02 無計画☆神都突貫
——神都クロネスにて。
荘厳な布で仕切られた玉座の前に片膝をつき、2人の天使が神王に報告する。
「…現在。他の神々も連携して、特に支障もなく進行中でございます。」
「ふむ…奴隷の処分も順調か?」
「ええ。それは勿論…」
「…嘘だな。」
指先ひとつでせり上げた岩盤が肉体を貫き、天使の血が布にビシャっと付着した。
「我は嘘が嫌いだ。もう一度問おう。本当に順調なのか?」
「……し、施設の奴隷リストと照らし合わせて1人いない事が確認されていますが、些事であると愚考致します…」
「そうか。報告ごくろう…しかし。我らの道具風情が、主である神に意見したという罰は受けてもらおうか。」
「…っ。」
愚かにも逃げようとした使えない道具を処分して、静かになった玉座で1人思案する。
もしそれがただの奴隷なら、ここまでの警戒はしない。しかし…あり得ないが、『転移神』マキを滅ぼしたという疑惑がある以上、用心するに越した事はない。
…ブーン
その為…天界にも応援を要請して、数多の神々がその施設の破壊に向かっている今…神都は我以外、神がいない無防備の状態だが、天使…道具は数多く残っている。冷静に考えて、奴隷如きが突破出来る訳がない。だがもし地下にあるアレを起動されたら…
ブーーーン!!
いや…これは考え過ぎだろう。それを知るのは我以外…『大神』くらいしか知らない情報だ。
落ち着く為に、奴隷から搾取した果実を食べようと立ち上がろうとしたちょうどその時、布越しで焦った声が聞こえた。
「…神王様!!早く、ここからお逃げ下さい!!!」
「なんだ。騒々しい…一体何が」
起きたんだ。そう言おうとしたが、その声は頭上に落ちてきた鉄塊のような何かの衝突音や肉体がミンチになる音で打ち消されていった。
……
俺は話し声が聞こえて薄目を開ける。感触からして、どうやら何かに腰掛けているらしい。
「…ごめんごめん。決して悪気とかはなかったんだよね〜まさか、神王…『地神』アメスが操作不能になったジェット機の真下にいたなんて誰が想像したよ?ねえ、エクレッピー…今回ばかりは許されないかなっ、かなぁ?」
「私は平等の立場で『中立神』カオス様の代理として、審判をするだけだ。」
「壊れたお城とかなら、私がパパパって直すから…いいんじゃないの?はい!!もう直しましたーこれで私は無実ですぅ〜」
青黒い髪色でメガネをつけた男は無表情でありながら、心なしか呆れているように俺の目には映った。
「確かに被害が神都の建造物だけなら、私が出る幕はなかっただろう。しかし、この一件で負傷した人間や天使、亡くなった『地神』アメス様はいくら『創造神』ユティであっても蘇らせる事は不可能だ。」
「パテパテちゃんなら、出来たろうね。絶対にやろうとはしないだろうけどさ…今頃、元気でやってるかなぁ。」
「『冥神』パティス様は既にいない。それは大神である『創造神』ユティならよく分かっているだろう。審判の途中で話を逸らさないでいただきたいのだが。」
「ぶー…だって、つまんないもん!さっさと寛大でかつ、私が幸せになれる結果だけ教えて欲しいなっ☆」
男は一瞬だけ眉を顰めたが、すぐに元の無表情に戻った。
「不慮の事故とはいえ、『地神』アメス様の殺害…及び神都クロネスへの多大なる被害を被った事を踏まえ…『創造神』ユティに『中立神』カオス様の名の下に『裁定神』エクレールが判決を言い渡す。」
被告人。『創造神』ユティ…貴君は有罪により
【代理人が見つかるまで、『地神』アメス様のしていた役割を全うせよ。】
その言葉を聞いたユティはエメラルド色の目を見開いて、酷く動揺していた。
「…え、嘘……私が?え〜〜〜!!!ヤダヤダヤダヤダぁ!!!エクレケチ、もっとお慈悲をくださいよぉ!?私、大神だよ!!エクレッチよりも偉いんだよ!?!?」
「…断る。何者であろうとも全てにおいて審判は平等に行われる。『創造神』ユティ。神々の繁栄の為、ここで尽力するように。それと…私の名はエクレールだ。」
床に転がって駄々をこねているユティをフル無視して、男…エクレールは去って行ったのを確認してから俺は声をかけた。
「ここに来た時の事といい、お前は何をしてるんだ…」
俺の声に気づいたのか、ユティは飛び起きて俺の方に振り返った。
「……エクレギンの…というか、カオスちんの『審判』はね、一度判決されたら、それに絶対に従わないといけないんだ〜…それに背けばコロッと死んじゃうから。」
「……?」
何言ってんだ、この女神は…いや、は?まさか……嘘だろ。
驚く俺にユティは駆け寄って来てこう言った。
「エクレチオンもまだまだだねぇ。代理人の種族とかちゃんと定義しないなんて…だから、はいっ。私にはこんなのいらないからさ……」
——ラスット。『これ』いる?
俺が脳内で考えていた中で1番の理想を引き当ててて、俺は思わず黄金の玉座から立ち上がっていた。
『神王』の殺害に『神都クロネス』の掌握。
まさか、神都でやりたかった事がこんなにも簡単に達成してしまうとは。しかし……偶然にしては出来すぎていないか?
いいや躊躇うな。俺はたった1人の友に誓ったんだ。
———したい様にやってみろ…俺の分もな。
(ああ。やるだけやってやるよ。何度だって言ってもいい。たとえ…業の道を進むとしてもだ。)
俺は何とか感情を押し殺して言った。
「あ、ああ…貰える物は貰っておこう。」
「よし決まり!!ラスットは今日から神都クロネスの統治者だ☆面白そうだし、私も付き合うよ!!」
楽しそうに俺の手を握ってはしゃぐ姿を見て、俺は今後の策を巡らせる。
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