第3話 俺という人間の輪郭。

「は?今何て?」

「だかーらーあなたの彼女、アヤですけど~」

脳みそがバグったのかと思ったが現実だったらしい。


俺はギャル風のサラという女と付き合っていたらしい。

が、今俺の彼女を自称する新しい女が出てきた。


待て待て整理しよう。

考えれる可能性はこうだ。


1俺は最低の人間で複数の人間と浮気関係にある。

2サラかアヤどちらかがやべえ女で嘘をついてる。


後者だと思う。俺はそもそも女に差ほど興味を示せれる人間ではないはずだ。

省エネ、女よりもゲーム!セックスよりも飯!恋愛はゲームで!

それが俺だ。


そんな俺が二股?ありえない。



俺はジョジョ立ちをしながら甲高い声で

「お前嘘付いてるなッ!俺にはもうサラという彼女がいる!」

「すっご!ジョセフに盗撮されたときのディオじゃないっすか~wてか、サラって新しい推しっすか?見せてくださいよぉ~何のキャラっすか~?」

埒が明かない。


俺はアヤに今の俺の置かれているの状況を簡潔に伝えた。


「マジっすか~漫画みたいっすね~面白え~」

軽っる。

「てか、先輩は二股とかするキャラじゃないんでぇ多分そのサラって奴が嘘付いてるっすねぇ~」

仮にアヤとサラ、どちらかが嘘をついてるとしてメリットは何だ?

どちらかが俺のことが好きだったが、彼女がいて諦めていた。しかし記憶喪失に漬け込んで付き合ったことにしている。


しかしその場合アヤもサラも記憶喪失であるという事を事前に知っておく必要がある。


俺が記憶喪失になったとどうやって知る?

無理。偶然の事故を予め知っておくなど不可能。



信じられないが、もしこの仮説が正しければ記憶喪失はアヤやサラどちらかが意図的に引き起こした可能性が出てくる。もしくはアヤとサラが記憶喪失であるという情報を知った瞬間、一瞬で状況を飲み込んで俺を彼氏だと思いこませるような演技をしてる。

いや両方ありえねえ。


第一交際してることは他人が証人になってるはずだ。共通の知り合いがコイツとコイツが付き合っていると知っている。すぐバレる嘘を付く意味なんてあるのか?


考えが錯綜している。


でも、かといって俺が二股をしてるとも思えない。


「アヤさん、すまんが外でサラが待ってる。会って話してみてくれないか?」

「全然いいっすよぉ~リョースケさんの彼女は私ですから~」


会合。


事情を説明していけばいく程サラの顔が曇っていく。


「アンタ浮気したの?」

「いや、記憶ねえから俺。つうか俺ってそういうのしねえ感じじゃね?」

「そっすよ。リョースケさんは一人の女の子すらほっとくんですから複数の女性愛弟できるわけないじゃないですかぁ~」

「アンタ、リョースケのこと分かってないのね。コイツは確かに他人に対して面倒にならない程度にエネルギーを使わない生き方をしてる。でもね、エネルギーを使わないってなるとコイツは二股するわ。欲望には忠実だもの。」

「というと?」

「早い話、コイツは都合のいい女がいれば浮気をする人間。」

「確かに」

サラの俺への解像度の高さに感心してしまった。


アヤはそれはないといった風に手を振りながら否定する。

「いやぁ~都合のいい女だとしてもリョースケさんは浮気しないと思いますよ。リョースケさんなら浮気をした後の事を考えます。もし私に浮気がバレたら、もし浮気相手が途中で本気になったら。そういうリスクも計算して面倒くさいという結論に至ると思います。」

「確かに」

アヤも解像度たっけ。どんだけ俺の事この二人理解してるんだ!?

二人の間に火花が散る。


二人の様子を見てある考えが浮かんだ。


「なぁ、サラ俺と初めてであった場所は?」

「高校2年の時。隣の席になってから。」

「アヤは?」

「私が高校三年生で、先輩が通ってた塾でバイトしてて」


「やっぱりか。」

俺は確信した。この矛盾。二人の俺に対する解像度の高さ。俺という人間の性格。

記憶喪失。二人のどちらかが悪意を持って俺を記憶喪失にさせたなんてものよりもよっぽど現実的でかつそれら全ての矛盾を解決するたった一つの答えをひらめいた。


「なぁ、アヤ俺といえば何だ?」

「メガネっすか?」


サラが驚く。


「二人共聞いてくれ。恐らくだが、俺は記憶喪失ではない。所謂二重人格ってやつだ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

その消しゴムで何を消すのか。 佐々木野原暁 @dalkantsubasa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ