かかくのあらそい

家に帰ってドアを閉めると眼前が白く光った後、大きな音が轟いた。どうやら近くで雷が鳴ったみたいだ。全く、僕の家の近くには雨男(もしくは雨女)がいるらしい。とんだ困りものだな、と思いながら濡れに濡れたダンボール箱からかたつむりを取り出すと僕はすぐさま買ってきた虫かごの中に入れた。生憎オーソドックスな蛍光緑が無かったので赤色で我慢したが、これはこれで映える。僕の家はミニマリストかと思うほど何も無く、華を添えるには良い機会だった。さて、早速だが名前をつけよう。そうだな……青色吐息とかどうだろうか。死にそうだったお前にピッタリだと思う。それか四苦八苦、虫の息、意気消沈…ダメだ、マイナスイメージしか浮かんでこない。ここは視点を変えてみよう。見つけた道がコンクリートだったし、コンクリート伯爵はどうだろうか?かたつむりには性別はないし、オスとして通るだろう。だがどうもしっくり来ないな。こうなれば連想ゲームだ、近くにあった枯葉から連想してみよう。枯葉…燃やす…火…カル…いやダメだ。危うく訴えられるところだった。もうここは誇らしき我が親友のタカユキくんに相談してみるとしよう。

ジャラララ、とコールが3回きっちり鳴る

「何の用だ、金は貸さないぞ」

「いつ僕が金を貸してほしいと頼んだ?!」

「はは、冗談だって」

「全く冗談に聞こえないが…?まぁいいや、お前ペットに名前をつけるならどんな名前にする?」

「ペットだろー?うーんと…」

いい返事を期待しているぞ、タカ。

「コンクリート伯爵」

「何で僕と同じ思考回路なんだ貴様はっ!!」

「お前が聞いてきたんだろうが!」

「あぁ、もう。お前に返事を期待した僕が馬鹿だった。じゃあな、タカ」

「後で焼き鳥食おうな」

そうだな、と適当に返事をしながら電話を切る。本当にあいつは阿呆な奴だ。阿呆で馬鹿で、のろまで愚鈍。親友をこんなにも下卑するのは心苦しいが、事実なのだ。だがそれこそあいつが愛される魅力の一つなのだろう。その証拠にタカには彼女がいる。名前は…くるみさんと言ったっけな。タカ曰く気が強いらしいが、告ったのは向こうらしい。なんでも、タカのその馬鹿さに惹かれたとか。世の中は不幸だ。そういえばかたつむりはお腹が空くのか?そろそろご飯をあげるべきなのだろうか。かたつむりの主食はなんだろう、そう思い僕はスマートフォンで検索すると「枯葉」と出た。まぁ今日はダンボール内の枯葉で過ごせるだろう。明日は休みだし公園にでも行って拾いに行くか。SDGsと言うやつだ。社会に貢献なんて初めてする、きっと気持ちがいいのだろうと思いながら早めにご飯を食べて風呂に入り、きちんと歯磨きして眠りについた。

その夜、僕は夢を見た

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