03 別行動
神都クロネス…『舞台』は手に入れた。
正直な所、かなり拍子抜けだがこれで次の段階に移行出来る。
あの女神が陰で何か企んでいるかもしれないという疑念は未だに晴れないが…まだ、様子を見るとしよう。
……
…
玉座の隠された地下室にて。
「…で、何してるのさラスット。」
「見てわからないのか?」
「私視点だとさ、ただ寝ている裸の少女を視姦してるようにしか見えないけど?」
地下なのに光が通っていて…棺桶の周りには花畑があり蝶が舞っている。これも…神や上位天使が持つ『権能』の力なのだろうか。
「あ…溜まってるの?なら私で発散する??」
「冗談はよしてくれ。俺はただ、人体構造を観察していただけだ。」
「ものは言いようだねぇ…変態♪」
「……。」
———『熾天使』デウス。かつて大神によって創り出された最初の天使にして全ての天使の原型にあたる…神々の最高傑作。『転移神』の部屋に来る度に、そういった文献をちまちまと読んでおいて正解だったな。
「…ん?何かなラスト…やっと私が美人だって気づけたのかにゃ?うん…いいよ///」
「断固として違う。お前は確か大神なんだろ。何か知らないのか…例えば製造方法とか。」
いくら神々の頂点である大神でも、そう簡単に生物をゼロから創り出す事は出来ないのは分かっている。ユティは頭に指を当てて悩んだ素振りを見せてから即答した。
「知らないよ?あの頃は親友だったナカラッチが誰かに暗殺されて、色々あったから…うん。覚えてないっ☆」
ふざけながらも寝ているデウスの長い黒髪を軽く撫でた。その姿がやけに哀愁を漂わせているように見えて…
「あー…ユティ?」
「むむっ、唐突に思い出したよ!!でもさ、それを聞いてどうするのさ?私にも教えてよぉ〜。」
俺の右腕に体を押し付けてきて正直鬱陶しい…しかしながら、俺の計画の一部を女神に言ってしまってもいいのだろうか。こう見えてこれから敵に回す事になる…神々のトップの1人だ。
「……知りたいかユティ。なら教えてやる。」
「わーい!!教えて教えて〜」
計画の一部が露呈する事よりも、さっきの事が心に引っかかっている方が、後々に影響するだろうと…俺は渋々、女神に計画の一部を話した。
「人間を虐げる神や悪魔を一片も残さずこの大陸から追放するか。それで…ふ〜ん成程ね。」
話を聞いた女神は少しだけ距離を取って俺に指先を向けた。
「こんな事…言っちゃあなんだけどさ、その話をしたら、君を私が有無も言わずにサクッと殺しちゃう事とか…思わなかったのかにゃ?」
バーンって。
「そんな事は分かっている。でもそれはあり得ない。」
「ふーん…どうして?」
俺は女神の顔を指差した。
「何故かは知らんが、聞いているお前がとても俺を殺そうとする表情じゃなかったからな。鏡で今の表情を見たらどうだ?」
「ん〜そんな訳ないじゃん。私はいつだって冷静沈着の常識を持つ女神…あっりり〜おっかしいなぁ。」
無から手鏡を創り出してしばらくの間、自分の顔とにらめっこしてから、ニコッと笑いながら俺の方を見た。
「…やっぱり私って超絶美人♪そう思わないかな?」
「知らん。それよりも…出来るかユティ。」
「結論を急かしちゃう男の子は…女の子に嫌われちゃうぞ☆」
「……」
俺の態度がようやく通じたのか、少しだけしゅんとなって答えた。
「出来るよ?でも、その技術を抽出する為には私が直接箱庭の世界に入らないとだから、少しの間ラスト1人ぼっちになるけど…ぼちぼち帰って来る他の神とかにでも見られたら、普通に殺されちゃうんじゃないかな?」
「既に策は練ってある。故にお前は一分一秒でも早くその箱庭の世界とやらに行って来い。」
「え…女神使いが荒いよ?でもそれがまた…いいっ。なんてね☆じゃあ、軽く行ってくる〜」
「…早く戻れよ。俺が死ねば、見たいものも見れなくなるぞ。」
慌てた様子で女神は球体を出現させて姿が歪んだと思ったら…それに吸い込まれるようにして俺の前から消失した。
(……さて。こちらも始めるか。)
俺は震える拳を握りしめながら、地下室を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます