おいおいおいおい
いつもの居酒屋に到着すると、タカと見知らぬ女性2人が席に座っていた。1人は赤髪ショートカットさん、もう1人はふんわり巻いた茶髪さんか、なんだか夢と似たような話だ。
「おせーよ、アホ。」
「すまん。時間がかかりすぎた」
ブーブー言っているタカの隣が空いていたので、言い訳をしながらそこへ座る。
「こっちが俺の彼女の
ふむ、どうやら赤髪のショート女子がくるみちゃん、茶髪のふんわり女子が横田さんらしい。とても綺麗な巻き髪状態だな。
「こんばんは、
「あぁ、いえ。こちらこそ……」
何故くるみさんはタカの事をバカと呼ぶのか、僕には察しがついているがあえて触れないことにしておいた。
「2人とも、こっちが俺のダチの
当の本人はそう呼ばれるのが日常茶飯事かのように流している。いや、ただ単に気づいていないだけなのか?というか、コウちゃんってなんだ。僕はお前からそんなあだ名一度も呼ばれたことがないぞ。
「な?コウちゃん。」
「うわ気持ち悪。」
「ヒドイなぁ〜コウちゃんは」
「マジでやめろバカ!」
タカとぐたぐた言い合っているうちに声が聞こえた。
「ふふ、コウさん。いいお名前ですね」
突然の事に僕は動揺してしまう。今までにこにこ顔で席に座っていた横田さんが口を開いたんだ。くすくすと笑うその小さな口元から発せられる声はあまりにも可憐で愛おしく、小動物のような人だった。こつん、とタカが僕を小突く。やめろ、『お前もなにか言ってあげろよ』と言いたげな目で僕を見るな。
「え、えぇっと…とっ、とあさん」
最悪だ。女性の名前なんてろくに呼んだ事が無いせいでたじたじになってしまった。このままではただの冴えない男というレッテルが貼られてしまう、考えるんだ僕。何かいい名を出せっ!
その時、タカが声を大にして笑った。
「くはっ、航太お前っ…とあちーの事っ…くくくっ、とあさんなんて…ふ、ふはははっ。あー、超おもしれぇ。」
「う、うるさい!大体なんだそのあだ名は!コウちゃんなんてお前1度も言った事無いだろ!?」
「今さっき言いました〜!」
すかさずくるみさんが口を挟む
「こらバカタカ、ごめんなさい。」
「ごめんなさい。」
「潔いなお前!」
「んふふ、あはははっ。」
僕らの掛け合いを見ていたとあさんが声を上げて笑う。この人はなんというか、ツボが浅いというか、すぐ笑う人だ。笑う度に白い歯が覗いてどきどきする、ふわふわした茶髪が動いてドギマギする。タカ達と解散する時には僕の心はとあさんに鷲掴みにされていた。
────────
「じゃーな、航太!」
「またな、貴之。」
いつもの台詞をタカに吐いて帰路に着く。3人とも僕と真反対に家があるらしい。楽しかった余韻に浸りながらスマホを弄る。人混みに紛れながら駅へ向かい、電車に乗ってまた人混みに紛れる。家へ着きドアを開けて靴を脱ごうとしていた時だった。
「おう、遅かったじゃねぇか。」
!?
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