雨男(2)
「ミズホどうしよう…」
僕は一緒に下校しているミズホに不安そうに言った。
「しっかりしなさいよ。あなた男でしょ」
ミズホはランドセル越しに僕の背中を叩いた。
「調査って言っても何をすればいいか分からないし、僕一人じゃあまりにも荷が重すぎる」
「そんなことならあの宗教集団に入らなきゃ良かったじゃない」
宗教集団というのはFTDのことだ。ミズホはあの会をよくそう蔑称する。
「だって、ハザマさんの勧誘の圧がすごくて…。僕って押しに弱いんだよ」
そして僕は疑問に思ったことを言った。
「というか、ミズホはどうしてFTDになんて入ったの?」
ミズホはギクッと肩を震わせてドギマギした様子をみせた。
「わ、私は一人で帰るのが寂し…いや、そうよ。あんな胡散臭い集団の闇を暴いてやろうと思ったの。要はジゼンカツドウよ! シャカイホウシってやつ! よく赤い羽根募金とかでボランティアとかするじゃない? あれと同じことをしようと思っただけよ」
彼女は早口でペラペラと話した。正直何を言っているかチンプンカンプンだったけど、何だかんだでFTDに興味があるんだろうと思った。
「ミズホは僕と違ってしっかりしているね」
「当たり前よ。私は色々考えているんだから」
平静を取り戻したミズホは僕にドヤッてみせた。
僕は再び調査のことについて考えて深いため息をついた。
「そんなに嫌ならあんな会、サボっちゃえば良いのよ」
「でもせっかく任されたからには最後までやらなきゃ…」
「変なところで責任感が強いんだから」
ミズホは僕の前を歩き、しばらくするとじれったそうにして振り向いて言った。
「私がサトウの助手になってあげるわ。これであなたも少しは楽になるでしょ」
「えっほんと?」
「もう、あなたを見ていると歯がゆくて仕方ないわ。本当にサトウって私がいないとダメね」
彼女は照れ臭そうにそっぽを向いた。
「嬉しい。やっぱりミズホって頼りになるよ」
僕は目を輝かせて彼女の肩を掴むとミズホは顔を赤面させて振り払った。
「別に特別な感情があるからサトウに協力するって訳ではなくて、サトウが辛そうな顔をすると私まで辛くなっちゃうっていうか…じゃなくてサトウのお母さんからあなたの面倒を見てくれって頼まれているから仕方なくだから!」
ミズホは通学帽で顔を隠して「こっち向くな」と言って僕を押しのけた。
僕の心の重荷が随分と和らいだ気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます