気弱で冴えないダメリーマン!取引先でまさかの出会い!?

@samabuu

第1話

俺の名前は富田修二28才。うだつの上がらない冴えない営業マンだ。

職場では仕事を取れない俺に対し、同僚の高木がいつもバカにしてくる。


高木「富田ー。俺今日も新規の契約取ってきたよ。今年の社長賞は俺に決まりだな。」

富田「へー、そうなんだ。すごいじゃん。よかったな。」


高木「お前は今月も目標達成できなそうだな。かわいそうに。」

富田「ははは、ほんと口下手だからなー。俺。」


高木「だよなー。俺と違ってうまい嘘つけないもんなー。」

富田「そうなんだよねー。ははは。」


高木「笑ってごまかしてんじゃねーよ!ダメリーマンが!」


片瀬美央「高木さん!言い過ぎですよ!富田さんには富田さんの良さがあるんです。」

高木「み、美央ちゃん!」


彼女の名前は片瀬美央。3つ下の後輩でいつも俺を庇ってくれる。

職場のマドンナ的な存在で実は俺も密かに好意を持っている。

まあ、ダメリーマンの俺にはかなり高値の花だけど...


高木「へー、ちなみにどんな良さ?」

片瀬美央「優しさです。」

高木「ハハハ、優しさかー。確かに優しいね。」

高木「優しいっていうかただ気が弱いだけの気もするけどね。」

片瀬美央「そんなことないです!優しいのと気が弱いのは違います!」

高木「こういうやつはだいたい負けっぱなしの人生を送ってるもんなんだよ。」

片瀬美央「高木さんが富田さんの何を知ってるんですか!」

高木「いやー、過去のことは知らないけどさ。どうせ学生時代は隅っこを歩いてたタイプだろ。」


富田「ははは。」

片瀬美央「富田さんも笑ってないでなにか言い返してくださいよ!」

富田「いや、仕事できないのは事実だから別に大丈夫だよ。」


高木「ほらな。やっぱり気が弱いだけなんだよこいつは!」

高木「まあ、どっちにしても優しさだけで仕事はできないよ。」

高木「俺なんかこの前超大型案件のアポが取れてさ。近々大出世すると思うぜ。」

高木「美央ちゃん、今のうちに俺と付き合っちゃった方が得だよ。」

片瀬美央「お断りします!」

高木「ふーん。まあ、俺はまだ諦めてないからじっくり考えてみてねー。」


高木「あ、そうだ富田!お前3日後の取引先との打ち合わせお前もいくみたいだぞ。」

高木「部長が勉強のために俺の営業トークを見学しろだってよ。」

高木「これ、資料な。まあ、お前が発言する機会なんて無いと思うけどな。ハハハハ!」

富田「おー、そうなんだ。是非行かせてもらうよ。


帰りのエレベーターフロアでたまたま美央ちゃんと一緒になった。

会話をしながら駅まで一緒に帰ることになった。


片瀬美央「富田さん。高木さんの言うことなんか気にしなくていいですからね。」

富田「ははは、大丈夫。気にしてないよ。」

片瀬美央「富田さんには富田さんの良さがあるんです!私には分かります!」

富田「ははは、ありがとう!」

(こんな俺を慰めてくれるなんて、美央ちゃんはほんとにいい子だなぁ。)


打ち合わせ当日、人身事故の影響で電車が大幅に遅延していた。

そのため、打ち合わせに間に合わない状況になってしまった。

同僚の高木に電話で事情を説明し、俺だけ遅れて行くことになった。


先に取引先に到着した高木は、自信満々で取引先の会社に入った。


会議室にて


高木「○○建設の高木と申します。」

西崎「ん?高木?高木じゃねーか!」

高木「へ?」


西崎「俺だよ!中学時代同級生だった西崎だよ!」

高木「に、に、西崎くん!」


取引先の担当者、西崎は高木の中学時代の同級生で元暴走族。西崎はよく高木をいじめていたらしい。


西崎「そっかそっかー。高木が営業担当かー。」

西崎「お前、俺たちが廊下通るときいっつも隅っこに隠れてたもんなー。」

西崎「こりゃ楽に儲けさせてもらえそうだな。」

高木「は、ははは。宜しくお願いします…」


そんな会話の中、俺が遅れて会議室に入ってきた。


富田「この度は打ち合わせに遅れてしまい、大変にご迷惑をおかけしました!」

高木「おせーぞ富田!お客様との打ち合わせに遅れるなんてありえないだろ!もっと謝れ!」

高木「遅延を見越して早く家を出るなんて社会人の常識だろ!」

富田「大変に申し訳ございませんでした。」


西崎「まあまあ、人間なんですからミスもありますよ。」

西崎「顔を上げてください。」

高木「に、西崎さん。大変申し訳ございません。」

高木「こいつほんと仕事できないヤツなんですよ。」


【俺が顔を上げた瞬間、西崎の顔色が変わった。】

西崎「そ、総長!」

富田「え?」

高木「に、西崎さん。総長って?」


西崎「総長だよ!元うちのチームの4代目総長だよ!」

西崎「俺なんか足元にも及ばない伝説の喧嘩屋だ。」


富田「あー!西崎!!…さんじゃないですか。」

西崎「ちょ、ちょっと敬語なんてやめてくださいよ。総長!」

富田「い、いやそれは昔の話であって…今はただのサラリーマンですよ。」

富田「それと、その総長っていう呼び方もやめてください。」

西崎「そうちょ...富田さんが営業担当者さんなんですか?」

富田「いえ、営業担当は高木です。私は勉強のために来させていただいているだけです。」


西崎「…高木。」

高木「は、はい!」

西崎「営業担当…富田さんと変われ。」

高木「え、えー!そんな!無理ですよ!」

西崎「ん?今、俺に逆らった?」

高木「い、いえ!わかりました!変わらせていただきます。」


西崎「そうちょ…富田さん。そういうことになりましたので、是非資料のご説明をお願いできないでしょうか?」

富田「え、わ、わかりました。」


実はもしもの時のために高木に渡された資料は一通り読んで勉強していたのだが、

まさかほんとに俺が説明することになるとは。


西崎「すばらしい!細かいところまで詳細に書かれている素晴らしい資料です。」

西崎「是非、御一緒にお仕事をさせていただきたいと思います。」

富田「あ、ありがとうございます。資料は高木が作ったものなんですけどね。」

西崎「そうなんですね。恐らく富田さんの説明がお上手だったので資料もよく見えたのでしょう。」


無理やりなこじ付けだなと俺は思った。


西崎「一緒にこのプロジェクトを成功させましょう!あと、ほんと敬語やめてください!」

富田「そ、そっか。西崎、ありがとう。俺も精一杯頑張るよ!」

西崎「はい!でも面倒くさい作業とか難しい仕事は高木に全部やらせればいいですからね!」

西崎「高木!お前は総長の手足となって馬車馬みたいに働けよ!」

高木「は、はいー!


富田「い、いやいや俺が担当なんだから俺が頑張るよ。」

西崎「そ、総長!なんとお優しい方なんでしょう!」(うるうる)

高木!全力で総長をフォローしろよ!」

高木「は、はいー!」


次の日。

富田のデスクにて


高木「と、富田くん。い、今までバカにしていてほんとごめんね。」

高木「なんでもするから許して!」

富田「いや、いいよ。今まで通りで。昔のことなんて関係ねーじゃん。」

高木「あ、ありがとう!一緒に頑張ろうね!」

富田「おう。」


こうして俺はプロジェクトのメイン担当者として会社に大きな利益をもたらす仕事を成功させ、社長賞を貰い、出世もした。


同僚の高木はというと、常に俺のご機嫌取りをしてくるようになり、あの傲慢な態度は見る影もなくなっていた。


片瀬美央「高木さん。急に態度変わりましたね。あれだけいばってたのに。なんかすごいかっこ悪い男って感じです。」

富田「ハハハ、まあ確かに。まさかあそこまで変わるとは思わなかったね。」

片瀬美央「でも、富田さんが元暴走族だったなんてほんとビックリしちゃいました。」

富田「ははは、別に隠してたわけじゃなかったんだけど、言うタイミングが無くてさ。」

富田「恐くなっちゃった?」


片瀬美央「いえ、そんなこと無いです。過去がどうであれ私が好きなのは今の富田さんですから。」

富田「え?」


片瀬美央「あーーーー!」

片瀬美央「す、すいません!そういう意味じゃなくて、その、人としてです!」(顔が真っ赤)


富田「み、美央ちゃん!」

片瀬美央「は、はい!」

富田「俺は美央ちゃんを人としても好きだけど、一人の女性として好きだ!」

片瀬美央「え?」

富田「よ、よかったら俺と付き合ってください!」


美央ちゃんの目から一粒の涙がこぼれた。


片瀬美央「...は、はい!私でよければ是非お願いします!」

富田「や、やったー!!!」


5年後、俺は担当者の助力もあり、次々と大きなプロジェクトを成功させ、33才で課長になった。

今では高木も俺の右腕として大活躍してくれている。


さらにプライベートでは、3か月後には新たな命が生まれる。

子供に誇れる親父になるために、これからも全力で頑張るぞ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

気弱で冴えないダメリーマン!取引先でまさかの出会い!? @samabuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る