Chapter 2-2
編入生に、三枝未恋という生徒がいる。
彼女はごく普通の一般家庭の生まれだが、非常に成績優秀で、特待生として編入してきた才女である。
と、それだけならよかったのだが。
彼女は今、私を取り巻く生徒たちからのいじめを受けている。
理由は簡単だ。彼女が、学院のお嬢様たちの想い人から、ことごとく寵愛を受けているからだ。
拓篤様もその一人だ。私が拓篤様と言葉を交わす機会は日に日に少なくなっていき、今ではすれ違えば挨拶は交わす程度しかない。
その変わりように驚きつつも、私はこの一連の騒動を一歩引いたところで見ていた。
なぜなら、三枝さん自身はあまり現状をよろしく思っていないように見えたからだ。
それはいじめを苦にしているという意味ではなく、男性諸兄に言い寄られていること自体が、であるように思える。
まるで男性に興味がないのかと思えるほど、彼女は諸兄からの誘いをのらりくらりと躱していた。
そんな彼女の様子に、次第に沈静化させるグループもあった。それでも彼女を取り巻く状況にはあまり改善はみられなかった。どころか、より過激になっていっている節さえある。
それは、私の取り巻きたちが行ういじめが、過激さを増していったからだった。
三枝さんと拓篤様、二人の仲が進展しつつあったためである
拓篤様に相応しいのは私・幸宮祈里なのだと息巻く私の取り巻きたちが、三枝さんへのいじめを止めない。
私は拓篤様を愛していたが、拓篤様の幸せのためなら身を引くこともやぶさかではなかった。しかし、かと言ってただ見ているだけというのも癪だったのかもしれない。
だからこそ、私自身は三枝さんへ手を下すことはなかったし、いじめをやめさせようともしなかったのだろう。
そうして迎えた結末は、ある意味で私にお似合いで、至極当然のものだった。
私は三枝さんと結ばれたかつての想い人によって、失意の底へ叩き落されることとなった。
彼は密かに、幸宮グループの裏の部分を調査していた。その結果を明るみにしたのだ。
お父様が指定暴力団の幹部と繋がりを持ち、資金繰りを手伝わせていた、など。擁護など到底不可能な事実が並べ立てられ、それはすぐさま連日報道されるようにもなった。
かくして幸宮グループは崩壊し、我が幸宮家は没落の一途を辿ったのである。
どこで間違えてしまったのか。いや――どこからが間違いだったのか。
もう私には分からない。
諦めて、諦めて、諦めて。
諦め続けてしまったからこうなってしまった――のだとすれば。
願わくば、もう一度。私は諦めずに生きてみたい。
と、いう夢を見た。
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