第8話
36話 代償
・福寿丸「おーーーい!ソレイユ殿〜ルーナ殿〜!」
福寿丸が浜辺から手を振っていた。
フワリッ。
ソレイユとルーナは福寿丸の元に降りた。
・ソレイユ「へへへ!やった!」
・福寿丸「すごいでござる。でも急に何で……」
福寿丸はソレイユに聞いた。
・ソレイユ「全て知ってしまったんだよね!」
・ルーナ「知ってしまった?」
ルーナが聞き返す。
・ソレイユ「俺の色技
・ソレイユ「あっ!安心して福寿丸!小夏さんの容態は必ず治るから!」
・福寿丸「本当にでござるか!!よかったでござる。でも…………」
・ルーナ「でも!!そんなに強大な力いったいどんな根の代償を払ったら……」
・ソレイユ「そうだよね。そこ気づいちゃうよね。」
・ルーナ、福寿丸「…………」
・ソレイユ「俺は後1週間で死ぬ。」
・ルーナ「えっ?」
その瞬間ルーナの瞳から涙がこぼれる。
・ソレイユ「代償は二つ。まずは全知で得た太陽エネルギーの解放。これは力を使い切ることと肉体の崩壊が条件。そしてもう一つは知的好奇心の喪失。全てを知るってことは反対に新しく知ることが出来なくなるってこと。知りたいという欲求、それを達成した事に対する喜び、感動、興奮、高揚などの感情を得ることができなくなった。俺的にはこれが一番つらいかな。」
・ルーナ「そっ……そんな……」
・ルーナ「うわーーーーーーーん!!!!」
ルーナは泣き崩れた。
・ソレイユ「泣かないで。ルーナ。」
・ルーナ「だって、だって!!私のせいで、私のせいで!!!」
・ソレイユ「いいんだよ。ルーナ。俺は後悔は全くしてないよ。何故か今なら恥ずかしげもなく言える。俺のどんなことよりもルーナが大切だったんだ。」
・ルーナ「うっ、ううっ」
ルーナは泣き止まない。
・ソレイユ「わかった。じゃあルーナには責任を取って貰おうかな!」
ルーナはソレイユの顔を見た。
・ソレイユ「ルーナ。一週間笑顔で俺の隣にいてくれ。」
・ルーナ「うっ、うう、やっぱりソレイユは…ずるいよ。」
ルーナは涙を手で拭いながら言った。
数分後。
・ソレイユ「落ち着いた?ルーナ。」
・ルーナ「うん。」
・ソレイユ「よし!!俺の人生残り一週間!やりたいこといっぱいあるんだ!ルーナ!福寿丸手伝ってよね!」
・福寿丸「任せるでござる!大舟に乗ったつもりでいるでござる!!」
・ルーナ「なんでも言って!もう泣かないわ。」
・ソレイユ「二人ともありがとう。」
・ソレイユ「まずはこれ!」
そういうとソレイユは近くにあった手のひらサイズの石を拾った。
・ルーナ「石?」
・ソレイユ「そう!この石に俺の太陽エネルギーを注ぎ込む!!」
石は光出した。
・ソレイユ「炎エネルギー、つまり俺らブルームにとって苦手な火には他のものにプラスの力を与える原動力があるんだ。その力に似せて作った太陽光の太陽エネルギー。これを込めて創り出したのがこの陽光石!これを二人には広めて欲しいんだ。」
・福寿丸「広めるでござるか?」
・ソレイユ「そう!例えば福寿丸が乗ってきた舟だけどあれもこの石を使えば自動で動かせるようになる!まぁこの技術は何世代も後になるだろうけど。それができるようになるきっかけをつくってほしいんだ。他にも料理や医療にも使えるんだ!!」
・福寿丸「すごい!!すごいでござる!これがあれば世界が発展するでござる!!」
・ルーナ「でもソレイユ1人しか作れないなら直ぐに資源が無くなっちゃうんじゃ…」
・ソレイユ「それについてはしっかり考えてあるから大丈夫!!」
・ソレイユ「それよりも大事なことがもう1つあるんだ。」
・ルーナ「大事なこと?」
・ソレイユ「そう。この町の命に関わる大事なこと。」
・ソレイユ「3日後に大地震がくる。それに伴い大津波も起こる。」
・ルーナ「地震!!」
・福寿丸「でもどうしてそれが分かるのでござるか?」
・ソレイユ「ドミノ理論。ある事がきっかけで連続的に起こる事象なんだけど。今回の事象は自然災害、きっかけはあの雷と山火事。偶然は偶然を呼ぶけどそれは同時に必然でもあるんだ。分かった理由は空気の質感、気温の変化、後は鳥や虫、動物、生き物達の動きから推測できた。確率は90%以上だ。この世でもっとも恐れられるものは自然の脅威なんだ。これを必ず食い止める!!」
・ルーナ「私達は何を?」
・ソレイユ「ルーナは町のみんなにこのことを知らせて欲しいんだ。ルーナの言うことならみんな絶対に信じるから!福寿丸はみんなの避難誘導をお願い。大地震による建物の崩壊は防ぐことが出来ない。でも予め分かっていたら命は守ることができる。」
・福寿丸「分かったでござる!!」
・ルーナ「つなっ…」
・ソレイユ「大丈夫!!津波は俺が死んでも防ぐ!いや死なずに防ぐから!!!」
それからルーナは町人全てに自然災害のことを伝え、場所と食料の確保を行った。同時に陽光石も広めた。
3日後。
ゴゴゴゴゴッ!!!!
不穏な地響きが鳴り響く。
37話 太陽神と月の女神
ゴゴゴゴゴッ!!!
地響きが鳴り地面が揺れ始める。
・町人「きゃー」
・町人「ゆっ揺れてるぞ!!かなりでかい!」
・ルーナ「みんな落ち着いて!ここは安全だから!衝撃に備えて頭を守って!!津波は絶対…絶対!!ソレイユが防いでくれるから!!」
ゴガンッ! ゴンッ!ガラガラガラ!!
無人の町は建物は崩れ崩壊していく。
全ての町人は避難していたため負傷者は0であった。
徐々に揺れが無くなってゆく。
・町人「止まった?……」
・町人「揺れは収まったみたいだな……」
・ルーナ「気を抜かないで!!まだソレイユは戦っているから。」
ソレイユは浜辺に居た。
ソレイユの足元の海水がどんどん遠ざかってゆく。
ズズズズズズッ!!!!!
異様な音と共に大きな高波が襲ってくる。
高さ10m以上の津波だった。
・ソレイユ「よし。やるか。この町は!ルーナは必ず俺が守る!!」
・ソレイユ「
ソレイユは地面に手を置いた。
すると手元の地面から無数の巨大な樹木と植物が生えてきた。
ニョキニョキ!!ズズズズッ!!シュルルルル!!
植物は広範囲に広がり大きな壁となった。
ザッッッッバーーーーン!!!
津波はソレイユの出した植物とぶつかった。
・ソレイユ「ふぅ。これでもう大丈夫。」
ソレイユは津波をくい止めた。
・福寿丸「おーい!ソレイユ殿〜!」
ルーナと福寿丸がソレイユの元に走ってきた。
・ルーナ「やったね!!ソレイユ!!すごいわ!!」
そう言いながらルーナはソレイユに飛びついた。
・ソレイユ「安心して。これでもう大丈夫だから。」
・福寿丸「それにしても、これをソレイユ殿が??」
・福寿丸は森の壁をみて唖然としていた。
・ソレイユ「太陽エネルギーの恩恵だね!」
・ルーナ「3日……本当に後3日でソレイユは……」
・ソレイユ「ほら!ルーナ暗い顔しないで!笑顔!笑顔!」
そこからソレイユとルーナと福寿丸はたくさんの思い出を作った。
最終日。
・ソレイユ「二人とも今までありがとう!とても楽しかったよ。二人と出会えて思い出もたくさんできた。もう後悔もやり残したこともないよ。」
・ルーナ、福寿丸「…………」
・ソレイユ「そうだ!福寿丸!福寿丸にプレゼントがあるんだ!!」
・福寿丸「プレゼントでござるか?」
・ソレイユ「そう!橋だよ!橋!」
・福寿丸「橋?」
・ソレイユ「いつか話したよね!この国と福寿丸の国を繋ぐ大きな橋が出来ればって!」
・福寿丸「まさか…その話を実現するでござるか?!!」
・ソレイユ「だから福寿丸はこの国とあっちの国との交流の架け橋になって欲しいんだ!」
・福寿丸「驚いたでござる。そんなことができるなんて。でも!ソレイユ殿の最後の言葉、拙者が必ず応えてみせるでござる!!!」
・ソレイユ「ありがとう。福寿丸。それじゃあもう行くね。」
・福寿丸「拙者が……拙者が!必ず!必ず!発展した笑顔溢れる良い世の中にしてみせるでごさる!!!」
福寿丸の目からはたくさんの涙が溢れだした。
ソレイユは福寿丸にニコッと微笑んだ。
・ソレイユ「ルーナ。最後に手伝って欲しいんだ。」
・ルーナ「……」
・ソレイユ「俺を海の真ん中まで連れて行って欲しいんだ!」
ルーナは無言で頷いた。
ソレイユとルーナは手を繋ぎふわりと浮かび上がった。
・ソレイユ「じゃあね!福寿丸!」
ソレイユは手を振りながら飛んで行った。
福寿丸はソレイユが見えなくなるまで見つめていた。
大陸と大陸の海の真ん中の上空。
・ソレイユ「ルーナ。ルーナにもプレゼントがあるんだ。実はルーナには色技とは違う特別な力があるんだ。でもまだそれはルーナの中に眠ったままなんだ。それを俺の太陽エネルギーで呼び起こす。きっとこの力はこの先役に立つはず。そしてこの力を受け継いでいって欲しい。」
・ルーナ「わかったわ。」
ソレイユの繋いだ手からルーナに太陽エネルギーが送られた。
ルーナは暖かい光に包まれた。
・ソレイユ「ルーナ。これで本当に最後だ。…………ルーナ。好きだ。ずっと好きだった。俺は全知の力を授かった。でもどんなに知っても何を知っても、ルーナのことが好きだということは変わらなかった。愛してるよ。ルーナ。」
・ルーナ「私も好き!大好き!!…やっぱりソレイユはずるいわ。もっと早く言ってよね……」
ルーナは泣きそうになったが堪えた。
・ルーナ「もう泣かないわ!最後まで笑ってるって約束したからね!それに代わりに福寿丸が泣いてくれたからね!」
二人はクスクスっと笑い合った。
・ルーナ「ソレイユ。愛してる。」
そういうとルーナはソレイユにキスをした。
そしてルーナは繋いでいた手を離した。
・ソレイユ「(ありがとう。ルーナ。)」
ソレイユはゆっくりと落ちて行く。
・ソレイユ「
ソレイユは眩い光に包まれた。
・ソレイユ「"
ズズズズッ!ゴゴゴゴゴッ!
ソレイユは核となりそこから超巨大な樹木が生まれた。
パァァァァ。
樹木から無数の光の胞子が飛び散り世界中へと降り注いだ
この胞子には太陽エネルギーが含まれており、大地へ染み込んでいった。これが後に全世界で発掘されるようになる陽光石である。
樹木はみるみる形を変え大陸と大陸を繋ぐ超巨大な橋となった。
・ルーナ「(ありがとう。ソレイユ。)」
ルーナは空中で踊った。ソレイユを尊ぶように舞った。舞い続けた。
その姿は美しく可憐であった。
そしてこの出来事は語り継がれ、語り部のルーナは月の下で美しく舞う姿から月の女神、ソレイユは太陽神と呼ばれるようになったのであった。
38話 記憶喪失
・アルテミシア「まさか、覚えてないの!ボクなの!アルテミシアなの!!」
アーリスは苦笑いしている。
・アルテミシア「ほら!こっちがトリカでこっちはグラスなの!!」
・アーリス「ごめんなさい。アルテミシアさん。何も思い出せないんだ。」
・アルテミシア「!!!」
アルテミシアは少し涙を浮かべていた。
・アルテミシア「ボクが…ボクが……」
そう呟くとアルテミシアは部屋から出て行ってしまった。
・グラジオラス「アルテ……」
・トリカ「アーリスさん。実は……」
トリカは事の経緯とこれまでの思い出をアーリスに話した。
1時間後。
・アーリス「そんなことがあったんですね。オレも迷惑かけちゃったみたいで……」
・トリカ「いえ!アーリスさんは私達を守ってくれました。」
・グラス「そうだよ!!あんなになるまで……」
・アーリス「でもみんなが無事で良かった。アルテミシアさんにもちゃんとお礼を言いたいな。」
アルテミシアは書庫に居た。
・アルテミシア「(止まっている暇はないの。絶対にアーリスの記憶を戻すの。)」
・アルテミシア「(あの石版に書いてあった…ルーナの特別な力……あれはきっと魔術なの。何か、何か手がかりがあるはずなの。)」
3日後。
アルテミシアの元にトリカがやってきた。
・トリカ「アルテさん大丈夫ですか?あれから全然寝てないですよね。少し休んだ方がいいのでは。」
トリカは心配そうに言った。
・アルテミシア「大丈夫なの。もう少しでな何か何か分かりそうなの…」
アルテミシアはトリカの方を一瞬みてすぐに本に目をやった。すごい集中力だった。
・アルテミシア「ルーナはこの時代までどうやってこれを伝えた……なの……」
アルテミシアはブツブツと呟いている。
・トリカ「そうですか…甘いお菓子を頂けましたので置いておきますね。」
そう言ってトリカは書庫から出ていった。
トリカがアーリスの元に戻るとアーリスはジョアと話をしていた。
・ジョア「それでね、この前パパが遺跡の調査に行ったら大きな大きな蛇さんが死んじゃってたんだって。蛇さんはホントはとっても優しいからきっと誰かが怒らしたんだろうってパパが言ってた。」
・アーリス「そっか。蛇さんには悪いことしちゃったね。」
アーリスはトリカに気づいた。
・アーリス「アルテミシアさんは……」
・トリカ「まだ調べものをしています。」
・アーリス「そっか……」
アーリスは少し申し訳なさそうな顔をした。
・アーリス「グラジオラスさんは?」
・トリカ「グラスさんは遺跡の修繕と桑伐ノ蟒蛇の埋葬を手伝っています。」
・ジョア「パパも一緒だよー!」
ジョアが横から入ってきた。
・アーリス「蛇さん安らかに眠れるといいね。」
・ジョア「うん!!」
更に3日後。
トリカとグラジオラスは書庫に入った。
その瞬間。
・アルテミシア「分かった!!分かったなの!!」
アルテミシアの興奮気味の声が聞こえてきた。
トリカはアルテミシアの元に寄った。
トリカは気づく。
置いておいたお菓子に手を付けられてはなかった。
・トリカ「体は大丈夫ですか?」
トリカは心配そうに聞いた。
・アルテミシア「そんなことより戻せるなの!アーリスの記憶を戻せるかもなの!!」
・グラジオラス「本当か!!」
・アルテミシア「月の女神ルーナには特別な力があったなの。それは語り部として記憶を紡いでいく力。アーリスの記憶を操る能力といつもルーナにお祈りしていたことももしかしたら関係があるかもなの。」
・トリカ「それでどうやって…」
・アルテミシア「みんなにはちゃんと話していなかったのだけれどボクは魔術というものが使えるの。これはとっても危険で一歩間違えれば死に繋がることもあるの。だからボクの故郷では他言しないような決まりがあるなの。」
・トリカ「魔術ですか。」
・アルテミシア「そうなの。この魔術こそルーナから伝わったものだったの。」
・アルテミシア「そしてこのルーナの記憶を紡ぐ力をボクの魔術で再現するなの。」
・トリカ「そんなことができるのですか?」
・アルテミシア「成功したらなの……失敗したらボクは死ぬなの。」
・トリカ、グラジオラス「!!!!」
・グラジオラス「死ぬって!!」
・アルテミシア「大丈夫なの。覚悟は決まってるなの。」
・グラジオラス「…………」
・アルテミシア「具体的な事だけどなの。ボクの魔術をアーリスに3日間使用し続けるなの。」
・トリカ「3日間!!三日三晩休まずにということですか?!!」
・アルテミシア「そうなの。これはそれほどの事なの。」
・トリカ、グラジオラス「……」
・アルテミシア「トリカには少し手伝って欲しいの。」
・トリカ「……いったい何を。」
・アルテミシア「強力な麻酔薬を創ってアーリスに投薬して欲しいなの。」
・トリカ「どれくらいの強さのものですか?」
・アルテミシア「3日間眠り続けるようにできるものなの。」
・トリカ「ですがそれではアーリスさんの体が……」
・アルテミシア「大丈夫なの。ボクが魔術と同時並行で回復色技をかけ続けるなの。」
・トリカ「……」
・アルテミシア「ボクを信じて欲しいなの。」
・トリカ「……分かりました。アーリスさんをお願いします。」
トリカも覚悟を決めたのであった。
3人はアーリスの所に向かいこのことを話した。
・アルテミシア「今のアーリスにとってボクは誰だかわかんない他人と思うなの。でもボクにとってはとっても大切な仲間なの。だから、だから、ボクを信じてなの。」
アルテミシアはアーリスに強い意志を伝えた。
・アーリス「ありがとう。アルテミシアさん。オレの記憶がないって分かった瞬間直ぐに書庫に向かってくれましたよね。その時から信じています!!」
アーリスはアルテミシアの目を真っ直ぐに見た。
・アルテミシア「治療は明日の12時から行うなの。」
翌日。
・トリカ「
トリカは麻酔薬を精製した。
・トリカ「これをお飲みください。」
トリカはアーリスに麻酔薬の入った。試験管を渡した。
ゴクッ!
アーリスは麻酔薬を飲みほした。
アーリスはベッドに横になった。
・トリカ「おやすみなさい。」
・グラジオラス「頑張れ!!アーリス!!」
・アーリス「みんなありがとうございます。」
そう言うとアーリスは眠った。
・アルテミシア「それじゃあ始めるなの。みんなは外に出ててなの。」
・トリカ「アルテさん!お願いします!」
・グラジオラス「頼んだぞ!!アルテ!!」
トリカとグラジオラスは部屋から出ていった。
・アルテミシア「魔術
アルテミシアの前に大きなピアノが出現した。
タラララーン……
綺麗な音色が響き渡る。
39話 三日三晩
タラン タラララン
扉の外まで綺麗な音色が聞こえてくる。
トリカとグラジオラスはアーリスとアルテミシアの無事を祈っていた。
【魔術
・アルテミシア「(ボクが絶対に思い出させてあげるなの!!)」
トリカとグラジオラスは
・トリカ「それではいきますよ。」
・グラジオラス「よっしゃ!いつでもいいよ!」
トリカは弓を構えグラジオラスに向かって矢を放った。
キンッ!
グラジオラスは刀で矢を叩き落とした。
・グラジオラス「トリカ!そんなんじゃ足りないよ!」
・トリカ「愚問ですね。グラスさん。」
そういうとトリカは矢継ぎ早に矢を放った。
数時間後。
トリカとグラジオラスはフリーズ宅に戻った。
アーリスの治療中の部屋の扉の前にジョアが寝ていた。
・トリカ「ジョアさん。ジョアさん。」
トリカは寝ているジョアを起こした。
ジョアは眠そうに目を擦った。
・トリカ「こんな所で寝たら風邪引きますよ。」
・グラジオラス「どうしたんだ?こんなところで?」
・ジョア「お兄ちゃんもお姉ちゃんもみんな頑張っているからおいらも応援してたんだ!!」
・グラジオラス「そうか。ありがとな!!」
・ジョア「でもとっても綺麗な音色が聞こえてくるから寝ちゃってた!」
3人はクスッと笑った。
・トリカ「そうですね。」
次の日もその次の日もトリカとグラジオラスは二人で修行をした。
治療最終日治療が終わる数時間前。
トリカ、グラジオラス、ジョア、フェイはドアの前で祈りながらアーリスの治療が終えるのを待っていた。
アーリスは夢を見ていた。
???「お兄様!お兄様!」
夢の中で女の子が笑顔でアーリス呼んでいる。
女の子の顔はもやがかかったように霞んでいてはっきりしない。
記憶の場面は切り替わり、
・アルテミシア「アーリス!」
・トリカ「アーリスさん。」
・センノ「アーリス様。」
・フォルビア「アーリスさん。」
・エウビア「お兄ちゃん!」
・モンブラン「アーリス殿。」
・グラジオラス「アーリス!!」
みんながアーリスを呼んでいる声が聞こえる。心地よい曲と共に。
一方その頃アルテミシアは演奏のクライマックスだった。
アルテミシアの顔に疲れや辛いといった感情は一切見えなかった。アルテミシアは自信満々に笑顔でピアノを引いていた。アルテミシアの絶対にアーリスを治してみせるという気持ちがアルテミシアの体を動かし、演奏には1ミリのズレもなかった。
ジャーン!!!
そしてついにアルテミシアは三日三晩に渡る演奏をやり切ったのだった。
扉の奥からは音がしなくなり。ジョアとグラジオラスは涙を流していた。トリカも薄らと目元が潤んでいた。
4人はそーっとドアを開けた。
ドアを開けるとアルテミシアと目があった。
アルテミシアは達成感に溢れた表情で言った。
・アルテミシア「成功なの。」
その瞬間。
・グラジオラス「やったー!!!!!」
・トリカ「本当にお疲れ様です。」
・ジョア「お姉ちゃんすっごくすぅーーごく良い曲だったよ!!」
・フェイ「これをやりきるとはさすがマグワートじゃな。」
みんなは思い思いに感情をあらわにした。
その声でアーリスが目を覚まし起き上がった。
全員声を止めアーリスの方を見た。
最初に声を出したのはアルテミシアだった。
・アルテミシア「アーリス?……」
少しの沈黙。
・アーリス「おはよう!アルテ!!」
ぅわぁあーーーーー!!!!
全員声にならない声で喜んだ。
アルテミシアはアーリスに飛びついた。
・アルテミシア「うわぁーーーーん!!」
アルテミシアは緊張の糸が切れたように泣きじゃくった。
・アーリス「ありがとう。アルテ。ずっと聞こえていたよアルテの演奏。」
部屋は暖かな空気に包まれていた。
40話 それぞれの目的
アルテミシアは疲れ果てアーリスの膝の上で寝てしまっていた。
・アーリス「寝ちゃったね。」
・ジョア「お姉ちゃん凄かったんだよ!!」
・アーリス「そうだね。アルテには助けられてばかりだな……」
・アーリス「そういえば、二人も雰囲気かわったね。」
・グラジオラス「おっ!わかる?」
・トリカ「お二人が大変な時にいてもたってもいられずグラスさんと手合わせしていました。もうあんな思いしたくありませんから。」
トリカは悔しそうな顔をした。
・グラジオラス「次はぶっ倒してやる!!乱咲なんて!」
・アーリス「もう負けたくないね。いやもう負けない!!絶対だ!!」
3人は負けないと力強く心に誓った。
二日後。
・アルテミシア「ふぁああ おはようなの。」
アルテミシアは眠そうに起きてきた。
アルテミシアはまる二日寝ていたのであった。
・アーリス「おはよう!アルテ。」
・トリカ「甘いケーキと紅茶を用意してますよ。」
・アルテミシア「ありがとうなの。なんだかとってもお腹空いてるなの。」
・グラジオラス「当たり前だよ。まる二日寝てたんだから。」
・アルテミシア「ボク、そんなに寝てたなの。」
アルテミシアはまだぼーっとしていた。
一時間後。
・アーリス「それじゃあ今日ここを出発して再び藤の都を目指そう!!」
・アルテミシア「でもまずはみんなの目的をはっきりさせるなの。」
・トリカ「そうですね。」
・グラジオラス「俺は櫻子ちゃんに会いにー!!」
・アルテミシア「そうだったの。一番はっきりしてたなの。」
・アーリス「オレは昔の記憶を思い出す方法が無いかを向日葵姫に聞きたいな。それから陽炎石も見つかるといいな。」
・トリカ「陽炎石はなぜ求めてるのですか?」
・アーリス「オレの色技を陽炎石で底上げすると自分自身の今まで出来なかった記憶操作をできるかなって。」
・トリカ「なるほど…」
・アーリス「それからもうひとつ!乱咲をぶっ飛ばす!」
・アルテミシア「ボクの目的も乱咲なの。初めはレインを追っていたなの。それは乱咲の組織の実態を明らかにするためだったの。まさかその実態がたった7人だけの組織だったなんて思わなかったなの…」
・グラジオラス「でも何で乱咲を?」
・アルテミシア「ボクの故郷の薬
・グラジオラス「
・アルテミシア「
・トリカ「それほどの効力が……」
・アルテミシア「それでこの前乱咲と対面して分かったことがあるなの。きっと
・トリカ「なぜそう思ったのですか?」
・アルテミシア「あの金色の色紋は
・アーリス「取り憑かれている?」
・アルテミシア「ゴールド家は色技、薬、石、治療や回復に纏わるもの全ての技術、知識を集めてるなの。最悪の回復狂なの。」
・トリカ「回復狂ですか。」
・アルテミシア「でもそれは世間がただ揶揄してるだで本当は不老不死の方法を探してると言われているなの。」
・グラジオラス「不老不死?!そんなことできるのか?」
・アルテミシア「そんなことできるわけないの。だから周りからは怖がられているの。」
・グラジオラス「回復狂かなんかおっかないな…」
・アーリス「そういえば、トリカは?」
・トリカ「私は青大陸雪國スノードロップに用が有ります。アーリスさんも知っての通り私はアルカロイドを制御したいと思っております。そのために私自身が強力な毒を摂取する必要があります。」
・トリカ「そして私が探し求めている毒こそが
・アルテミシア「以前機関車の中で話していた毒がそれってことなの。」
・トリカ「その通りです。でもひとつ気がかりなことが……
・グラジオラス「なんだかきな臭いな。」
・トリカ「ですね。」
・アーリス「よし!!みんなの目的もはっきりしたことだし改めて出発しよう!!」
そこにフェイとジョアがやってきた。
・フェイ「そろそろ行くのじゃな。」
・アルテミシア「フェイおじいさんホントにありがとうなの。」
・フェイ「なに、久々に外のことも知れたし、何より賑やかで楽しかったのじゃ。ハーブにもよろしく伝えておいてくれ。」
・アルテミシア「分かったなの。おばあちゃんもきっと喜ぶなの。」
ジョアはフェイの後ろに隠れ寂しそうにしていた。
アーリスはそれに気づき、
・アーリス「ジョアもありがとうね!ジョアがみんなを見つけてくれたんだよね。ジョアはオレの命の恩人だ!!」
・ジョア「また遊びに来てくれる?」
・アーリス「うん!!またみんなで遊びに行くよ!!」
ジョアはアーリスに抱きついた。
アーリスはジョアの頭を撫でた。
フェイ「そうじゃ。これを持って行きなさい。」
そう言うとフェイはアーリスに巻物を渡した。
・アーリス「これは?」
・フェイ「地図じゃ。これがあれば比較的安全に黄大陸まで行くことができるじゃろう。」
・アーリス「何から何までありがとう!!」
・フェイ「気をつけるのじゃよ。」
・ジョア「お兄ちゃん!お姉ちゃんまたね!!」
アーリス達はフェイとジョアに別れを告げた。
・ジョア「ばいばーーーーい!!」
アーリス達はフェイとジョアに手を振って洞を後にした。
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