第2話 黒沼の魔女
暗い
ただただ暗い水底に横たわっている感覚。
随分と長いこと光や音を感じていない。
時間もなく、欲もない。
ただ空しい気泡のような感情が現れては形を成す前に消えていく。
無念、そう無念なのだ。
あの時に戻れ…
誰か助け…
背中の楔が抜け…
許してくだ…
裏切り者に死…
我が手に再びの機会を…
とある女がいた。
その女は細い体に夜が溶け込んだような黒いローブと大きな帽子を目深に被っている。
細い腕には高価そうな赤色の宝石を埋め込んだ杖がある。
彼女は黒沼の魔女と呼ばれていた。
本人曰く「周りが勝手にそう呼んだだけ、私はただの学者さ」だそうだ。
黒沼は謎が多いことで知られるこの地域の禁足地。
最奥には人智を超えた宝がある、一度入れば二度と出てこられない、黒沼には魔女が住んでいて迷い込んだ旅人を食らっているなどなど噂が絶えない。
黒沼の魔女、名前はダルムヘルのルシア。
ルシアは薬の材料を求めて近くの森を歩いていた。
学者とは未知を既知とするのが本分である故にいつもと違う道を歩いていた。
「この辺りは日当たりも悪ければ風通しも悪い、珍しい毒茸の一つでもあればいい方か」そんな独り言をつぶやきながら歩いていると洞窟が見えてきた。
「ゴブリンのトーテムもなければ野党、獣の痕跡もない…疼くじゃあないか」そこに未知があれば好奇心がくすぐられるのは学者の性であろう。
杖に意識を傾け呪文を唱える、魔法とは一種の祈りなのだ。
それは暗い道を照らす魔法。
杖の先端が光に包まれ松明の代わりとなる。
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