第5話 遊園地2

 そして昼食後、俺たちは早速、ゴーカートに向かって行く。


「これからも楽しみなのです。早速、乗るのです!!」


 そう言ってはしゃぐ夢葉。

 順番はまだだが、夢葉は「わくわく、わくわくなのです!」


 そう、元気にはしゃいでいる。


 その様子はもうテンションマックスとでも形容できるような様子だ。


「もうそんな様子では、最後まで持たないぞ」

「うぅ、それは分かっているのですよ」

「なら少しだけ落ち着きながら、列に並ぼうぜ」

「分かったのです」


 そして、列に並んでいる間、野球が現在リアルタイムでやっていることに気付き、一緒に見ることにした。


 スマホの野球中継を見ると、ツーアウト三塁で静岡のチャンスだった。


「あ、夢葉の好きな宇田川選手だぞ」

「ええ、そうなのです。打ってくれると嬉しいのです。ホームラン期待なのですっ!」


 だが、宇田川選手は、ショート方面の平凡なゴロを打ってしまった。

 余裕でアウトだ。


「あーくそ」

「先制点のチャンスだったのに……悔しいのです」

「ああ、チャンスだったのにな」


 そして、野球を見ながら待つこと15分、ついに順番が来た。来たのだが……


「来たのです」

「ああ、そうだな」


 ピッチャーの宇佐美投手が二点タイムリーを含む三点を取られてすっかりお通やモードだ。


「こんなことになるなら、野球見なかったらよかったのです……」


 そう、夢葉は顔を沈ませる。


「見ても見なくても、三点は入れられてたんだ。だったら、そんなこともう忘れようぜ」

「……はい……なのです」

「それに、GOカートが終わったら四点入ってるかもしれないぞ」

「確かにそうなのかもしれませんね。それを期待するのです!」



 そして、俺たちはカートに乗る。夢葉の運転だ。


「行くのです」


 そして、夢葉が運転する。

 その車はどんどんと速度を増してく。


「夢葉、どんどん速度が増してないか?」


 もしかして、夢葉ってハンドル握るとキャラ変わるのか?


「楽しいのです!!!!」


 さらにテンションが上がる。さっき三点取られて泣いてなかったか?


「お前、ちょっ速すぎ――」

「楽しかったらいいのです!!」


 ああ、安全運転という観念が夢葉から抜け出てしまっている。


 そして、結局夢葉の荒々しい運転を存分に味わった後、


「最高なのです!!」


 そう、楽しそうに言う夢葉。


「俺は疲れたよ」

「ふふ、そういえば野球はどうなっているのですか?」



 そう、夢葉はい俺のスマホをじっと見る。すると、点差は四点に広がっていた。


「あう……なのです」


 現実を見てしまってつらそうな夢葉。


「もう、あきらめた方がよさそうだな」

「そんなこと言わないでほしいのです。まだ終わっていないのです」


 そう、夢葉はあきらめない姿勢を見せる。


「そうだな、あきらめてはいけないな」


 そう俺も頬をたたく。


「だから、野球は置いといて二人で回るのです!!」



 そして、野球のことは置いといて二人で遊園地を回る。

 そんなさなか、野球のスコアが5対0と広まっているのだが、そんな現実は見ることなく、遊園地を堪能していった。


 そしていよいよ最後の観覧車に来た。もう時間的に夕焼けが見える時刻であり、観覧車からの景色が美しいのである。


「ちょっと待ってほしいのです」


 乗り込む前に

 夢葉は写真を撮る。後でSNSにでも投稿するのだろう。


「どう投稿するんだ?」

「こうなのです」


 その内容を見ると、「彼氏と観覧車に乗るのです!」と書いてある。


「なる程な」


 そして、二人で外の景色を見る。隣に座りながら。


「やっぱりいい景色なのです……不思議な気持ちなのですよ。やっぱり俊哉君と一緒にこの夕焼けを見ていることが……」


 そうしみじみという夢葉。


「今日は俊哉君と一緒にここに来られてよかったのです」

「ああ、俺もそう思う。ここに夢葉と一緒に来れてよかった」

「そういってもらえてうれしいのです」


 そう言って顔を赤くする夢葉。それは日の光のせいだとは思わない。


「本当にありがとうなのです。告白を受けてくれて」

「それはこっちのセリフだ。告白してくれてありがとう」

「……俊哉君、一ついいですか?」

「どうした?」


 そういうと、夢葉は恥ずかしそうに言う。


「キスしてもいいですか?」


 その恥ずかしそうな顔は正直見ていてかわいい。なんというか、夢葉の乙女な部分が見れているという感じがした。

 夢葉のSNSのフォロワーもこの顔なんて知らないのだろう。それどころか、夢葉の友達ですらこの顔を知らない。

 そう考えると、なんという優越感なのだろうか。


「分かった。いいぞ」

「ありがとう……なのです」


 そして俺はキスをされる準備をする。

 唇を、夢葉の唇で触れられる準備を。


 すると、頬に唇の感触がした。唇ではなく、頬にだ。


「うぅ、今はこれが限界なのです」



 そういった夢葉は恥ずかしさの権化みたいな顔をしている。

 これでも勇気を振り絞った方なのだろう。


「ありがとう」


 俺はそんな彼女の頭を軽くなでるのであった。




「頂上終わっちゃったのです」


 俺たちがキスをしている間に見逃してしまった。


「そうだな。…もう一回乗るか?」

「そうですね。それがいいのです!!」


 そして、乗り終わった後、もう一度乗った。




「今日は楽しかったのです」

「ああ、本当に楽しかった」

「今日のことは一生思い出に残ると思うのです」

「俺もだ。俺もそう思う。……野球は結局9対1のぼろ負けだけどな」

「うるさいのです、それは忘れてほしいのです」

「はは、そうだな」


 野球のことは今は関係がない。


「俊哉君。また学校でなのです」

「ああ、また学校でな」


 その日の夜、俺は暇つぶしに夢葉の投稿を見る、


 そこに色々な写真があった。俺たちが直接映った写真はない。身バレ防止だろう。

 しっかりと『野球負けたのです。悔しいのです』という投稿もされている。


「はは、夢葉らしい」


 そう感じた。

 さて、こんなに彼氏かっこいい投稿をされていると、なんとなく俺も何か投稿したくなる。


 さて、この『彼氏がイケメンなのです』投稿にリプをしてみるか。


「ありがとう。ドリームグレイス。そう言ってもらえてうれしいよ」


 ちなみにドリームグレイスとは、夢葉のアカウント名だ。


 そしたら、数分でリプが付く。


「ええ!? 彼氏登場!?」「いや、偽物だろ。どうせインプレ稼ぎしたいだけだろ」「本人だったら熱いな」

「でも、よく見てみろ。フォロバもらってるぞ」


 そんな感じだ。一つ変なリプがあるが、そんなことを一々気にしてたらだめだな。



「あ、彼氏君ありがとうなのです」


 あ、これで俺が本物であることが確定したな。

 ちなみに俺のアカウント名は名無しとなっている。


「あの時リプは嫌と言いながらリプしてるのです。やっぱりリプしたくなったのですか?」

「そうだな。気になってきた」

「ふふ、それはよかったのです。もっと話すのです」

「おい、それはラインでいいだろ」

「それはそうなのですけど、ここで話すのも楽しくないのですか? それに私達の仲の良さを見せつけられるのです」

「まあ、そうだけども」

「だから話すのです!!」


 しかしやっぱり怖いのはこういったリプに五百いいねとかついていることだ。

 いいね稼ぐのって大変じゃねえの。

 俺のちまちまやっているゲーム用アカウントはいいねはさいこうでも121いいねくらいだった。


 そしていつのまにかフォロワーが三百人になってるし。本アカよりも増えてるんだが。


「なあ、ドリームグレイス。フォロワーが増えてて怖いんだが」

「ふふ、私のおかげなのです。感謝するのです」

「いや、別にフォロワーが欲しいわけではないんだが」

「でも、フォロワーの良さは自信にもなるのですよ。もらっておいて損はないのですよ」

「そうか」


 そういう事なら別にいいのか。


 そして、そのあとSNSにて彼女と軽く話して寝た。

 その全部に三桁のいいねがついていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

語尾なのですの彼女が今日も可愛い件について 有原優 @yurihara12

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画