梅雨、ダンボール箱の中に居たのはイヌでもネコでもペガサスでもなくカタツムリだった。

羊谷光尾

つむりのこと

今日も雨がしゃらしゃらと降っている。6月なので仕方の無い事なのだが、こうも湿気が溜まるとうざったい。お気に入りの曲を聴きながら大学から帰る途中、僕は視界の端に異質な物を見つけた。

「なんだこれ……拾ってください?」

無機質なダンボールが置いてあった。

漫画やアニメでよくある展開、不良が捨てられた子猫を拾うようなシーンは僕も何度も見てきた。だが僕は髪を染めるほどの度胸も持ち合わせてないし「お前も独りぼっちか…」なんて歯が浮くようなサムい台詞は吐きたくない、というか吐けるわけがない。だからといってここで動物を見殺しにするのは僕の道徳モラルに反するので中を覗いてみることにした。まぁここは子猫がベタだろうと踏んでいた僕だったが、どうやら予想は外れたらしい。

「かた…つむり?」

一瞬何も入っていないと勘違いしたものの、ちゃんと居た。かたつむりが。元いた動物が脱走したのかと思ったが、どうやらそうでは無いらしい。食べ物と思しきものはなく、枯葉が数枚置いてあるだけだった。ベッドもない、ただかたつむりと枯葉が同居しているだけ。しかしかたつむりか、かたつむり…見捨てることは可能だが、僕の道徳モラルは「動物を大切に」だ。かたつむりなら動物の範疇に入るし、餌代はあまり金が掛からないと聞く。ならギリギリ大丈夫か?友人にかたつむりを飼っていると話しても白い目で見られることは無いはずだ。なにかの機転で女子ムチムチお姉さんからカッコイイ〜ともてはやされるのも時間の問題だろう。よし、決めた飼おう。

こうして僕はかたつむりとの共同生活を始めた

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