第5話 さて、ほのかさん


「ほのか、そこにお座りなさい」

「はいっ!」


 流石にやりすぎのほのかに、お説教タイムである。


「さて、ほのかさん」

「はいっ!」


 ガッツポーズをしながらの返事はやめなさい、可愛いじゃないか。あああ! そうじゃない! お兄ちゃんは今から本気でお説教しちゃうんだから!


「元気がよろしいっ! ……じゃなくて、ニコニコしても可愛く返事しても、癒されてほっこりしたりしないんだからねっ!」

「はいっ!」


 くうう、やっぱりダメだ。ほのかがあっという間に作り出したマイナスイオンのほのぼの空間に、力が抜けていく。僕、本当にほのかと葛には甘々なんだよなあ……。


 でも、ここは気合いだ。ほのかが悪ふざけをし過ぎたと言えよう。あんな事を当たり前のようにするようになったら、僕の心と体が耐えられません。昔から僕にべったりな所があったけど、成長してからは破壊力が増している。


 お兄ちゃん専用って響きはとても甘美だ。ファンタジー物と同じくらいラノベも好きな僕にとっては、現実でそういう風に言ってくれる妹分がいるだけで奇跡のようなものだ。


 しかもだ。何故かは知らんがいつもは黒縁伊達眼鏡と前髪で見せないようにがっちがちにガードしてるけど、眼鏡を外したらたらアニメのヒロインやアイドル顔負けの美少女の降臨である。


 でも、だからこそ。


 それだからこそ、この環境に甘んじることなく自分を律しなければいけないと昔から思っている。二人がどんどん幸せになっていく姿を特等席で見るのが僕の役目だし、困った事や助けが必要な時は僕の全力でサポートするつもりだ。


 そんなほのかが昔みたいにじゃれついてくるのは正直嬉しいけれど……良くない事は良くないってちゃんと言ってあげるのは僕の役目でもある。手を繋いだりハグされたり添い寝されたりよしよしってされたりは未来の彼氏に譲らなければ……あれ? 僕かなり甘やかされてない?


 ご、ごほん。

 それは置いといて、本題だ。


「なあ、ほのか。無警戒にお兄ちゃんに……は、肌を! そう、体の一部をっ! 見せるのはやめなさい!」

「えっ? ほのかはお兄ちゃんだから報告しただけだよ?」

「だ・か・ら! スカートを捲り上げるな!」

「ふんぬぬぬぬぬっ……お兄ちゃんのイジワル! ほのか、いつでもばっちこいなのにぃ! もう少しであんあんできるのに!」

「話が始まんねえ!」


 いや、待て!

 僕慌てすぎだろ!


 また元の流れに戻されそうだ。

 落ち着け、大事な所だぞ?


 何がもう少しであんあんなのかはここで聞いちゃいけないやつだろう。ほのかの話題に乗っかってはいけないのだ。いやいやもしかしたらあんまんの聞き間違いかもしれないし、すぐにエロに結び付けたらダメだ。


 ……あの、ゴソゴソと太もも動かすのやめて。そんな切なそうな顔しないで下さい! お兄ちゃんをそんな目で見たらアカンがな!


「ほのか! いい加減にしなさい!」

「ほのかの気持ちわかってないくせに! べー」


 あっかんべえされました、可愛いけど。しかし……全くもってペースがつかめない。ほのかのターンのままじゃないか。


 ダメだ、このままじゃ僕のにもなし崩しになってしまう。家族として適度な距離を取るだけだろ? 寂しいとか考えてんじゃねえよ、行け! 行け行け行け僕!


「ほのか、最近スキンシップ多すぎ! お互い子供じゃないんだし、お兄ちゃんだって男なんだぞ! そういうのはいつか好きな人ができるまで取っときなさい!」

「…………かっちーん。あったまきた」


 げしっ!


 あ、やべ。ほのかさん眼鏡外したよ。この流れでほのかが眼鏡を外すと経験上ヤバイ、というかほのか超膨れっ面してる。初手からしくじっただと?!

 

「ほ、ほのかさん?」

「かくなる上はっ!」

「ちょっと待って! 今僕のターンだってば!」


 これ、こないだと一緒の流れじゃないか!


「オシオキです!」

「いやああああああああああ!」

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