FTD調査録
お茶の間ぽんこ
雨男(1)
※「赤色」「少年」「雨」の三題噺
―――――――――――――――――
◆ 不可思議調査団(FTD:Fukasigi Tyousa Dan) メンバー
・長谷川博一(六年生)…団長。独特の雰囲気があり、そして寝ぐせが目立つ。
・狭間芳樹(六年生)…副団長。何かと顔が広い。校内新聞(非公式)を作っている。
・春乃上真帆(六年生)…団員。上級生の中でまとも(?)で頼りになる。長谷川のことが好き。
・佐藤太郎(五年生)…団員。今作の主人公。至って平凡な人間だが、よく不運に見舞われる。
・高峰瑞穂(五年生)…団員。佐藤と幼なじみ。容姿端麗でモテるが平凡な佐藤のことが好き。
・餅田丸夫(五年生)…団員。よくお菓子を持ってきて怒られている。買い食いが大好き。
―――――――――――――――――
「これより調査報告会を始めたいと思います」
放課後、僕たちは誰もいない六年生の教室で机を囲って椅子に座り、会議を始めた。
「まず先週の宿題であった『神隠し神社』の件について、ハルノ、どうでしたか」
会議を仰々しく進めるハザマさんがハルノさんに話を振った。
「全く進展がないわ。どうしたら神隠しにあうかについて私自らが神社に行って試してきたのだけれど。鳥居を五回くぐり抜けるとか、お賽銭を入れずにお参りをしてみても神隠しにあわなかったし」
ハルノさんはそう言ってため息をついた。
「あの、すみません。神隠し神社って、何でしたっけ」
マルオがポテチを摘まんだ指の脂を舐めながら質問する。
「マルオ君! 君は先週何を聞いていたんだい⁉ FTDの団員としての面汚しだよ」
ハザマさんがマルオからポテチを取り上げた。
「まあそんなに怒るほどでもないんじゃないの。五年生の皆は最近入ってきたばっかりだし。神隠し神社っていうのはこの町で有名な七不思議の一つなの。どういうわけか、そこで遊んでいた子どもが消えてしまうということが一年に数回あってね」
「それで先月も子どもが神隠しにあったんでハルノに調査をお願いしたんだ! 全くマルオ君は食べることしか頭にないのかい」
ハザマさんが取り上げたポテチを自分の物のように食べながらマルオを怒った。
「そういえば今日の給食、揚げパンでしたね。実はこっそり三個ほどくすめてきたんですが、皆さんいります?」
マルオが手提げ袋に腕を突っ込んでしなしなの揚げパンを取り出した。全員がマルオを軽蔑するような眼で彼を見た。
「オッケー、ありがとうハルノ。では今度は神隠しにあった子どもたちの共通点について引き続き調査をお願いするよ」
ハセさんはマルオを無視してハルノさんにお願いした。
「うん。良ければだけど…ハセも一緒に調査してもらえないかしら」彼女は少し恥ずかしがりながらハセさんに言った。
「どうしたんだい? 別に危険なことを要求しているわけではないし、君一人で問題ないだろう」
ハセさんは頭を掻きながらあくびをして言う。
「そうだけど…。いや、別に大丈夫。また進展があったら言うね」
ハルノさんは残念そうに俯いた。
「そういえば最近『雨男』の噂が出回っているのを皆知っているかい?」
ハザマさんが完全に「です・ます」口調をやめて話し始めた。
「雨男って子どもが殺される連続殺人事件のアレですか」ミズホが聞き返した。
「そうそう。雨宿りしている子どものもとに男がやってきて殺しちゃうらしい。男の正体は殺された子どもしか分からないから何にも手がかりがないんだけど」
「それは怖いですねえ」マルオは揚げパンを口に含みながら他人事のように言った。
「何を言ってるんだい。これはFTDが有名になるチャンスなんだよ。雨男の正体を暴いて校内で号外を出すんだ。そうすればこの会はより賞賛される! ですよねハセさん⁉」
「別にこの会の胡散臭さを払拭したいわけではないけれど、確かにその雨男の話は純粋に興味がある。我々でも調査しよう」
ハセさんはそう言って僕の方に目を向けた。
僕はキョトンとした。
「どうして僕を見るんですか?」
そう言うとハザマさんがチッチッと指を振った。
「分かってないなサトウ君。君はハセから期待されているんだよ。そうこれは遠回しの命令だ。君が雨男の調査をするんだ」
「僕が⁉」
「ちょっとハセ。これって危険なんじゃない。あんまり深入りするとサトウくんも…」
ハルノさんが気を利かせて止めようとした。
「大丈夫さ。サトウ君は一見平凡だけれど、彼には心強い守護霊が宿っている。僕はそう感じるんだ」ハセさんはジッと僕の方を見つめる。
「えっ、ハセさんって霊感があるんですか?」マルオが暢気に聞いた。
「いや、僕はそういった能力はないけど、僕の勘がそう言っている」
「後輩に危ないことを頼めないわ」ハルノさんが食い下がった。
「僕の勘って、何だかんだ言ってよく当たるのをハルノは知っているだろう」
ハセさんはハルノさんの手を両手で包んで言った。
「まあ、ハセがそこまで言うなら…」彼女はハセさんに絆された。
「ということで決まりだね。今日から雨男調査員としてサトウ君、お願いね」
ハセさんはそう言って「これは楽しくなるぞ」と呟いた。
こうして僕は雨男の調査を任されたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます