第14話
「世界と日本」の文学、を並置してみて、浮かび上がる陰翳を通じて、理解を深化するという観点からすると、とくに日本語の言語的な特質が、大きなファクターとして、如実に現れるのは自明の理と思います。
漢字という、ユニークで、長い歴史のある表意象形文字と、二種類の和文字。それらが組み合わさられることで、寡黙だが神秘的で淑やかな大和撫子を思わすような?、生き生きとした、それでいて深くて知的な言語、文章が形成されている…それがわたしたちの愛する日本語です。
おそらくは情報科学的に言う”エントロピー”、冗長度がなかなか飽和状態になりにくいという、一瞥して日本語の文章には、そういう印象がある。
言語学的な分類は生半可だが、日本人のコミュニケーションの特質やら社会文化その他に、この言語的な複雑さとか奥深さは色濃く影を落としているとおもわれる。
(たぶんそういう観点の研究でも、類型的な新書とか?無数にあると思う…)
とりわけその嚆矢であり、学術論文とか、儀礼的な手紙とかよりも、コミュニケーションとしての用途よりも”言語藝術”としての美感とか表現の巧みさなどが前景化されるのが文学的文章。
ポエムでも、いやよけいに、そういう傾向は強いので、文学を志向するには、より日本語の特長に敏感で、センスがあって、操作や扱いが技術的に堪能な人物である必要がある…国語の成績が振るわないというタイプとかだとだから文学方面の適性に欠けるとか?まあ誰でもそこらへんには首肯すると思います。
アインシュタインの語彙は300くらいではないかとか助手が言ったという話がある。教師でも、いろんな受け持ちはあるから、ダヴィンチみたいな人でなければ、いろんな科目を高等なレベルで教える専門家になるのは限界があるかもしれない。
自分のことで言うと、日本語の語彙やLiterasyのレベルが平均より、相対的に高いような、そういうところしか、取り柄がないという感じもあって、専門的な教育に生かしうるというところがしかし唯一そこのみには、あるかなあ?とか、もって回った言い回しですが、思える気もする。
実際に教職とかを奉じたわけでないので、あいまいになるが、例えば国文学とかを大学でも教えようとして、絶対不可能かというとそうでもない…ずいぶんいろんな学校やセンセイもいるので大学教諭やれたらなんやねん!ともいえるかもしれないが、生まれつきの資質ではたいして欠損はないという感じです。
で、仮に講座を作るとしたら、そうだなあ…「ある文学者に特有の、好んで使う語彙、比喩表現の分析と、そこから敷衍した作品の傾向、精神の研究」とか、思い付きですが、面白いかもしれない。
吉行淳之介氏は「按配」や「感じ」を多用する。微妙で感覚的な文体とかに呼応している、とか、女流作家の言葉遣いは、だれであれ、やはりどこか平安時代の紫式部とか?そんな雅やかな雰囲気をどこか髣髴させるとか、夏目漱石はユーモラスな漢字の当て字とか、ちょっと人を食ったようなとぼけた言い方を好む…たぶん、沢山の弟子に慕われた、人間味のある暖かな人柄や、”余裕派”と言われるゆえんの学究的理知的な作風の反映?…とかそういうまあ言葉遣いや語彙からの作家研究とか? 面白いかもしれない。
「言葉」自体のニュアンスや表現の分析は、ネイティヴでなければ困難な作業で、それだから深い分析になるという気もする。
ある作家の文体の癖とか、用いる語彙の特長まで、他言語の人にはなかなか把握がむつかしい。比較文学的な作業はもっとむつかしいと思う。
自分なら、そういうカジュアルで微妙だが、かなり深い気もする作品と作家の分析もなしうるという自負もありうるという気もする。
いまのところ、ボクは文学の専門的な研究とかも門外漢で、知識も皆無です。非常に熱心な作家の、たとえば筒井康隆氏の「文学部唯野教授」という著書で読みかじったいろいろな文芸批評のイロハを印象的に知っている程度です。
江藤淳氏の「成熟と喪失」や、「夏目漱石」。あるいは山崎正和氏の「鷗外ー闘う家長」?そういうのがユニークな文芸評論で、代表的な好個の例かもしれない。
技術的な細かい評論、言語表現とかにフォーカスしたような先達の研究とかも、漁ってみたいです。丸谷才一さんやらあまり知らんけど竹田青嗣さんとか?いろんな文芸評論を、この連作のエッセイを書いていて、読書してみたいという機運、モチベーションが湧いてきたです。
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