子ども軽視の烙印
女性だけの町の住民が過剰反応した存在。
ついさっきも述べたように、それらは魅力的だ。
子どもたちの耳目を集めさせ、感心と歓心を呼ぶ。
子どもだましとかバカにされるが、実際に「子どもだまし」であった存在がどれだけあると言うのか。そしてこれまたさっきと同じ事を言うが、子どもだまし呼ばわりされるだけまだましである。本当の子どもだましは、そう言われる事すらなく消えて行くからだ。
その事が、一部の人間には苦々しくてたまらないらしい。
誰にだって自分の理想はある。
少なくとも私は、自分の書いた本が売れて欲しい。
あ、もし皆さんがこの本を古本屋で買った場合は申し訳ございません。
だが所詮、人間それぞれの理想を実現しようとすればどこかでぶつかり合う。女性だけの町とか言うその理想の権化みたいなそれを扱っている以上、その事実は否も応もなく思い知らされる。
ましてや、子どもと言う名の別人格を相手にしては—————。
その別人格をどう導くか、親と言うのはその仕事をこなさなければならない大変難解なそれである。そしてその理想の答えを、人類は未だに発見できていないしおそらく永遠に発見できない。
自分なりに正解不正解を判断し、その通りにしていくしかない。その過程で転がっている邪魔な小石を排除するのもまた、親の役目だろう。
だがその小石が、子ども本人や子どもたちの仲間にとってダイヤモンドだったら。
それを破棄した存在は子ども本人やその仲間たちから物の価値がわからないと馬鹿にされ、子ども本人も仲間たちから馬鹿にされる。
言うまでもなくプラスにはならない。
私もこの原稿を書くに当たり現在やっているその手のアニメを見たが、面白い。
別に奇をてらっている訳ではなく、しっかりした王道がそこにある。どう説明したらいいかわからないが、確かにこれは大人の鑑賞にも堪える本当の「子ども向け」だった。しかしその過去のそれを知っている側からすると陳腐な二番煎じにも見えるし、昔自分が本当にその戦士になれると思っていた恥ずかしい思い出を刺激されるかもしれないのだろう。
まあこれはもちろん女児向けのそれであり、男児向けのそれについてはまた別軸だ。
そう、
自分が経験して来た、王道でお上品なそれとは違う粗野な世界。殴り合いどころか戦争まで平気で発生し、言うまでもなく言葉も汚い。
さらに言えば、ここ最近女性だけの町の反動により数十年かけて減らして来たはずの「下ネタ」が蘇っている。
小二病(小児病ではない)と言うスラングが存在するように、その手の下ネタはそのぐらいの年齢の子どもにウケがいい。だからこそその事を分かっている人間はそのネタを使うし、二番煎じ三番煎じの子どもだまししかできないような追従者もそのネタを使う。
要するに連鎖と言うか連綿と受け継がれる伝統であり、女児でさえもその流れには乗ってしまう。ただなぜかその手のフィクションにおける女児の下ネタは男児のそれに比べ極めて少なく、男性器の露出や放尿、放屁と言ったその手のネタに比べるとほとんど皆無と言っても過言ではない。男以上にはしたないと言うそしりを受ける事が多かったからとも言えるが、それゆえにフィクションの男児が見せるそれらの姿はとてもショッキングなのだろう。
そして最初に述べたように子どもたちには人気があるから、どうしても夢中になってしまう。自分が知らないと言うか危険物だと認識しているそれが自分の大事な存在を犯しているとなれば、それこそ神経をとがらせるのは当たり前かもしれない。
なおここで「自分だっておむつ替えとかの時に息子の物を見てるだろ」とか「そもそもその手の行為の最終形で自分が生まれ自分の子どもを作ったくせに」とか言う理屈を振りかざすのは、個人的にはピント外れであると考える。それらの問題はあくまでも自分一人のそれであり、子どもと言う他者の問題ではない。
自分が最も大事にすべき存在が自分の想定と違う方向へ行ってしまう恐怖は何にも代えがたいそれであり、その恐怖が高じて反対運動を起こしたと言う話を私は女性だけの町の創始者に聞いた事がある。またその過程で、多くの仲間たちが離れてしまいどんどんと運動は純化、過激化し、最終的にテロ事件と言う名の暴力に至ってしまったと。
それは結局、自分があれほどまで敵視していた存在を大事な大事な子どもたちが案外すんなりと受け入れ、そしてさしたる問題もなく過ごしているという現実が何よりも重たかった。そんな子どもの笑顔を踏みにじってまで自分の正義を叶える事が正しいのか否か、そう考えたメンバーが次々と離脱したと言うのだ。
残ったのは家族よりも自分の正義に耽溺できた存在と、失う家族のない独身女性と、家族総出でそっちの思考に向かっている人間だけ。一番目と二番目は近似種であり家族云々を言うには説得力が乏しく、三番目もあまりにも数が少なすぎた上にあの事件によりテロリスト一家の烙印を押され社会的に孤立した。そんな人間の運動など、どれほどの成果がある訳でもなかったのだ。
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