第2話 馬鹿者でした。


「よっし! マウント☆」

「いやマウント☆、じゃないから! とってもエロい感じだからやめなさい! 太もも隠しなさい! 下着見えちゃうって!」

「だいじょぶだいじょぶ! スパッツ履いてるし、ほらっ!」


 僕的には密着感が全然大丈夫じゃないけどな! 全くもう、いつもそうやって僕をからかって……あれ?


「おおい、ほのか!」

「スパッツ、引き締まって見えるでしょ~! えへへ♪」

「どこが履いてんだよ! くっ!」

「お兄ちゃん興奮しちゃったの? うりうり☆うりうり☆」 

「見てない! 見てないからな?!」


 スパッツ、履いてないじゃないか!


 いや、ほのかが勘違いして白のスパッツかショートパンツを履いて来た可能性も……もう一度確認、いやダメダメ!


 最近ほのかと葛が入り浸ってるからそっち系の動画見れてないのお! 今日の夜一人っきりになれるならまだしも、パトスが溜まりに溜まってる今はヤバいんだ! 刺激しないでえ!


 でも。

 でもお!


 シャツごとめくり上げたスカートの中から必死に目を反らして見なかった事にしても、この衝撃をどう誤魔化せばいい?!


 すべすべのお腹と、へそ下にリボンのワンポイントをつけた真っ白な下着。華奢だと思っていたほのかからは想像できない、質感のある艶めかしい太もも。


 いや、え?

 いやいや、どう考えても丸見えだろ!


 ほのかは気付いてないのか? いやほのかの事だから確信犯まである。それともこれは夢なのか? 僕はどこで寝落ちした?! 朝起きた瞬間か、いやそれは二度寝だ起きてないじゃないかいやしかし結局のところ答えはどれだどれなんだ!


 …………待てよ?


 これはアレなのか? 馬鹿者には見えないという童話の流れなのか? 夢だとしたら僕の深層意識に何かが働きかけてきている? ここはお前の腕の見せ所だぞ、とか。


 ふふん、手の込んだ真似をしてくれちゃって。僕は妹分のパンチラで慌てたりしないぜ、しないんだから! ともかく夢の中その手には乗らん!


 おお、下着を覆うスパッツらしきものが見えてきたぞ。ヒヤヒヤさせてくれちゃって。よしよし、ヒートアップしそうだったいろいろなものが収まってきた、せーふ。


 それにしても随分と薄いスパッツだな。薄い肌色?


「……およ? あっ、暑いから脱いだんだった。えへへ☆」

「えへへ、じゃねえええ!」


 二人とも馬鹿でした。


「丸見えだ! スカート下ろしなさい!」


 まんま下着姿じゃないか!

 しかも何でここでドヤ顔なんだ!


「うりうり☆うりうり☆」

「擦りつけないでえ! ……早くやめて! どいてえ!」


 お尻を押し付けないで!

 何かふにふにするぅ!

 もにょっとした不思議な感触は何なの?!


 や、ヤバい!

 深呼吸!


 落ち着け!

 落ち着け、僕!


 お兄ちゃんは負けないんだからあ!


 すうううううう。

 …………ふ、ううううう。


 すうううううう。

 …………ふ、ううううううううう。


 心頭滅却すれば火もまた涼し。

 火もまた……。


「お兄ちゃんの、硬い腹筋気持ちーの……あ、やあ、やんっ、やっやっやっやっ! ……はあ、はあ、はあっ!」

「エロい声出すなあ!」


 いや、待って待って!

 落ち着いて、僕ぅ!


 アラート鳴ってる! や、ヤバい! いろはにほへと、ちりぬるを! さんてんいちよんいちご、きゅうりにバナナ! 収まってえ!


「あ。お兄ちゃんのお兄ちゃんがツンってした☆」


 ぎゃあああああああ!

 

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