装甲列車(1/2)
「クソ、やはり連中何かする気だ!」
「ウルフ、輸送拠点です!
そこでこちらのレーダーでも観測可能なほど大きな何かが動きだしました!」
その言葉を聞き、ウルフはカメラを向ける。
そして、映し出されたものに言葉を失った。
大きな倉庫のような建物を突き破って出てきているのは、鋼鉄の鎧のような装甲を身に纏った列車だった。
それは雪を跳ね上げるようにかき上げ、スピードを上げている。
「雪の下に線路があったのか……!
大佐、これは!?」
カメラ映像を共有する大熊は唸るように言った。
「装甲列車だ!
七十年前に廃れた産物のはずなのだがな!」
装甲列車は瓦礫を跳ね除けながら、その全容を表す。
一両目は環境に悪そうな煙を出す機関車で、二両目は対空砲がハリネズミのようについている。三両目からはコンテナ、対空砲、コンテナ……と、交互に並んでいる。
「恐らく、コンテナの中身は軍事物資です!」
「わかっている。
だが、これだけの図体を運ぶ機関車なら」
ウルフはマーベリックAGMのシーカーを起動する。彼の読み通り、機関車は燃えるような高熱を発しており、簡単に遠距離からロックオンすることができた。
ウルフは安全な位置から、ミサイルの行末を見守った。
マーベリックは熱源へと導かれ、機関車に着弾するように見えた。
しかし、その寸前、機関車の上のパトランプのようなものが激しく点灯した。
次の瞬間、ミサイルは急にクルクルと円を描き、あらぬ方向へと飛んでいった。
「!?」
<うおおおお!みたか、コルサック人!>
<まさにアイアン・ジーク!連中は技研の技術の前には爪すら立てられない!>
< 我々は創り、守り、築き上げる!
ベルヌーイ人民のために!未来のために!これが、ベルヌーイ人民重工の誇りだ!>
「クソ、うるさい連中め!」
「大佐、ミサイルが逸れた!」
「ああ、見ていた。
恐らく、シュトラ・アクティブ防御システムだろう。強烈な赤外線と妨害電波でミサイルの誘導を妨害する!
本来は戦車につけるものだが……連中め、機関車につけるとは!」
兵器の専門家、大熊は化け物の鎧の正体を見切った。
「ウルフ、爆弾が一発残っている筈です。 使えませんか!?」
「いや……使えない」
装甲列車は、街の中を爆走するように駆ける。
市民達もその存在を知らなかったようで、人々は散り散りなって逃げている。
爆弾を使えば、彼等を確実に巻き込む。
「ウルフ、落ち着いて聞いてください。
線路が積雪の中に埋もれているため、正確な進路は分かりません。
ですが、列車は北上しているようです。これ以上の追撃はベルヌーイ領にさらに進行することになり、あなたの身が危険です! 」
「分かっている。だが」
<我が進路上に民衆多数!>
<かまうな、元々我が社が引いた線路の上に勝手に居座っているのだ!
不法占領者どもめ!全速前進、鋼鉄号で肉片にしてやれ!>
列車の進路上には、粗末なバラックやテントがある。
あれは住処を失った貧しい人々が身を寄せ合うキャンプだ。
ウルフ自身が、幼少期ああいったところに住んでいた。
そして、何度も軍やならず者たちといった襲撃者に襲われ、それを失ってきた。
それが他人からどんなにボロボロに見えても、大事な家を失ってきたのだ。
列車に向け、ウルフは機関砲を斉射する。
だが、20mm機関砲は、装甲に傷すらつけられず跳ね返され、逆にハリネズミのような57mm主砲、20mm/12.7mm対空砲火を浴び、回避を余儀なくされる。
「クソ!」
「落ち着け、無謀な突撃をしたところで事態は打開できん!」
遠く離れた空のAEWの中、大熊は無線機に向かって叫ぶ。
「止めない!
もう空で後悔はしたくない!」
「止めろとは言っていない、頼れと言っているんだ!」
大熊はコンソールを慌ただしく操作し、グリペンのカメラが捉えた装甲列車の画像をあらゆる角度から分析した。
そして、きっかり一分後、答えを見つけた。
「……57mm主砲だ!
恐らく、火力を上げる為突貫工事で付けたのだろう。主砲の天板の溶接が稚拙だ!
そこは防御がかなり薄い、真上から狙え!」
◇
装甲列車「アイアン・ジーク」
分類: 軍事装甲列車
製造: ベルヌーイ人民重工業
全長: 約120メートル
重量: 約800トン
装甲:
複合装甲: 前面および側面には現代東側戦車と同様の複合装甲が施されており、効果的に対戦車ミサイルや高射砲の弾丸に耐える。アーマーの内側にはハニカム構造の防御層があり、爆発物や重火器の衝撃を吸収する。
アクティブ防御システム: シュトラ・アクティブ防御システムが搭載され、ミサイルや誘導弾に対する防御を強化。強力な赤外線と妨害電波で敵の攻撃精度を低下させる。
主武装:
57mm主砲: 車両の中央部に搭載。高い貫通力を持ち、重装甲目標や敵戦車に対して有効。近距離および中距離での戦闘に対応可能。
20mm機関砲: 各車両に装備され、対空・対歩兵用。広範囲にわたる火力支援を提供し、航空機や小型目標を撃墜する能力を持つ。
12.7mm機関銃:各車両に配備される汎用機関銃。
防御システム:
反応装甲: 前面装甲には反応装甲が使用され、弾薬の着弾時に爆発することで、貫通力のある弾丸やミサイルの威力を削減。
煙幕発生装置: 戦闘時に視界を遮るための煙幕発生装置が装備されており、敵の狙いを外すために使用する。現在、故障につき使用不可。
機動力:
動力源: 高温燃焼機関。強力な動力ユニットにより、装甲列車は雪上でも安定して高速走行が可能。エンジンは高出力であり、長距離の移動も対応できる。
軌道: 冬季環境に対応した特別設計の鋼鉄レール。雪や氷に対する優れた走破性を持つ。
用途:
軍事物資輸送: 装甲列車は重要な軍事物資を安全に運搬するために設計されており、兵器や弾薬の輸送に最適。
特記事項:
七十年前に廃れた技術の復活版。現代戦闘に対応するために高い技術が施されており、最新の防御システムを搭載。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます