだ!もし五右衛門を捕まえられたら向日葵姫に合わせて欲しいんだ。」

・凌霄「何お前さん、向日葵姫様に会いに来たのか?いいだろう!もし五右衛門を捕まえられたらかけやってやる!」

・アーリス「ほんとー!!頑張るよ凌霄さん!!」

・凌霄「よし!早速俺らの屋敷に案内する!」

数分後。

・凌霄「俺らは町奉行をやっていて組織の名は「華組はなぐみ」って言うんだ。ほらっ。着いたぞ。ここが華組の屋敷だ。」

・アーリス「わぁ大きいねぇ!」

屋敷の門が開く。

・部下A「おかえりなさい!凌霄隊長!」

・凌霄「おう。今帰った。」

アーリス達は屋敷に入った。

すると騒がしい声が聞こえてきた。

・部下B「おい!動くな!じっとしてろ!!」

・???「俺は怪しいものじゃない!!」

・部下B「怪しいやつはみんなそう言うんだ!!」

・凌霄「おいっ、なんの騒ぎだ?」

・部下A「実はさっき屋敷の周りを怪しいやつがうろついてまして……」

アーリス達は騒ぎの方に目をやった。

するとそこには、

・アーリス「あー!!!!!!グラス!!」

なんとグラジオラスが捕まっていたのだった。


43話 五右衛門

・凌霄「なんだお前さんの知り合いかい?」

・アーリス「うん!グラスはここまで一緒に来た仲間なんだ。出来ればあの縄をほどいてやってほしいな。」

・凌霄「そうは言ってもなぁ。」

・凌霄「グラスって言ったっけ。お前さんなんで屋敷の前をうろついてたんだ?」

・グラス「櫻子ちゃんに会いに来たんです!!」

・凌霄「櫻子ちゃん?もしかして櫻子お嬢のことか?」

・凌霄「ってお前さんその色紋、桜間家の色紋に似てるな!!」

凌霄はびっくりした様子だった。

・アーリス「グラスは桜間家とチュリップ家のハーフなんだって!」

・グラジオラス「そうなんです!俺は桜間 グラジオラスって言います!!」

グラジオラスはここまで来た経緯を凌霄に話した。

・凌霄「なるほど……お嬢のことが好きになってしまったと。」

・凌霄「よし!!わかった。お嬢に合わせてやる!!その代わりお前さんも五右衛門を捕まえるのを手伝うんだな。」

・グラジオラス「分かりました!!櫻子ちゃんの為ならなんでもやります!!」

その時急に鐘の音が聞こえてきた。

カンッ!カンッ!カンッ!

・アーリス、グラジオラス、凌霄「!!!」

・街人「五右衛門だー!!五右衛門がでたぞー!!」

・凌霄「噂をするとなんとやらだな。白昼堂々舐めたやつだ。二人とも行くぞ!!」

グラジオラスは縄をほどいてもらった。

・グラジオラス「待っててね!櫻子ちゃん!!」

アーリス達は現場に急行した。

そこには高価な絵が入った額縁を持った五右衛門が建物の屋根の上にいた。

・アーリス「あいつが五右衛門…」

アーリス達は下から見上げる。

・五右衛門「ははははっ!!ぬるい警備してるなー!!盗られたくないもんは金庫にでもしまっとけよ!!!」

・凌霄「五右衛門!!今日こそお前さんを捕まえるからな!!」

・五右衛門「おっ!華組。やっとお出ましか。ちんたらしてたら逃げちまうぞ!!」

・五右衛門「うん?なんだそいつら新顔か?猫の手も借りたいってか。笑えるな!」

・アーリス「五右衛門!!その盗んだものを返せ!!それを大切にしている人がいるんだぞ!!」

・五右衛門「うん?なんだお前これが欲しいのか?」

・五右衛門「ならくれてやるよ!!」

そう言うと五右衛門は絵を投げ捨てた。

・アーリス「!!!」

アーリスは絵に飛びついた。

地面スレスレのところで絵をキャッチする事が出来た。

・アーリス「なんてことするんだ!!」

アーリスは怒っていた。

・五右衛門「怒んなよ。それが欲しかったんだろう?だからくれてやったんだ。俺は盗りたかったから盗っただけだ!そんなものに興味はねぇ!今日は別に用があんだよ!!!」

そう言うと五右衛門は鉈を手に持ち屋根から凌霄に飛びかかった。

キンッ!!!

凌霄は十手で五右衛門の攻撃を防いだ。

五右衛門と凌霄は睨み合う。

五右衛門の真上にいきなり影ができた。

影の正体はアーリスだった。アーリスが水仙の篭手ホワイト ガントレットで殴りかかった。

五右衛門は後ろに飛んでアーリスの攻撃を交わした。

ゴンッ!!

アーリスは攻撃を交わされ地面を殴りつけた。

・五右衛門「へぇ。意外とやるな。だが今日はここら辺でおいとまさせてもらう。」

・五右衛門「凌霄!!3日後だ!!3日後に鬼百合 蜜柑を奪いに行く!!」

・凌霄「!!!蜜柑お嬢を!!」

・五右衛門「わざわざ宣言してやったんだ!!俺を楽しませろよ!!じゃあな!!」

そう言うと五右衛門は立ち去ろうとする。

・グラジオラス「そう易々と見逃す訳ないだろ。」

グラジオラスは五右衛門の影から出てきて五右衛門の後ろから首に刀を押し付けた。

・五右衛門「へぇ。お前もやるな。だが……釜茹地獄かまゆでじごく

ブワッ!!

・グラジオラス「熱っ!!」

五右衛門の体からは熱気と湯気が出ていた。

グラジオラスはいきなりの熱さに五右衛門を離してしまった。

・五右衛門「まぁそんなに焦るなよ。どうせまた会うことになる。せいぜい俺を捕まえられる用に準備しとくんだな!!じゃあな!!」

五右衛門に逃げられてしまった。

・凌霄「くそ。これは厄介なことになったな。蜜柑お嬢が狙われるなんて……」

・アーリス「蜜柑?」

・凌霄「詳しく話してやるが蜜柑お嬢に直接会った方が早いだろう。グラス!喜べ順番が逆になった櫻子お嬢に合わせてやる。」

・グラジオラス「えっ!本当ですか!!やったー!!」

・凌霄「今から鬼百合家の屋敷に案内する。」

・アーリス「凌霄さん!待って欲しいんだ。オレ、仲間を二人またしちゃってて先にそっちと合流していい?」

・凌霄「アーリスの仲間か。いいだろう。っで、どこで待ち合わせてるんだ?」

・アーリス「確かカラクリ時計がなんたらって言ってたような……」

・凌霄「この街のカラクリ時計って言ったらあそこしかないな。行くぞ。」

アーリス達はカラクリ時計の下に着いた。

・アルテミシア「おそーい!遅いなの!!!」

アルテミシアは饅頭を片手に怒っていた。

・トリカ「あれ?そちらの方は?」

・アーリス「凌霄さん!!さっき会ったんだ!」

・凌霄「凌霄 菊久と言う。よろしくだ。」

・アーリス「ちょっと色々あって、かくかくしかじか……」

アーリスはこれまでの経緯を話した。

・トリカ「何だか私達が出会った時もこんな感じでしたね。」

トリカはクスッと笑った。

・アルテミシア「アーリスはいつも事件に巻き込まれるなの!やれやれなの。」

・アーリス「ごめん!」

アーリスはアルテミシアに謝った。

・凌霄「アルテ嬢、すまないな。アーリスには手伝って貰ってる。俺からも謝罪させてもらう。」

・アルテミシア「いっ、いいなの。アーリスが断れないのは知ってるなの。」

・アルテミシア「急いでいるなら早くそのお屋敷に行くなの。」

・凌霄「感謝する。」

アーリス達は屋敷に向かった。

屋敷に到着してアーリス達は大きな襖の部屋の前に来た。

コンコンッ。

・凌霄「お嬢!菊久でございやす。」

凌霄は部屋の中に語りかけた。

???「入れ。」

中から声が聞こえ襖が開いた。

そこには桃族と橙族の娘が二人で座っていた。


44話 グラジオラスの花

襖が開きそこには綺麗な着物を着た桃族と橙族の娘が二人くっついて座っていた。二人は鬼百合家の娘 鬼百合 蜜柑と桜間家の娘 桜間 櫻子だった。

ザッ!

襖が開いた瞬間にグラジオラスは娘の元に駆け寄った。

・凌霄「ちょっ!おいっ!」

凌霄はグラジオラスを止めることが出来なかった。

・櫻子、蜜柑「!!!」

・グラジオラス「櫻子ちゃん!!君が櫻子ちゃんだね!!写真の通りとても可愛いよ!いや写真より成長してて綺麗だ!!!」

グラジオラスは櫻子の手を握りながら言った。

・櫻子「なっ!なんだ!おぬしは!余はっ、余はおぬしのことなぞ知らぬぞ!」

櫻子はいきなりのことにびっくりしていた。

ガバッ!

凌霄はグラジオラスを掴み、引き離した。

・凌霄「すんません!お嬢!」

・凌霄「おい!グラス!ちゃんと紹介するから待ってろ!!」

・アルテミシア「はぁ。やれやれなの。」

アルテミシアは呆れていた。

・蜜柑「!!!」

蜜柑はその声を聞いてアルテミシアの方を見た。

その瞬間次は蜜柑がアルテミシアの元に駆け寄った。

・アルテミシア「!!!」

蜜柑はアルテミシアの手を握り

・蜜柑「なんじゃ!なんじゃこの生き物は!めんこい。すぅっごくめんこいのじゃ!おっ、お主名はなんて言うのじゃ?どこから来たのじゃ?」

蜜柑は次から次に質問をした。

・アルテミシア「ぼっ、ボクは……」

アルテミシアは、動揺していた。

・蜜柑「菊久!欲しいのじゃ!わっちはこのめんこい生き物が欲しいのじゃ!!」

・凌霄「おっ落ち着いてください!お嬢!」

・凌霄「今日はいったいどうなってるんだ……」

・アーリス「はははっ アルテ、気に入られちゃったみたいだね!!」

・アルテミシア「わっ、笑い事じゃないなの!」

・蜜柑「アルテかぁ!アルテと言うのじゃな?どうじゃ?わっちの、わっちの妹にならぬか?!!」

蜜柑はアルテミシアを後ろから抱きしめ頭をよしよしと撫でながら興奮気味に言った。

・アルテミシア「やっ、やめるなの。」

アルテミシアは恥ずかしながら言った。

・アルテミシア「そっ、それにボクはもう30なの!」

・アーリス、グラジオラス、凌霄、蜜柑、櫻子「えっ!」

みんなは同時に驚いた。

・トリカ「おや?アーリスさんも知らなかったのですか?」

・アーリス「う、うん。トリカは知ってたの?アルテ、アルテミシアさんのこと……」

・アルテミシア「その感じやめるなの!!!いつも通りにしてなの!!」

トリカはクスッと笑いながら言った。

・トリカ「勿論ですよ。初めてお会いした時から聞いてましたからね。」

・蜜柑「なっ、なんじゃと……」

蜜柑は震えている。

・アルテミシア「??!!」

・蜜柑「これが最近噂のギャップ萌えとかいうやつじゃの!!ならばわっちが!わっちが妹になるのじゃ!ねぇたま!いいじゃろ!ねぇたま!」

・アルテミシア「もう勝手にするなの。」

アルテミシアは呆れた様子でそう言った。

・蜜柑「やったのじゃ!やったのじゃ!ねぇたま、わっちの頭も撫でてくれぬかえ?」

・アルテミシア「もぉ。」

アルテミシアは仕方なく後ろから抱きつている蜜柑の頭を撫でた。

・蜜柑「はぅうう……」

蜜柑は嬉しさで悶えていた。

・凌霄「蜜柑お嬢。そろそろ本題に入りたいのですが……」

・蜜柑「そっ、そうじゃったの。では話すのじゃ。」

・凌霄「実は先程また五右衛門が現れまして。」

・蜜柑「ほう。それで何を盗んだのじゃ?」

・凌霄「いえ。盗まれた物は無事取り返しました。ですがある予告をして逃げて言ったのです。」

・蜜柑「予告?」

・凌霄「はい。次に奪うものの予告です。それは奪う物ではなく奪う者。…………蜜柑お嬢。あなたです。」

・蜜柑「……」

・蜜柑「なるほど……つまりわっちの力を欲してるのじゃな。」

・凌霄「おそらく……」

・蜜柑「それでどうするのじゃ?菊久よ。」

・凌霄「勿論!絶対にお守りします!!」

・蜜柑「うむ。なら良い。そのために呼んだのであろう?この者達を。」

・凌霄「その通りでございやす!」

・蜜柑「ならばわっちと櫻子、それからねぇたまを絶対に死守するのじゃ!!」

・凌霄「はっ!この者達と華組総勢87名で必ずや!!」

・アルテミシア「(ボクも入ってるなの……)」

・凌霄「それでは作戦会議の為失礼します。」

・凌霄「おっと…その前に、櫻子お嬢。紹介したい者がおりまして…」

・グラジオラス「大丈夫です。凌霄さん。」

そう言うとグラジオラスは櫻子の元に行きピンクと紫と白のグラジオラスの花を渡した。

・グラジオラス「俺はグラジオラス。櫻子ちゃん俺は君が好きだ。また必ず会いに行くから。」

それだけ伝えるとグラジオラスは振り返りスタスタと部屋を出て行った。

櫻子は戸惑いと少し嬉しい気持ちがあり俯きながら顔を赤くしていた。

・凌霄「(意外とあっさり引いたな……)」

・グラジオラス「何してるのですか?凌霄さん早く会議を始めましょう。」

・凌霄「おっ、おう。」

・アルテミシア「ボクも行くなの。」

・蜜柑「ねぇたまも行くのかえ?わっちはもっとねぇたまと一緒にいたいのじゃ。」

・アルテミシア「蜜柑。」

・蜜柑「(はぅう。名前を呼んでくれたのじゃ。)」

・アルテミシア「ボクの妹なら言う事聞けるなの。そしたらまたいいこいいこしてあげるなの。」

そう言いながらアルテミシアは蜜柑の頭を撫でた。

・蜜柑「はぅうう。(可愛いのじゃ!可愛いのじゃ!可愛いのじゃ!可愛いのじゃ!)」

・蜜柑「分かったのじゃ。ハァハァ、わっち、ハァ、ねぇたまの為に我慢するのじゃ。」

蜜柑は床で悶えながら言った。

・アルテミシア「それじゃあ、またなの。(意外と扱いやすい子なの。)」

アルテミシアも部屋を出て行った。

アルテミシアが別の部屋に行くとみんなが集まっていた。

・凌霄「それでは作戦会議をはじめる。」

・凌霄「だがその前に蜜柑お嬢の力と撫子家について説明する必要があるな。」


45話 本家と分家

・凌霄「今回五右衛門が狙っている蜜柑お嬢の力はこの国でも知っている者は少ない。なぜ五右衛門が知っているのかも不思議だ。」

・アーリス「どんな力なの?」

・凌霄「……陽炎石。」

全員「!!」

・凌霄「陽光石を陽炎石に変える力。」

皆は驚いている。

・トリカ「そんな力が……なるほどだから陽炎石は希少だったのですね。」

・凌霄「そうだ。この国が陽炎石が発掘されやすいと言われている所以だ。これができるのは蜜柑お嬢と後はローズ家のアーデルハイト王妃とアリシア王女と言われている。」

・トリカ「アーデルハイト様とアリシア様が!!それは私も知りませんでした…………」

・凌霄「それほど隠されていたと言うことだ。」

・凌霄「次に蜜柑お嬢と櫻子お嬢の一族の話だ。元々この御二方の一族は一つだった。それが曙族の撫子家だ。月日は流れこの一族が橙族の鬼百合家 本家と桃族の桜間家 分家の二つに別れた。理由はさっき言った力を守るため。代々どちらかの家系にこの力を授かった者が生まれる。その度に本家と分家が入れ替わるという珍しい家系だ。そして今は蜜柑お嬢がその力を授かっている。」

・グラジオラス「なるほど!!つまり姫様達を悪の手から守ればいいってことですよね!!」

・凌霄「まっ!そう言うことだ。」

・凌霄「じゃあ具体的な話をしていく。まず五右衛門が来るのは3日後だ。」

・アーリス「なんでわざわざ襲いに来る日を言うんだろうね?」

・凌霄「それには3つ理由がある。1つ目はその情報が定かかどうか分からないということだ。もしかしたら明日奇襲をかけてくるかもしれないという疑念が生まれ精神的な疲れを与えることができる。2つ目は相手戦力の準備期間が必要だということ。五右衛門は一人で盗みをするのを好むが馬鹿じゃない。仲間を連れてくるはずだ。そして3つ目これが五右衛門の本心だと思う。純粋に宣戦布告した上での盗みを楽しんでいる。これは1つ目と矛盾してるとも取れるがだいたいこんな所だろう。」

・アーリス「じゃあ3日後に備えて準備してみんなで迎え撃つんだね!」

・凌霄「半分正解だ。こっちは既に戦力を把握されている。だからこそそれを逆手にとる。」

・アーリス「逆手に?」

・凌霄「そうだ。鬼百合家の屋敷はここを合わせて付近に3つある。だからわざとこっちの警備を分散して蜜柑お嬢がどこにいるかを分からなくする。」

・トリカ「相手の戦力を分断させて連携を取れなくさせるということですね。」

・凌霄「そういうことだ。」

・凌霄「そしてこちらの戦力は華組87名とお前さん達ということになるが実際には華組の戦闘員は46名だ。この46名を3つの隊に分けるのだが……」

・凌霄「入れ!!」

部屋の扉から2人の男が入って来た。

・凌霄「紹介する。副隊長の桜間 薊さくらま あざみ月樹 桂つきぎ かつらだ。」

・アーリス「あっ!!司会のお兄さんだ!」

・桂「おう!さっきぶりだな!今度は俺が腕相撲の相手になってやるよ!」

・アーリス「いつでも相手するよ!!」

そう言うと二人は握手をした。

・凌霄「薊。説明を頼む。」

・薊「了解です。隊長。」

・薊「それでは私の方から今回の作戦の説明をさせて頂きます。まずは隊と皆さんを3つの班に分けました。それぞれの班で3つの屋敷の守りに付いてもらいます。配置はこんな感じです。」

一号邸 い班 凌霄、戦闘員15名

二号邸 ろ班 薊、グラジオラス、戦闘員14名

三号邸 は班 桂、アーリス、トリカ、戦闘員14名

・薊「そして蜜柑お嬢様に居て頂く屋敷ですが当日になって凌霄隊長と私、桂、アルテミシアさんだけに知らせます。申し訳ありません。情報漏洩を防ぐ為にお許しください。アルテミシアさんは蜜柑お嬢様と櫻子お嬢様の傍で直接お守りお願いします。」

・アルテミシア「分かったなの。」

・凌霄「じゃあ、これで作戦会議は終わりだ。これから華組の屋敷に案内するから当日まで泊まってくれや。各自班の仲間との顔合わせと戦闘スタイルの情報共有を行ってくれ。」

・グラジオラス「了解です!!」

・アーリス「OK!!」

・アルテミシア「あー!!!ボクたち宿を予約しちゃってるなの。……うぅ、キャンセル料払わないとなの。アーリスといるといつもこうなの……」

・凌霄「はっはっはっ!!すまねぇなアルテ穣ちゃん!そいつはちゃんと俺たちが払うから安心しな!薊払っといてやりな!」

・薊「了解しました。」

・アルテミシア「本当なの?ありがとうなの。」

・アーリス「良かったね!!アルテ!!」

・アルテミシア「もう!」

アルテミシアはちょっとだけ不貞腐れた。

・凌霄「そうだ、アーリスちょっと二人だけで話があるんだがいいか?」

・アーリス「???」

アーリスと凌霄は皆と離れて話をしていた。

その日の夜。

華組屋敷。

・アーリス「ふぅ。お風呂気持ち良かったね!トリカ!」

・トリカ「そうですね。立派な露天風呂でしたね。」

・アーリス「あれ?グラスは?」

・トリカ「そういえば居ませんね。薊さんとお話しでもしてるのでは。」

・アーリス「そっか。そうかもね。」

・アーリス「あっ!桂ーー!!腕相撲勝負しよーー!!」

・桂「望むところだ!!」

アーリスは桂の元に走って行った。

同時刻。

鬼百合家の屋敷二階櫻子の部屋

櫻子は窓を開けて外を眺めていた。

・櫻子「(あのグラスって人は誰だったんだろう…それにしても余の手をいきなり握るなんて失礼しちゃう!べっ別に嬉しい分けじゃないんだから!!)」

櫻子は一人で顔を赤くして恥ずかしがっていた。

すると

???「櫻子ちゃーん!」

下から声がした。

そこにはグラジオラスが立っていた。

・櫻子「なっ!なぜお主がここに?!!」

・グラジオラス「なぜって櫻子ちゃんに会いたいからだよ。」

・櫻子「余っ!余に会いたいって……こんなところ屋敷の者に見られたら怒られてしまうぞ!」

・グラジオラス「大丈夫!!」

バッ!!

そう言うとグラジオラスは窓の下にある屋根に飛び乗った。

・グラジオラス「はい。これプレゼント。」

グラジオラスは首飾りを櫻子に渡した。

・櫻子「えっ。これってもしかして虹色孔雀の羽根?」

・グラジオラス「そうだよ。良く分かったね。櫻子ちゃんに絶対似合うと思って首飾りにしてみたんだ。」

・櫻子「初めてみた……。余はあまり外に出して貰えないから、こーゆうのに憧れてて。虹色孔雀の羽根、絵本でしか見た事なかったから……」

グラジオラスは櫻子の喜ぶ顔を見ていた。

・櫻子「ちっ、違うぞ!喜んでなどおらぬぞ!」

櫻子は照れ隠しをした。だがすぐに。

・櫻子「…………嘘。嬉しい…。余は嬉しいぞ!!グラスよ!!」

・グラジオラス「ありがとう。覚えてくれてたんだね。名前。」

・櫻子「うむ。余もお主のこと気になっておるみたい。」

櫻子はそう言って目を逸らした。

・櫻子「ほっ本当に見つかってしまうぞ。」

・グラジオラス「大丈夫。実は誰にも言ってないけど俺、花言葉を授かってるんだ。花言葉は「密会」愛してる人と会う時誰にも邪魔をされることは無いんだ。それが本当の愛ならね。……この言葉を授かった理由は絶対櫻子ちゃんに会う為だね!」

・櫻子「……でっ、でも、どうして?初めて会ったばかりの余にあっ、あっ、愛なんて……」

櫻子はとても恥ずかしそうに聞いた。

・グラジオラス「愛に理由が必要?好きになってしまったという事実がそこに存在してるだけだよ。」

・櫻子「グ…ラス」

櫻子は気づいたらグラジオラスの目を見つめていた。

グラジオラスは櫻子にニコッと微笑みかけ

・グラジオラス「また明日来るね。花言葉があっても効果時間は無限じゃないからね。」

そう言うとグラジオラスは屋根から飛び降りて櫻子の方を見た。

グラジオラスは何も言わずに走って帰って行った。

・櫻子「(もう行ってしまうのか……)」

櫻子は寂しそうに夜空を眺めた。

・櫻子「(余はどうしてしまったのだ)」

櫻子の鼓動が静かな夜に響き渡る。

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