第8話 凶器
DDD
”元気かい?”
孝一
”ああ…ボチボチやっているさ”
DDD
”君に何時かの炎上を鎮火してもらったお礼だ”
孝一
”はぁ? お礼? 何のだ?”
DDD
”憶えていなくても構わない。梓澤 孝一くん”
孝一は、画面を見ていた机から立ち上がる。
「コイツ…」
と、怒りに似た顔をしていた。
DDDは続ける。
DDD
”とある情報を手に入れた。君が大切に思っている甥っ子の高木 正之くんだが…”
孝一
”テメェ! どこまで…”
DDD
”落ち着いてくれ、私の事は後々にして、君の甥っ子の正之くんが…とある住所の情報を与えられて…暴走している”
孝一
”どういう事だ?”
DDD
”何者かは…後で分かるとして…正之くんは自分を…裏切ったと勘違いした推しのVTuberの住所を知って、最悪な”
「クソ!」
と、孝一は部屋から飛び出した。
◇◇◇◇◇
次の日、正之はお金を持ってホームセンターへ行った。
両親が話があるのを無視して、家から飛び出して向かった先。
ホームセンターで刃物を買って、そして、そして
「ボクは、ボクは…」
と、正之の悲しい暴走は止まらない。
◇◇◇◇◇
「上がるぞ!」
と、孝一は正之の家に来る。
母親で孝一の妹が
「兄さん、正之は」
孝一は正之の部屋に駆け上がって
「正之!」
と、ドアを蹴破る。
そこには…正之がいなかった。
妹で正之の母親が
「正之が家から飛び出して…」
孝一は、正之のパソコンがある机を見ると、そこに住所が書かれた一枚の紙が
「正之!!!!!!!!」
と、孝一は住所の場所へ走って行った。
電車や車では間に合わない。
なら…と正之はバイクにまたがって街中を走る。
スマホに書かれた住所を入力してバイクで向かった。
信号無視、交通ルールを無視して走る孝一
それに警察が
◇◇◇◇◇
正之は、例の場所に来た。
息を殺して服の下に刃物を隠して…
そして、例の女性が男性と共に出てきた。
「じゃあ、事務所へ向かいますね」
と、男性が女性に告げる。
女性がお辞儀して
「お願いします」
男性の後ろに続いて女性が。
正之は飛び出して、女性へ向かう。
刃物を取り出して握り締めて
叫びもない、息を潜めて
だが
「正之!!!!!!!!」
孝一が乗ってきたバイクが警察のパトカー付きで現れた。
男性と女性が困惑している。
正之が、女性へ向かって走るが、その間に急ブレーキしたバイクの孝一が入り。
「止めろ、正之!!!!!!!!」
「うああああああああああ!」
正之が叫んで女性に斬りかかろうとするが。
「止めるんだ!」
と、孝一が入って正之を止める。
孝一の左腕に正之の握った刃物が刺さる。
それでも孝一は正之を抱き締めて
「もういい、止めるんだ! 止めるんだ!」
正之が女性に
「佑月ユイ! お前は!!!!!!!!!」
女性が驚愕しているが、その前に男性が盾になる。
孝一のバイク暴走に付いてきた警察は、現状に驚き孝一と共に正之を押さえる方に走り、応援を呼びかけて、多くの警察官達が駆けつけて、大事になった。
正之が
「佑月ユイ! うああああああああああ!」
と、叫んで泣いていた。
泣いている正之を孝一は抱き締めて
「いいんだ。もう、終わろう。いいんだ!」
こうして正之の事は、大きな事件になった。
VTuberを好きだった少年は、堕ちてユニコーンとなり、暴走して推しと勘違いした女性を殺そうとしたが、それを伯父によって止められた。
正之は警察へ。
孝一は、病院で正之に刺された左腕の治療を受けながらベッドで
「はじめまして。梓澤さん」
と、公安の赤城という人が現れる。
孝一は、赤城を見つめて
「普通なら、刑事がくるはずだろう」
孝一だけの個室。
赤城は笑み
「私がDDDだ」
と、告げてスマホをタッチすると孝一のスマホにDDDから連絡が入った。
孝一が呆れた顔で
「公安とは…」
赤城が
「今は、公安の一部だが…将来的にはネット犯罪専門の部署として独立する。君のような人物は…前々からマークしていた」
孝一が俯き加減で
「正之は…どうなる?」
赤城が
「正之くんに被害届けが出された。襲われた側からだ。正之は初犯という事もあるが…事が事だ。良くて保護観察と今後の経過を見るとするなら…日常へは戻れるが。正之くんの態度次第では、入所するかもしれない」
孝一が
「正之と話させてくれないか?」
赤城が
「腕は大丈夫なのか?」
孝一が包帯の左腕を見せ
「幸いにして神経や重要な筋肉、骨は大丈夫だった。明日には退院して、当面は通院だ」
赤城が頷き
「では、明日に」
◇◇◇◇◇
公安の赤城が立会という事で面会時間が長く設定された。
正之が来た。
透明な壁を挟んで孝一が
「正之、どうだ?」
正之が
「ボクは、ボクは、裏切られたんだ…だから」
孝一が真っ直ぐと正之を見つめて
「正之、お前が襲った女性と男性、全く関係ない人達だったぞ」
正之が驚きの顔で
「ウソだ!」
孝一が正之の目を見つめて
「本当だ。お前は偽物の情報を掴まされて…騙された」
正之が
「そんな! だって、声の感じが一緒だったんだ!」
孝一が
「正之、声の感じなんて、似た人はたくさんいるし…配信でそういう風に演じているだけで、現実は違うんだよ」
正之が
「ウソだ! ウソだ!」
孝一が
「本当だ! お前は…無関係な人を襲ったんだ。お前は、無関係な人を殺そうとしたんだ!」
正之が泣きながら
「そんな、そんな…ウソだ」
孝一も泣きながら
「ウソじゃあない。お前は…無関係な人を襲った。偽の情報を鵜呑みにして暴走したんだ」
正之が
「騙したヤツが…」
孝一が
「正之、騙されたお前が悪い。そんな情報なんて誰も信じないし、誰も使わない。正之が間違っていた。バカだったから騙されたんだ。お前自身が悪いんだ」
「うああああ」と正之は受け止められずに号泣する。
孝一が
「だが、幸いにして、キズを負ったのはオレだけだ。正之、一緒に…どうして間違ったのか…考えよう」
涙で崩れている正之が
「ボクは、オジさんを…傷つけて…ボクは…」
孝一が微笑み
「このぐらい、治る。だから…一緒に考えよう。どうして…こうなったのか…を。オジさんが付いているぞ」
正之は号泣し続けた。
そして、取り調べで正之は罪を認めて、捜査は進んだ。
二ヶ月程度、少年鑑別所へ行き、その後…保護観察と共に犯罪を犯した少年専用のメンタルクリニックへ通い、自分の罪と向き合い続ける事になった。
学校は退学、アルバイトの方は孝一と共に説明して、続けさせてくれる事になった。
まだ、若い正之には…未来を閉ざす事をしたくない善意が付いてくれた。
まあ、犠牲者になった孝一が正之の更生を手伝っているのも効いていた。
高校を中退、そして…高校卒業の資格を得る為に通信教育を受けて。
正之は、苦しみ考え続けた。
どうして…間違ってしまったのか…。
自分がどうして…あんなヒドい事をしてしまったのか…。
思い出しただけでも苦しい。
でも、一緒に考えてくれるオジさんがいたから
全てを思い出して、言葉にしていった。
後悔と懺悔を…
自分を見つめて悪い部分を見つけていく、反省という苦痛に襲われても…
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