第8話 夢の価値

 その夢の中で私は少女でした。小説家志望の学生で、朝学校に遅刻しては一限も経たずに中退するということを繰り返す生徒でした。

 その日は行事の役割を取り決める集会が体育館のような広い場所で行われ、私はクラスの後ろの席に遅れて座りました。

 席の隣には、少し恰幅の良い男子生徒が座っていました。私は前に立つ先生らの話を訊いていましたが、何を言っているか一つも理解できていませんでした。そして、提出物があると担任の先生が言いました。担任の先生は私が唯一心を開ける女の先生で、私は私が遅刻魔であり、現在提出部を持ってきて居ないことを指摘されないかととても恐れていました。

 私の番がやってきて、先生の前まで歩いていきました。私は提出物を忘れてきたことの羞恥を隠すためわざと自信満々に忘れたことを言いました。先生は予定調和のように笑顔でそれを許しました。

 しかし、集会が終わると先生が私のもとにやってきて、こう言いました。

「あなたって、中二病じゃないの?」

 それは私が一番恐れていた発言でした。

 小説家志望――それはただの中二病なのではないか。

 私は心が折れました。

 その後、教室で行事の役割分担を行うと先生が言い、私の前の席に座る活発の良い男子生徒が校長先生役がしたいと挙手をしました。

 私は彼のハツラツとした姿に憧憬の眼差しを向けると同時に、ものすごい虚無感が私の胸を突きました。私はとても無力なのだと思ったのです。私はその役に興味などなく、それ自体に価値も認めてませんでしたが、それでもその全体の中に所属出来ていない浮遊感と無力感は私の心を苛めました。


 シーンが移り、私は一人公園にいました。当然のように私に友人はいませんでした。公園には五・六人の男子生徒の集まりがバスケをしていて、その中には隣の席だった男の子が居ました。

 私が一人彼らを眺めていると、その男の子が私の方へよってきて「どうしたの?」と訊いてきました。

 私は遠慮がちに答えましたが、男の子は私と二人だけでバスケをしようと言いました。私は運動が下手でしたが、それに賛同しました。彼はボールを上手く跳ねさせることが出来ない私に丁寧な指導をしました。彼とのバスケはとても楽しく、このような時間がいつまでも続けばいいのにと思いました。

 気づけば、夕暮れがやってきて、彼の友達が「おい、そろそろ行くぞ」と声をかけてくる時間でした。

 私はハッとして、彼も「ああ、今行く」と私の元から離れていきました。私は彼を追いかけようとして、辞めました。


 私はその男の子に恋をしていると、家に帰り妹に話しました。すると、妹はこう言いました。「あの人はやめたほうが良いよ。私もあの人と付き合ったことがあるし、他にもいろんな女に手を出してるから」

 私は大層驚きましたが、それでも良いかな、と思いました。


 夢はここで終わります。

 この夢は、私が現実で見た本物の夢の内容です。

 アドラー心理学では、夢の内容はその時の心の状態を表したものである、と言います。実際、この夢には私が欲しいもの、理想としているもの、私が恐れている言葉が出てきました。 

 あなたの夢も、きっと何か意味があるはずです。

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